まちの薬局つれづれ日記 第9回

2017.04.26 薬剤師コラム


日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。今回から class A 薬局の仲間でもある、はるかぜ薬局(大阪市)薬剤師の山中智香さんがお届けします。

歩くお薬手帳

今回から担当させていただきます、はるかぜ薬局の山中智香と申します。日々の薬局業務から感じること、薬局研修講師として感じることなどをお伝えしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

薬局で「飲み合わせだけでなく、万が一震災の時もとても役に立ちますよ、お薬の名前覚えにくいですものね」というお薬手帳の説明をしていると、ふと考えます。医療現場が混乱するくらいの大きな震災の時、果たしてお薬手帳を持って避難できるのだろうか?
私の勤める薬局は地元の人が長く住んでいる地域の薬局です。親子3代なんて当たり前、0歳児~90歳代まで親戚一同勢ぞろい!疾患や薬のことだけでなく、入学する小学校、子供のクラブ、実家の地方、嫁いだ娘さんがどこに住んでいるのか、自営のお商売や趣味まで、まるで身内のように情報があり、とてもにぎやかな薬局です。

もし大きな震災が起こった時、私は自分の住んでいる地域の避難所に行ったならば……。
恥ずかしながら都会のマンションは希薄な関係で、エレベーターで挨拶するのみ。誰が誰すらわからないのに、どのような健康状態であるか知る由もなく……。
薬剤師としては本人から言われる一方通行の情報を聞くことしかできません。

けれど、職場の地域の避難所に行ったならば……。
知った顔の方が沢山いらっしゃいます。「わ~~~大丈夫でした?」と言いながら、疾患や薬のことだけでなく性格まで把握しているので、不安の強い人、気がしっかりしている人、怒りっぽい人までさまざまな対応がとれます。
もちろんスーパー記憶マシーンではないので、全員の薬を覚えているわけではありません。でも、血圧の薬、白色だったかピンク色?楕円形だったか、シートの色は?等探りを入れていくと、当薬局の在庫なので服用している薬に辿り着きます。

まさしく「歩くお薬手帳」。

これは地域の薬剤師としては当たり前のことですが、このことを他業界の人に話すとビックリされます。薬局ができることを話せば話すほど「そんなことまで薬局がしてくれるの?」と驚かれます。
それだけ、まだまだ残念ながら薬局ができることへの把握、期待が薄いということかもしれません。私たちが当たり前と思っていることこそ、こちらからの発信が必要なのだと感じます。ですから「歩くお薬手帳」は外に向けての私の一つの「自慢」なのです。
そしてこの「自慢」こそが「自分の役割」=「自分の貢献度」=「自分のやりがい」につながるものだと思います。

私はご縁があり全国の class A 薬局さんで新人研修やコミュニケーション、店舗目標、業務改善研修等をさせていただいたり、大学で学生の授業を担当させていただいたりしています。その際、地域の薬局薬剤師・スタッフのやりがい、つまり外に発信できる「自慢」を持ちましょう!とお話しさせていただいています。
その「自慢」は人それぞれです。新人薬剤師の自慢、ベテランの自慢、事務さんの自慢、栄養士さんの自慢。だからこそ薬局はそれぞれの強みを生かしてチームで取り組むもので、スタッフ全員の「オリジナル自慢」を集結すれば凄く役立つ薬局になると思います。そんな薬局が全国あちらこちらに沢山ある風景、ワクワクします!

私の自慢は「歩くお薬手帳」。
皆さんの自慢はなんですか?

text by 山中智香(やまなか・ちか)

神戸薬科大学卒業後、製薬会社、調剤薬局勤務を経て、現在、大阪の class A 薬局はるかぜ薬局で薬剤師として勤務しながら、ウィズ・グロー代表として医療現場や福祉施設・企業・公的機関などで研修を行う。