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ゆきさん薬局

みなさんは調剤薬局を、たんに「処方箋に書いている通りの薬をもらう場所」だと思っていませんか? 

『ゆきさん薬局』の薬剤師、ゆきさんのエピソードをもとに、薬を出す以上の、かかりつけ薬局の役割をご紹介します。

ゆきさんは、「薬で病気を治すだけでなく、患者さんを笑顔にして薬局を送り出すことが大事」をモットーに、処方箋通りに薬を調剤するだけではなく、飲み合わせや飲み方のアドバイスをしたり病院をおススメしたり…親身になった接客で地元に愛される薬局を運営しています。

かかりつけの薬局が無い方は、薬剤師ってこんなことまでアドバイスしてくれるんだ! と驚かれるかもしれません。薬局をもっと身近に感じていただけたり、薬剤師に気軽に相談できたりするきっかけを与えられるよう、ゆきさんの奮闘ぶりをお届けいたします。

 

~手術はどのように決断したの~

おしゃべり好きで、人の良い大丸さんが、いつものように明るく薬局に入ってきました。
表情は明るいものの、坐骨神経痛で悩んでいて、今日もその愚痴から始まりました。

大丸さん
「ゆきさん、鎮痛剤は効かないし、漢方薬や違う痛み止め等、色々試したけど、ピンと来ないんだよね」

ゆきさん
「ドクターは、何て言っているの?」

大丸さん
「『脊柱管狭窄症だから、そろそろ手術しか無い』と言うんだよね。それで、『どれくらい治るんですか』と聞いても、『何とも言えない』と言うんだよ。どう思う?」

ゆきさん
「確かに、手術して必ず痛みやしびれがとれるわけではないみたいですよ」

大丸さん
「それじゃあ、実験台みたいで手術する気にならないよな。そういえば、ゆきさん手術したって聞いたぞ。どうやって決断したの?」

ゆきさん
「私もMRIを撮って脊柱管狭窄症と言われました。しかし、薬局で脊柱管狭窄症があって手術をしても、良くなっていない人も当然いるのですが、ダメだった人も多くいるなと感じていました。そこで、手術前にやれることを、やるだけやってから手術を決めたんです」

大丸さん
「どんなことをやったの?」

ゆきさん
「大丸さん、私は、腰痛の原因には大きく3つあると思います。
・筋肉が緊張していわゆる肩こりと同じ様な状況、もしくは腰回りの筋肉が弱っていて脊椎を支えられない状況が原因の場合です。これらは筋肉をリラックスするもしくは鍛える運動療法で治るはずです。
・2つ目はストレスが原因で起こる痛みの場合は、薬物療法を含む精神療法で治します。
・最後に、器質的な問題、つまり骨等が神経にさわるような状態の場合。これは、手術でないと治らないと思います」

大丸さん
「ふーん」

ゆきさん
「最初の2つが保存療法と言われるもので、私がやるだけやったということです。薬は、鎮痛剤、慢性疼痛治療剤を試したけど、効果のわりには、眠気が出て仕事にならなくなったので断念しました。運動も、ストレッチと腰回りの腹筋、背筋を鍛えることを半年間は続けたのですが、多少はましになったものの、痛みが取れなかったんであきらめたんです」

大丸さん
「なるほどね。じゃあ、俺も長く苦しんでるから手術を考えようかな」

ゆきさん、笑いながら答えました。
「そうですね。今まで色々な薬も試されているし、いつもここで愚痴が出る程だから、そろそろ手術を考えた方が良いかもしれませんね。大丸さんには当てはまらないとは思いますが、脊柱管狭窄と言われても、自覚症状もないのに手術をする必要はないと思います」


