3種類の専門家


在宅医療を通じて、誰もが住み慣れた地域でのその人らしい暮らしを支援しております、

ユニバーサルグループ株式会社 在宅看取り事業部 薬剤師の長瀬です。

まだ医薬分業が始まって数年目で調剤薬局の役割が社会に十分浸透していない頃に、

薬剤師会勉強会で講師のドクターが「3種類の専門家」についてお話をされていたことが印象に残っています。

日本語では「専門家」という言葉は1つしかありませんが、英語では3つの専門家があるとお話されていました。

1つはSpecialistです。

薬剤師で例えるなら、薬の分野を専門とする人であり、一般の人が持たないような特殊な技能を持ち、

経験や実績を問わず、教育や訓練によって得た地位の専門家です。

2つはExpertです。

薬剤師で例えるなら製薬企業での研究開発や、病院での専門薬剤師のようにある分野に特化し、十分な経験や実績を積んだ専門家です。

もう1つはProfessionalです。

ある分野において優れた技能を持ち、顧客満足に特化した専門家、つまり、仕事に対して確固たる哲学を持ち、顧客ニーズに合わせたサービスができる、いわゆる、この技能で生計を立てられる専門家です。病院での病棟業務や薬局での服薬指導など、患者さんと直接的な関わりにおいて、意識の高さや知識の横断性を持つ専門家のことです。

昨日ケアマネージャーさんから、「患者さんAさんはようやく信頼関係が築けたようなので、薬の管理まで提案してもらって大丈夫みたいですよ。」との連絡がありました。

Aさんは、3ヶ月ほど前からご訪問させていただいている患者さんです。これまではご自身で薬の管理をされていましたが、入院をきっかけに飲み忘れが多くなったため、ケアマネージャーさんから訪問の依頼がありました。

患者さん自身は、会社の役員をされていたそうで、当初はご自身が自分のことをしっかりしているという自覚があったため、家族以外の人からサービスを受けることに抵抗があったようです。

そのためケアマネージャーさんから、まずは信頼関係作りからお願いしますとのことでした。

初回はご家族にも同席してもらい、自己紹介と今後ご自宅へご訪問させていただきますとご挨拶をさせていただき、

2回目からは服薬状況の確認をした上で、できるだけコミュニケーションを取る時間を作ってきました。

幸いAさんはお話好きな患者さんでしたので、入院に至る経緯、主治医との関係や会社時代のことなどいろいろお話を伺うことができました。

コミュニケーションを取る中で気を付けていたことは何を提案すべきかではなく、Aさんご自身が望むこと、またご自身が社会に対しての役割として続けたいことは何だろう?でした。

それは在宅医療における患者満足とは、住み慣れた地域でその人らしく暮らすために、これまで本人が担ってきた家庭内または地域活動での役割を変わらず続けられることだと、私自身、常々考えているからです。

次回から薬の管理にも関わらせていただきますが、本人のできることや役割と感じていることを大切にしつつ納得感を得られるよう相談しながら進めていき、さらに、ご家族やその他関係者、社会的・経済的なことも総合的に考慮していく、プロの専門家=Professionalとして対応させていただきたいと思っております。