まちの薬局つれづれ日記 第17回

2019.04.24 薬剤師コラム


日常の中で感じるあんなこと、こんなこと。
class A 薬局の仲間で、高田馬場薬局(東京都)薬剤師の北川晋さんがお届けします。

街の“冷蔵庫”

はじめまして。
今回よりコラムを担当させていただく、高田馬場薬局の北川と申します。薬局業界には20年以上籍を置いておりますが、一年半ほど前に開業しまして薬局薬剤師兼新米社長として日々奮闘中でございます。

薬局薬剤師の視点はもとより、個人薬局の経営者としての視点で普段感じていることや、思っていることをツラツラと書かせていただければと思っております。
「世の中にはこんなことを考えている薬屋のオヤジもいるんだなぁ」くらいの軽い気持ちで眼を通していただければ幸いです。

突然ですが、私の親族には医療関係の仕事をしている者が妻以外にはおりません。遠い親戚は分かりませんが、少なくとも私の知っている限りはいないと思います。
薬剤師だけでなく、医師はもちろん看護師や栄養士もおりません。また介護関係で仕事をしている者もおりません。たぶん。
そんな私がなぜ薬剤師になったのか……それはまた機会がある時にお話しさせていただくとして、親族に医療関係で仕事をしている人がいないとどうなるか。

そう、なーんでも聞いてきます。「この薬は何の薬?」から始まるのですが、いい気になって偉そうに解説していると、「家にあったこの薬は飲んで良いのか?」「これと一緒に飲んで良いのか?」、ついには「この薬では眠れない」「私の病気は何なのか?」など、どんどん聞いてくる範囲が広がっていきます。
今でこそまぁそれなりに答えたり、誰に聞くべきことなのか等をアドバイスすることができますが、卒業したての薬剤師で、免許はありましたがその実績はなく、しかも卒業後に医療業界とはあまり縁のない異業種に勤めていた私には答えられる範囲が限られていました。

それでも家族や親族からは「便利だ」「役に立つ」とおだてられ、しまいには「冷蔵庫みたいだ」と言われました。実はこの「冷蔵庫みたい」と言われたのがずっと頭に残っていました。どういうことかと聞いたところ、「一家に一台あると非常に便利」ということらしいです。
このやり取りがどの場面で誰から言われたのかは、既にあまり定かではないのです。けれど、薬業界に転職していろいろな仕事をさせてもらいましたが、この「冷蔵庫みたい」というフレーズが常に頭にありました。

この時期に開業することがどれだけ厳しいかは、業界に長くいましたので知らないわけではありませんでしたが、このフレーズがずっと頭の中にあり、親族よりもう少し大きな範囲でお役に立てることはないものかと思い、「地域の冷蔵庫のような存在になりたい」という思いで2017年9月に小さい薬局を開業しました。
まだまだ冷えの悪い冷蔵庫ではありますが、いつかはチルド室があって野菜室が真ん中にあるような最新の冷蔵庫になるべく、日々患者さんには分からないように大汗をかいております。
これから何回かお付き合いいただければと思います。

text by 北川晋(きたがわ・しん)

東京薬科大学卒業後、ウヰスキー会社勤務を経てチェーン保険薬局へ。調剤業務だけでなく、店舗開発・採用・在宅などの業務を経て2017年9月より高田馬場にて薬局を開業し今に至る。薬剤師、経営者として孤軍奮闘している新米社長です。