~手術直後はどんな感じ~

ゆきさん
「手術を受ける前に知っておいた方が良いと思うことを、お話しておきますね」

大丸さん
「是非、よろしくお願いします」

ゆきさん
「病院によりますが、手術は痛みしびれが激しくないと、薦められません。それは手術後の負担やリスクを考えてそう言われるんです」

大丸さん
「まあ、そうだろうね」

ゆきさん
「実は私もそうだったんですが、手術を決断してからは、手術後すぐに良くなると勘違いしがちなんです」

大丸さん
「そりゃ、期待するよね」

ゆきさん
「手術方法は、切開手術と負担を少なくした内視鏡手術がありますが、いずれにしても背中から切開をして、骨や靱帯を削ったり、すべり症があればボルトで固定したりします。術後は切開した傷が治るまでと、脊椎が安定するまで安静にしなければいけません。痛みが落ち着いてきたら、リハビリを行います。その期間を考えると、完治するのに1か月から3か月は覚悟しておいた方が良いです」

大丸さん
「今の話を聞いて、頭の中では理解できても、いざ自分が手術すると期待するんだろうね」

ゆきさん
「そうですよ。手術直後は、手術で良くなったと期待するよりも、とりあえず問題なく手術を終えたことを喜びましょう。きちんと手術をしてもらっても、全身麻酔などによるトラブルなんてこともありえますから」

大丸さん
「そうだね。楽観的にだけでなく覚悟して手術を受けるようにするよ」


~どれくらいで手術の効果を判断できるの?~

大丸さん
「それで、どれくらいの期間で手術の効果を実感できるの?」

ゆきさん
「痛みの感じ方は個人差があるので、何とも言えませんが、私の場合は、手術直後に痛みがありました」

大丸さん
「え、痛かったの?」

ゆきさん
「そりゃ、痛いですよ。手術して切っているんだから」

大丸さん
「なんだ、その痛みか。それで、腰痛はどうなったの?」

ゆきさん
「腰痛も2週間くらいありました。ビリっとすることがあったので、まだ治っていないのかと心配しましたよ。でもリハビリをしてそれも無くなりました」

大丸さん
「ということは、2週間後には消えてきたということ?」

ゆきさん
「はい。私の場合は2週間で痛みが消えてくれました。たぶん腰椎を支える力がない間、神経をさわったのだと思います」

大丸さん
「痛みが消えない場合は、どうなるんだい?」

ゆきさん
「術後の痛みを感じる原因は、主に4つ考えられると思います。手術による痛み、神経が痛んでしまって修復できていない痛み、頭で痛みを覚えてしまっている痛み、脊柱管狭窄が原因でない痛みです」

大丸さん
「なるほど」

ゆきさん
「手術の痛みは、傷が治るまで待つしかないです。神経が痛んでいる場合は、神経を修復する薬や温熱療法等で血行を良くして治療します。頭で覚えてしまっている痛みは、抗うつ剤を含む薬物療法や、α波を出すような発声、視覚に訴えるなどの精神療法が一番でしょうね。最後の脊柱管狭窄症が原因ではない痛みは、他の原因を調べて治療することになります。私の場合は、腰痛は消えましたが、股関節の痛みだけ残っています。それでも、前と比べてとても楽にありました」

大丸さん
「ふーん。わかりやすい説明ありがとう」

ゆきさん
「いえいえ、自分が話しかったことを聞いてもらえてうれしかったです。こちらこそ、ありがとうごいざいました」

登場人物

★大丸 義之
大丸義之(だいまる よしゆき) 69歳 男性
脊柱管狭窄症
話し好きで明るい性格


※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~扁桃腺炎で抗生物質~

3日程前に来られた患者さん、鈴木さんがマスクをして入って来られました。

「こんにちは」と真優ちゃんの声が鳴り響きます。

鈴木さんも、つらそうにしていたのに、少しほほを緩めながら「こんにちは」と言って入ってこられました。

真優ちゃん
「良くなっていないようですね?」

鈴木さん
「そうなの。先生が薬を変えると言っていたわ」

真優ちゃん、処方箋を預かり、薬歴をパソコンで確認しました。
「あ、本当ですね。抗生物質が変わりました」

鈴木さん
「風邪には抗生物質を使わないと聞いたけど、また抗生物質が出るのですか?」

真優ちゃん
「鈴木さん、具体的に症状はどんな症状が出ていますか?」

鈴木さん
「喉だけが、食べ物が飲みこめないほど痛いんです」

真優ちゃん
「喉の病気には色々ありますが、原因によって治療が異なります。いわゆる風邪と言われるものは、ウイルスによるものが多いのですが、細菌によるものもあります」

