まちの薬局つれづれ日記 第1回

2015.05.01 薬剤師コラム


日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。class A の仲間でもあるヤマグチ薬局の山口晴巨さんが、薬剤師ならではの視点でお届けします。

見ていましたよ

「表彰状。以下同文」。—日本の表彰式はもっと味気あるものにしたらいいのになと思っています。海外の表彰式(少なくともアメリカ)では、受賞者のやったことを徹底的に認めてほめています。「◯◯さん。見ていましたよ。複雑な問題を根気よく解決してくれましたね。知っていますよ。毎晩遅くまで資料を作ってくれていたでしょ。みなさん聞いてください!◯◯さんがいなければ、今の我々の成功はなかったでしょう。この功績を心に留めるために表彰したいと思います。◯◯さん……Thank you」(立ち上がって拍手喝采~みたいな)。

英語で表彰のことをレコグニション(recognition)と言いますが、その動詞形はレコグナイズ(recognize)で「◯◯だと分かる、認める、評価する」という意味です。つまり「認めてほめて評価する」ことこそが「表彰」なんだと気づきました。

では、薬局で薬剤師が評価を受ける機会にはどんなものがあるでしょうか?保険薬局業務的には集団的個別指導、個別指導、覆面調査に立入検査etc.これすべてマイナス評価です。ちゃんとできていないことだけ指摘されます。役所の人が来て「今の患者さんへの説明、いいですねー!薬歴も最高!」とか「この薬局の構造設備は誰が考えたんですか?患者さんへの思いやりが詰まってるじゃないですか!素晴らしい!」とはなりません。業務としての薬局の評価は「×」か「×ではない」のどちらかしかなく、「◎」や「花まる」はありません。医療保険制度の適正運用が目的なので、 必要条件を満たしているかどうかの評価です。

だからこそなおさら、職場としての薬局はぜひ認めてほめる雰囲気がほしいものです。安全性に関わる重大な問題を薬剤師が見抜く超ファインプレーもありますし、スタッフの小さな心くばりで業務がスムーズになるミニ改善もいっぱいあります。薬学的見地からドクターへのナイス提言もあるし、その患者さんの生活スタイルに合わせた「世界に1つだけの服薬支援」も素晴らしい。先輩薬剤師は後輩を、経営者は管理薬剤師や事務スタッフを呼び出し、重箱の隅をつついて「いいね」してほしいです。でも、ほめるのは簡単ではありません。「見ていた、知ってる、感謝してる」の3拍子が揃わなければ「以下同文」しか言えないからです。

「社員満足があってこその顧客満足」というリッツカールトン式経営哲学から言えば、レコグナイズ(recognize)がキーワードだと思います。つまり自分の努力を誰かが見ていた、分かってくれている、素晴らしいと評価してくれている。こんな薬局なら働きたいと思います。患者さんに対しても同様で「HbA1cを1も下げるなんて頑張りましたね。素晴らしい!」「介護をしながら、よくその症状に耐えましたね。偉い!」。こんな自分を分かってくれている薬局には、これからも来ようと思います。逆に「今回の検査結果すごくいいのよ。見て見て!」「そうですか。以下同文」。もう来ません。

山本五十六の有名な一節「ほめてやらねば人は動かじ」には続きがあります。「やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」。これを言葉にしてみます。「表彰状。見ていましたよ。知っていますよ。素晴らしい。いつもありがとう。期待しています」。

text by 山口晴巨(やまぐち・はるお)

大阪薬科大学卒。18年間外資系製薬会社勤務後、2011年実家のヤマグチ薬局(大阪府吹田市)の経営を引き継ぐ。