漢方薬の食前服用って本当?

漢方薬は食前に飲むというのは、一般的に広がっている知識だと思います。

しかしそれはなぜなのでしょうか?

空腹状態で飲むことにより、漢方の吸収が良くなるといった説明を
聞いたことがあります。

もっと具体的に言うと
「漢方薬の成分の配糖体が、大腸の腸内細菌で加水分解されて
(資化)分解されると有効成分が吸収される」ために
空腹状態の方が吸収が良いと言われる説があります。

しかし、N大学の先生が研究したところでは、「配糖体の吸収は
資化作用以外にも代謝経路があり、食事により漢方の吸収が
阻害されると言うデータはなく、食後服用の効果不十分という
根拠は確認できていない」とのこと。

中国の湯液は食後服用とされているものも多く、
実際現在の中国の処方箋では食後で切られているのが
現状です。

また古典で有名な「傷寒雑病論」の記載にも食前の服用指示は
ごくわずかであると。

ではなぜ食前が広がったのか?
1940年代に国内で販売された漢方診療の記載に
「食前1時間に服用する」と記載が加わったことが
きっかけになったのでは?と牧野先生は考えているようです。

ただ保険では食前または食間しか通りませんので
処方箋上はそうなることが多いと思います。

大切なことは食前に飲んだ方がいい薬とか
食後に飲んだ方がいい体質の方とは、
体調や配合生薬を鑑みて、服用することが重要だと思います。

他にも、腸内細菌に良い食生活を心がけることで
漢方の吸収量も上がる可能性が高いです。

そのような服薬指導をできることの方が
飲むタイミングより有益ではないでしょうか?