鈴木さん
「どうやって見分けるのですか?」

真優ちゃん
「詳しくは細菌を見極める検査をもあるのですが、それがわかるころには病気が進んでしまうので、医師の経験値で判断していることも多いです」

鈴木さん
「経験値て、何を見ているの?」

真優ちゃん
「ウイルスの場合は、喉の痛みだけでなく、咳や鼻水などの症状が一緒に起こることが多いんです。一方、喉が痛いなど症状が1つの場合には、細菌性の事場合が多いんです」

鈴木さん
「私の場合は、喉だけが痛いので細菌性の可能性が高いんですね」

真優ちゃん
「そうなんです。特に鈴木さんのおかかりの耳鼻科では内視鏡で見ているので、喉の腫れ具合、膿があるかなどがわかるので、分かりやすいんだと思います」

鈴木さん
「それでは、私はやはり抗生物質を飲んだ方が良いのですね」

真優ちゃん
「はい。それではお薬を準備しますね」と笑顔で返事をしました。


~抗生物質がなぜ変わったの?~

ゆきさんは、真優ちゃんのやり取りを聞きながら、鈴木さんの薬歴を見ていました。

ゆきさん
「真優ちゃん、薬の準備が出来たら僕がお薬を出すよ」

真優ちゃん
「はい、わかりました」と答えて、薬を準備してゆきさんにお願いをしました。

ゆきさん
「鈴木さん、お薬のご用意が出来ました」

鈴木さん
「はい、お願いします」と言ってゆきさんのいるカウンターの前に座りました。

ゆきさん
「前回の薬はちょうど終わっていますね」

鈴木さん
「今朝で、飲み終わりました」

ゆきさん
「先ほど、うちの石原が説明した通り、抗生物質が出ています。前回とは違う抗生物質ですが、今まで同様、毎食後服用になります。前回の薬を今朝まで飲んでいたので、昼食後から開始してください」

鈴木さん
「ところで、何で抗生物質が変わったんですか?」

ゆきさん
「抗生物質を変更するには、大きく二つの理由があります。今回は、症状があまり改善していないのですよね」

鈴木さん
「えー」

ゆきさん
「症状の改善が見られれば、もう少し同じ薬を利用して様子を見ましょうとなりますが、改善していないので変更したのだと思います」

鈴木さん
「それは理解できるんですが、他に理由があるんですか?」

ゆきさん
「鈴木さん、『耐性』て聞いたことありますか?」

鈴木さん
「はい、何となく」

ゆきさん
「耐性とは、病原菌が薬に慣れてしまって効かなくなってしまうことです。抗生物質は同じものをずっと利用していると、効かなくなってしまうんです。だから、特殊な場合を除いて長く利用しないんです」


~ペニシリン系で避妊に失敗例が!~

ゆきさん、薬歴を見返しながら質問しました
「鈴木さん、そういえば低用量ピルを飲まれていますね」

鈴木さん
「はい。飲み合わせでも悪いんですか?」

ゆきさん
「別に飲み合わせは問題ないですよ」

鈴木さん
「じゃあ、一緒に飲んでいて問題ないわね」

ゆきさん、「飲み合わせは問題ないですよ」と答えてから、話しにくそうに話し始めました。
「鈴木さん、該当しないかもしれないけど、知識だけ入れておいてください。ピルを避妊目的で飲んでいるときに、ペニシリン系の抗生物質を飲むと、避妊に失敗した例があるんです。原因は分からないし、一緒に飲んで何か害があったということもありません。ただし、そういう副作用報告があるんです。副作用は1件でもあれば、副作用として報告されます」

