まちの薬局つれづれ日記 第3回

2015.10.28 薬剤師コラム


日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。class A の仲間でもあるヤマグチ薬局の山口晴巨さんが、薬剤師ならではの視点でお届けします。

大切に育てたいもの

ある患者さんが「最近◯◯さん、ここに来ないのんとちがう? 実は△△ドラッグに行ってるねんて。あそこはポイントがつくからやって」とこっそり教えてくれました。保険調剤に対するポイント付与は「国民が納めた保険金の利用なのに実質上の値引きに当たる」ということで問題になり、現在は原則禁止になっています。しかし、まだ何らかの形で実施している薬局(ドラッグストアチェーン系)はあるとのことです。

法律の解釈とは全く別のところで、私はこれに対して明確に反対の理由があります。それはこれがもし病院で「本日外来ポイント5倍!」とか「入院もポイント進呈!」とか「1,000ポイントで血液検査1回無料!」など派手にポスターなんか貼っていたりしたら、一般人の常識的感覚からしてドン引きだからです。そもそも医療に値引きはなじみません(適正価格というのはまた別問題)。平成18年の医療法改正で保険薬局は「医療提供施設」と明確に位置づけられ、薬学部も6年制になったのに、ポイントゲットでもめている。「それは値引きではない。ドン引きである」と私は言いたい。

一方、おくすり手帳は2014年の改定では手帳の要不要で薬歴管理料に差が生まれ、それに伴ってさまざまな現象が見られました。MacBookを真似たのか、おくすり手帳Air(見開き全2ページ)みたいな意味不明の薄型も出てきました。政策誘導というのは当然あってよいと思いますが、点数が取れるぞーとなるとわーっと団体観光客のように押し寄せ、ようやく実った実を片っ端から取ってしまい、今度はこっちの畑だぞーとなるとまた一斉にわーっと。桃栗3年柿8年、おくすり手帳18年。おくすり手帳の苗を植えた先人薬剤師はきっと純粋な気持ちで夢を抱き、苗木を大切に育てただろうと思うのです。

お母さんがお子さんの処方せんとおくすり手帳を持って来られました。少し大きめ(A5サイズ)の自作おくすり手帳です。薬のシールのみならず、きれいに色ペンを使って体調変化や服薬の効果、体温変化のグラフなどが丁寧に記録されています。まるで母親が子どものために作る心のこもった彩り豊かなお弁当のようです。私の経験上こういう繊細さと真面目さは日本でしか起こり得ないカルチャーで、Bentoと並びTechoはCool Japan候補だといつも思っています。いい意味でガラパゴス万歳。徐々にではありますが、おくすり手帳は「いざという時に役立つシートベルト的ツール」から「常に活用しているカーナビ的コミュニケーションツール」へと進化の兆しが見えます。これは大切に育てなければなりません。

「◯◯ちゃんの熱が下がってよかったですね。昨日の晩はちょっと心配だったでしょ。昨日救急で出た1日分の薬の続きが今日は出ていますからね。今飲んでる薬と併用して大丈夫だからさっそく飲ませてあげてくださいね。このおくすり手帳で流れがよく分かりましたよ。もうだいじょーぶ!」
おくすり手帳の苗を植えた先人薬剤師はこういう実り方を夢見ていたと思うのです。大切に苗木を育てればしっかりと実をつけ、次への進化につながります。医薬分業という木も同じだと思うのです。

text by 山口晴巨(やまぐち・はるお)

大阪薬科大学卒。18年間外資系製薬会社勤務後、2011年実家のヤマグチ薬局(大阪府吹田市)の経営を引き継ぐ。