まちの薬局つれづれ日記 第2回

2015.07.22 薬剤師コラム


日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。class A の仲間でもあるヤマグチ薬局の山口晴巨さんが、薬剤師ならではの視点でお届けします。

おーい お茶

α-GIなど毎食直前服用なんていう薬は特に飲み忘れも多かろうと思い、患者さんに聞いてみます。「これは毎食直前の薬やけど、飲み忘れることないですか?」。すると「せやねん(そうやねん)。よー忘れんねん。そやから嫁はんに怒ったんねん。『なんで用意しとかへんのやーっ!』ってな」……え? 自分の薬の飲み忘れを奥さんのせいにして怒る???

私は最近発見したのですが、実は我々の親の世代くらいのお父さんの中には割とこういう人もいるのです。薬の管理を奥さんに任せきりにしているだけでなく、家事もほとんどせず自分の靴下がどこにあるのかもよく知らない。「昭和ひと桁生まれの私の父は風呂のフタさえ自分では開けない人でした」と教えてくれた患者さんもいました。

「何もやらない。何も知らない」サントリーウイスキー山崎みたいなお父さんたち。しかし昔の日本では専業サラリーマンと専業主婦の完全分業みたいな世の中だったので、大なり小なりお父さんというものはそういうものだったようです。仕事全力投球、家で完全オフ。そして定年退職。「おーい、今日はどこに行くんだ」「おーい、俺の昼ごはんはまだか」「おーい、俺は今どの薬を飲んだらいいんだ」「おーい、お茶」……このお茶は哀愁の香りがします。

「どうしてうちの主人は自分で全然動いてくれないんやろか」と、ご年配の奥様の愚痴は薬局でもよく聞きます。この場合、奥様は会社の上司のようです。コーチング分野のある研究で、上司の期待どおりに部下が動いてくれない理由を調査したところ、大きく4つに分類できたそうです。

《上司の期待どおり部下が動いていない理由》
1.部下は何をしたらいいか分かっていなかった【What】
2.部下はなぜそれをすべきか理由を理解していなかった【Why】
3.部下はどうやってするか方法を分かっていなかった【How】
4.自分ではやってるつもりだった

このセオリーは上司・部下や夫婦間だけでなく、患者さんへの服薬指導、生活習慣支援コミュニケーションにも応用できそうです。

小児科の処方せんを多く受けていると気づくことがあります。それは土曜日や連休の合間の平日には、かなりの割合で「パパさん」が子どもを連れて病院・薬局に来ているということです。その日、パパさんは仕事がお休みなのでしょう。「休みの日ぐらいゆっくり休ませてくれ」というのがパパさんの言い分で、「休みの日ぐらい子どもを病院に連れて行ってよ」というのがママさんの言い分で、なんだかんだでパパさんが連れてくることになったと想像します。

服薬指導はパパさんに対して行います。家に帰ってからも子どもに薬を飲ませたり、水分摂取、発熱の管理など、パパさんにはリーダーシップを発揮して頼れる父親の姿を見せて欲しいところです。この若いファミリーに「おーい、お茶」の雰囲気はありません。

町の薬局は日本人のライフスタイルの変化も感じることができる味わい深い場所でもあります。ところで、過去のサラリーマン川柳にこんなのがありました。
「イクメンと 乗せられ今や 家事すべて」

text by 山口晴巨(やまぐち・はるお)

大阪薬科大学卒。18年間外資系製薬会社勤務後、2011年実家のヤマグチ薬局(大阪府吹田市)の経営を引き継ぐ。