鈴木さん
「えっ、そうなんですね。これを飲んでいる間は、避妊に気を付けなければいけないのですね」

ゆきさん
「はい。こういうことは男の私からは言いにくいんですけど、知っていると知っていないとでは大違いなので、一応お話しさせていただきました」

鈴木さん、嬉しそうに答えました。
「どうもありがとう。ゆきさんから薬をもらうと色々教えてもらえて助かるわ」

ゆきさん
「患者さんの笑顔が、僕への一番のご褒美ですから。どうもありがとうございました」

鈴木さんが薬局を後にすると、真優ちゃんがゆきさんに話しかけました。
「ゆき先生が自分で出すと話されていたから、何かと思っていましたが、ペニシリン系で避妊に失敗なんてことがあるんですね。今まで知りませんでした」

ゆきさん
「僕も最近、薬剤師仲間との飲み会で初めて知ったんだ。色んな事があるんだね」

真優ちゃん
「ゆき先生は、飲み会も勉強の場なんですね」

ゆきさん
「あーそうだよ。今日もいっぱい飲まなきゃ」

真優ちゃん
「ゆき先生、患者さんにならないでくださいよ」

「ここに良い薬がたくさんあるから大丈夫だよ」と笑って話すゆきさんでした。

登場人物
★鈴木 優衣
鈴木 優衣(すずき ゆい) 29歳
扁桃腺が腫れることが多い
ピルを常用している

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~ねんざをしたので、湿布をください!~

前にチラージンの事で相談をしていた林智子さんの長男、亮太君が「湿布をください」と言って入ってきました。

ゆきさん、足を引きづっている亮太君を見ながら話しかけました。
「足を痛そうにしているけど、どうしたの?」

亮太君
「サッカーで足をひねって、ねんざしました。顧問の先生に、『今日は練習にならないから、湿布を貼って帰れ』と言われて、とりあえず学校に有った湿布を貼ってきました」

ゆきさん
「それしかしていないの?」

亮太君
「はい。お母さんが湿布はうちに無いから、買っておいでと言われて」

ゆきさん
「いつ、怪我をしたんだい」

亮太君
「足をくじいて家に帰って、すぐにここに来たから、1時間もしていないと思います」

ゆきさん
「そうか。じゃあ、そんなに時間はたっていないんだね。それより、ここに入ってきたときより、腫れているんじゃない」

亮太君
「あ、本当だ」


~RICE処置が基本~

ゆきさん、お店の冷蔵庫から氷を出してきて、亮太君の足首を冷やしながら話し始めました。
「亮太君、スポーツをしているんだから、怪我をした時の対処法を覚えておくと良いよ」

亮太君
「はい」

ゆきさん
「けがをした時は、RICE処置というのが基本なんだよ」

亮太君
「えっ。ご飯を食べるんですか?」

ゆきさん、笑いながら答えました。
「違うよ。ご飯食べても治らないよ。英語で書いた処置方法の頭文字を取ってRICE処置というんだよ」

亮太君
「そうなんだ。で、どうするんですか?」

ゆきさん
「Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)と応急処置時に必要な4つの処置の頭文字をとってRICE処置と呼びます。これらをきちんと行うことで、治療を早めることができるんだよ」

亮太君
「ふーん」

ゆきさん
「まずはケガしたところを動かさず、安静に保つようにします」

亮太君
「えー。どれくらい足首が動くか心配で、ぐりぐり回しちゃった」

ゆきさん
「それは良くないよ。本当に治りが遅くなるから、気をつけてね。次にケガをしたところとその周りを、氷で冷やします」

亮太君
「シップを貼った方が、効果があるんじゃないの?」

ゆきさん
「シップよりも冷やす方が、効果が高いんだよ。冷やすことによって痛みを軽減できるし、腫れや炎症を抑えることができます。ただし、冷やしすぎに注意が必要だよ。15分程度冷やして、痛みが鈍ったらはずし、また痛みを感じ始めたら冷やすように繰り返してください」。

亮太君
「だから、いま冷やしてくれているんですね。冷やしすぎたら、どうなるんですか?」

ゆきさん
「肌がしびれるほど冷やしたら、凍傷になってしまうから、15分くらいで休む必要があるんだよ。次にケガをしたところを圧迫するのが良いんだけど、これは自分でやるのは難しいから、接骨院とかでテーピングしてもらうのが良いかな」

亮太君
「じゃあ、自分ではとにかく急いで冷やすんですね」

ゆきさん
「そうだね。最後に心臓より高い位置を保った方が良いよ。そうすることによって、腫れを防げるんだよ。今日だけは足を高くして寝てごらん」

亮太君
「どうもありがとうございます。冷やしたら、痛みが引いてきました」

ゆきさん
「一時的に痛みが引いているだけだから、2日間くらいはRICE処置を続けられるなら、続けた方が良いよ」


~整形外科で確認して~

亮太君
「それで、湿布はどれが良いですか?」

ゆきさん
「今日はとにかく冷やした方が良いから、湿布はいらないよ。それよりも整形外科に行って、レントゲンを撮る必要があるか、相談しに行きなさい。見た感じ大丈夫だとは思うけど、一応確認しておいた方が良いともうよ」

亮太君
「やはり病院に行った方が良いですか?」

ゆきさん
「行って何もなければ安心できるし、何かあって後悔するよりは行っておいた方が良いと思わないかい」

亮太君
「そうですね」

ゆきさん
「その時に湿布も処方してもらうと良いよ。湿布も今は色々あるから、最初はパップ剤にして、少し圧迫しながら固定する感じにして、数日たってからは歩きやすいテープ剤にしてもらうと良いよ」

亮太君
「はい」

ゆきさん
「それから、整形外科の後には接骨院に行って良いか医師に相談してごらん。接骨院の方が、アイシング、テーピングが得意の人が多いようだから」

亮太君
「お母さんが、ドラッグストアーよりも高いかもしれないけど、ゆきさん薬局で相談してきなと言われて来たんだけど、結局何も買わないですいません」

ゆきさん、笑いながら応えました。
「つまらない心配をしないで、早く整形外科に行きなさい。お母さんには、今度買い物したときに、2割増しでもらうからと言っておいて」

亮太君「本当に、ありがとうございました。お母さんに伝えておきます」と言って、うれしそうに帰っていきました。

登場人物

★林 亮太
林 亮太(はやし りょうた) 13歳
林智子さんの長男
サッカーをして、ねんざをしてしまった

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~朝の血圧が高い!~

2か月に一度、高血圧薬の処方箋をお持ちになる山田さんが来局されました。
以前、忙しくて2週間に1度の受診ができず、薬をもらうのをあきらめていた山田さん。
ゆきさんに薦められて正直に頻回の受診が難しいことを医師に伝えて、きちんと薬を飲めるようになりました。
それ以来、山田さんは何か相談事があると、受診前にゆきさんを訪れます。
今回は薬を飲んでいても朝の血圧が高いので、ゆきさんに相談することにしました。

山田さん
「最近、朝の血圧が高いんだよね。前にゆきさんに教えてもらったように大きく血圧が変動しないようにしているんだけど、どうしても朝の血圧が高いんですよ」

ゆきさん
「お薬は、夜寝る前に飲むようになっていますが、そのように飲んでいますか?」

山田さん
「はい」

ゆきさん
「そうですか。朝が高い人は寝る前に飲んだ方が、朝に効果が出てくるので良いのですが、きちんと飲んでいるようですね」

山田さん
「薬を増やしてもらった方が良いのかな?」

ゆきさん
「そうですね。薬が効いていないことになるので増やしてもらった方が良いかもしれませんが、もう少し状況を伺わせてください」

山田さん
「いいですよ」

ゆきさん
「血圧が高くなってきたのは、寒くなってからですか?」

山田さん
「ゆきさんの知ってのとおり、きちんと薬を飲むようになって血圧が安定していたのですが、ここのところ寒くなって、朝の血圧が高いんです」

ゆきさん
「寝ている時に暖房は入れていますか?」

山田さん
「電気代がもったいないから、暖房は入れてません」

ゆきさん
「今度、暖房を入れて寝てみたらいかがですか。寒くなると緊張して血圧は上がりやすくなります。冬だけ薬を増やす人もいるくらいですよ」

山田さん「それは、良いことを聞いた。試してみます」とうれしそうに答えて帰っていきました。


~よく眠れていますか?~

2ヵ月後、高血圧の薬がなくなった山田さんが、再度薬局を訪問しました。

山田さん
「夜に暖房を入れて、最初のうちは朝の血圧が下がったのですが、また上がってきてしまって」

ゆきさん
「そうかあ、下がったのは最初だけだったんですね」

山田さん
「どうしたんだろうね」

ゆきさん
「そういえば、最近睡眠薬を時々もらうようになっていますが、よく眠れていますか」

山田さん
「ええ。変な夢を見て目を覚ますことがあるし、考え事をして目が冴えてしまうことも多いんです」

ゆきさん
「それに、睡眠薬を飲んでいるのですね」

山田さん
「はい」

ゆきさん
「睡眠薬を飲んだ日は、血圧はいかがですか?」

山田さん
「そう言われれば、睡眠薬を飲んだ日は血圧が低い気がします。そうかあ、睡眠と関係していたのか」

ゆきさん
「そうみたいですね。ストレス、過労はどの病気でも悪化させます。質の良い睡眠がとれていないと、体に悪影響は出るでしょう」

山田さん
「睡眠薬を毎日飲んだ方が良いのかな?」

ゆきさん
「眠りが浅かったり、眠りにくい時は睡眠薬に頼るのも一案だと思いますよ」

山田さん
「でも、睡眠薬を毎日飲むのは抵抗があるなあ」

ゆきさん
「睡眠薬で疲れが取れるなら、私なら飲んでおきますよ。睡眠薬で一番怖いのは量が増えていくことです。効かないと思って勝手に量を増やしてくと大変なことになります。量を守って飲んでいる分には問題はありませんよ」

山田さん
「それでは、睡眠薬を飲んでいた方が良いのですね」

ゆきさん
「それで血圧が安定するのなら、飲んでおいた方が良いと思います。ところで、山田さん、血圧は記録していますか?」

山田さん
「いや、測っているだけで特に記録はしていません」

ゆきさん
「それでは、この血圧手帳に記録してください。次回は医師と私にも見せていただけますか」

山田さん
「あれ、1日2回も測るの?」

ゆきさん
「はい、1回目は朝起きてから1時間以内、朝食前で排尿後、2回目は寝る前、入浴、夕食直後を避けて測るようにしてください。それから、測る前には深呼吸をしてから、腕と心臓の高さを同じにして測ってください」

山田さん
「はい、わかりました。この手帳もらってよいの?」

ゆきさん
「はい、お持ちください」

山田さん
「ありがとう。試してみます」


~血圧手帳で解決~

さらに1ヶ月ほどたって、山田さんが来局されました。

山田さん
「睡眠薬を飲んでみたけど、よくわからないなあ」

ゆきさん
「血圧手帳に記録されましたか?」

山田さん
「あーこれね。記録してみました」

ゆきさん
「次のページにグラフがあるので、そこに記入してみるんです」と話しながら記入していきました。

山田さん
「なるほど」

ゆきさん
「血圧は変動してあたり前です。グラフにするとよくわかるんですが、高い日もありますが、山田さんが思っているほど高い日は多くないですよ」

山田さん
「本当ですね。高いことを意識しすぎていたのかな」

ゆきさん
「そうみたいですね。もしかしたら、前から思っているほど高くなかったのかもしれませんよ」

山田さん
「そうかもしれないね」

ゆきさん
「変動があるのは、元気に生きている証拠ですよ」

「まだまだ若いということだね。ありがとう」と言って嬉しそうに帰る山田さんでした。

登場人物

★山田 孝雄
山田 孝雄(やまだ たかお) 61歳
高血圧症できちんと薬を飲んでいる
最近、朝の血圧が高くて困っている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~調子が悪いから、病院にも行きたくない!~

いつもチラーヂンを取りに来られる林さんが、薬局に来られました。
林さん
「今日は、何だかつらいな」

ゆきさん
「どうされましたか?」

林さん
「最近、すぐに疲れるの」

ゆきさん
「先生にはご相談なさったのですか?」

林さん
「えー話したけど、聞いているのか何だかわからなくて、『いつものお薬出しておきます』で終わってしまったの。調子が悪いから、病院にも行きたくないわ」

ゆきさん
「最近は、血液検査をされましたか?」

林さん
「今日血液を取ったので、次回結果が分かるみたい」

ゆきさん、患者さんが考えていること、思っていることを代弁することがあります。
「先生に不信感があるなら、病院を変えた方が良いですよ。病は気からだから。気の合う先生に診てもらうことが一番です」

ゆきさんは、性格的に合わない場合は、医師を変える事を薦めることがしばしばあります。

しかし、いわゆるドクターショッピングと言われるあちこちの病院に行くことを薦めません。大抵の場合、結果が変わらないからです。
今回は、医師を良く思っていない状況で弁護しても聞く耳を持たないと考えて返事をしました。

林さん、自分が思っていることを言ってくれたという表情で、話しました。
「本当にそうなのよ」

ゆきさん
「でも、今日血液検査をしたんですよね。結果が出てからでも遅くないので、それから考えましょう。いずれにしても検査結果を見ないと判断出来ませんよ」

林さん
「それもそうね。検査結果を聞いたら、また相談に来ます」


~原因を確認して、まずは治療をしましょう~

1週間後、林さんが来局されました。

ゆきさん
「検査結果は、いかがでしたか?」

林さん
「チラージンの量を増やすと言っていたわ」

ゆきさん
「やはり、甲状腺機能が低下していたんですね。原因がわかって良かったですね」

林さん、まだ先生への不信感がぬぐえていなかったようです。
「そう。これで大丈夫かしら?」

ゆきさん、薬をお渡しする時は、より効果が出ることを心がけて渡すようにしています。効くかもしれないではなく、これで治ると希望を持てるようにお渡しします。
「甲状腺機能は基本的に血液検査で判断します。甲状腺ホルモンの量を増やせば、きっと疲れやすいのも取れるはずですよ。飲み忘れない様に飲んで、様子を見てください」

林さん
「そうね。試す前から大丈夫かしら?と考えても仕方無いわね。試してみるわ」

ゆきさん
「心配していたら、心配していた通りになるから、何も考えずに、まずは薬を飲んで治療するですよ!」

林さん
「ゆきさんに話したら心配が吹っ飛んだわ。ありがとうございます」

ゆきさん
「じゃあ、また来月結果を教えてください」


~今までの経緯がわかる先生に、お任せした方が良いですよ~

さらに1ヶ月が過ぎて、林さんがうれしそうに薬局に入ってきました。
「ゆき先生、何だか調子良くなりました」

ゆきさん
「それは良かったじゃない。やはり甲状腺ホルモンを増やしたら調子良くなったんですね」

林さん
「お陰さまで、ありがとうございます」

ゆきさん
「僕はこの処方元の先生にお会いしたことがないので、良く分からないけど、きちんと診てくれているじゃない。今までの林さんの話から、ぶっきらぼうには感じるけど」

林さん
「そうなの。ぶっきらぼうな先生よ」

ゆきさん
「林さん、実は甲状腺ホルモンの調節は慎重にやらないといけないんです」

林さん
「そうなんですか」

ゆきさん
「甲状腺ホルモンが多すぎると、骨量が減少したり、心房細動と言われる不整脈を起こす確率を上げたりします。一方、不足していると精神機能が低下したり、動脈硬化を進めたりします。だから調節が重要です」

林さん
「そうなんですね」

ゆきさん
「この間は、先生がきちんと診てくれていないと怒ってられたから、あまりお話ししませんでしたが、検査結果も見ないで治療するのも、いい加減なことになる場合もありますよ」

林さん
「どうして?疲れているんだから、栄養剤とか処方してくれれば良いじゃない」

ゆきさん
「今回、たとえ栄養剤をもらって良くなったとしても、根本治療にはなりません。むしろ、気がつかないで放っておいたら、甲状腺機能低下が悪化して、よりひどくなっていたかも知れません。」

林さん
「私もこの間は疲れていたから、感情的になっていたかもしれませんね。いつもゆきさんのおかげで助かっています」

ゆきさん、
「とりあえず、お元気になって良かったですね。今後も出来れば、今までの経緯を見ていただいている医師におまかせした方が良いですよ。またお待ちしています。いや、本当は来ない方が良いんですけどね」と笑いながら林さんをお見送りしました。

登場人物

★林 智子
林 智子(はやし ともこ) 40歳
橋本病
調子が良くないので、病院を変えようか悩んでいる

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~名前が違うよ!~

患者さんが集中して忙しかったのが少し落ち着き、ちょっとゆっくりできるかなというこいかにも初めてという雰囲気で、男性がゆきさん薬局に入ってこられました。

新人の真優ちゃんが、元気に「こんにちは」と言いながら処方箋を受け取りに行くと、男性は「これで、いいの?」と面倒くさそうに応えながら処方箋を真優ちゃんに渡しました。

真優ちゃんは「お預かりします」と笑顔で受取り、パソコンで生年月日を入力して小倉さんが登録されているか調べました。

新患さんであることを確認すると、真優ちゃんは処方箋に書かれているフリガナを見て、「小倉(こくら)さん、こちらの薬局初めてですね」と座っている小倉さんに話しかけました。

小倉さんは、返事もせず真優ちゃんをにらみつけました。

真優ちゃん、恐縮しながら話し続けました。
「ジェネリックの希望はどうされますか?」

小倉さん
「処方箋に書いてある通りで良いよ」

真優ちゃん
「一般名で書いてあるので、どこのメーカーの薬でもお選びいただけるのですが、どうしましょう」

小倉さん、吐き捨てるように言いました。
「まかせるよ」

真優ちゃん
「はい、わかりました。恐れ入りますが、こちらの薬局、初めての様なので、ご記入いただけますか」と初回質問票をお渡ししながらお願いをしました。

小倉さん
「書かなきゃいけないの」と言いながら受取り、「そもそも、小倉(こくら)じゃなくて小倉(おぐら)だよ」と不機嫌そうにつぶやきました。

真優ちゃん、「どうも、すいませんでした」と言って逃げるようにして事務さんに処方箋を渡しました。


~何で保険証を見せなければいけないの?~

ゆきさん、新患さんには保険証を確認させてもらうようにスタッフに指示しています。

事務さんは、通常通りの業務として小倉さんにお願いをしました。
「すいませんが、保険証を確認させていただけますか」

小倉さんは「何で見せる必要があるの」と言いながら、投げるようにして保険証を渡しました。

ゆきさんは、スタッフを助けようとしましたが、ここで話したら怒り出すと思ったので、思いとどまり少し時間をおいてから話すこととしました。

事務さんは、「病院が間違えることもあるので確認させていただいているんです。助かります。お預かりします」と言って、その場は終わりました。

薬の準備ができると、真優ちゃんはゆきさんに救いを求める目で見ています。

ゆきさん、会釈をして小倉さんの薬を持ってカウンターに向かいました。

ゆきさん
「小倉さん、ご用意出来ましたよ」

小倉さん、返事もせず呼ばれたカウンターに来られました。

ゆきさん
「ご不快な思いをさせたようで、すいませんでした」とお詫びから入りました。

ゆきさん、話を続けました。
「保険証は、間違いがあると私たち請求できなくなってしまうんです」

小倉さん
「そんなの、病院が悪いんだろ」

ゆきさん
「そうなんですが、病院が責任を取って支払ってくれることはありません」

小倉さん
「そうなんだ」

ゆきさん、「そうなんです。実際、今も間違ってきているんですよ」と言って処方箋を見せました。

「こくらとフリガナがふられてますでしょ。うちのスタッフはこれを見てこくらさんとお声掛けしてしまったんです」

小倉さん、ばつが悪そうにしていました。

ゆきさん、「小倉さんのご協力で助かりました。ありがとうございました」と言って保険証をお返ししました。


~患者さんと勝負をしています!~

ゆきさん
「それでは、お薬の説明をさせていただきますね。本日は喉が痛くておかかりになったようですね。抗生物質と喉の炎症を抑える薬、消炎鎮痛剤が出ています。抗生物質と喉の炎症を抑える薬は毎食後で飲み切って、消炎鎮痛剤は痛ければ飲むで構いません」

ゆきさん、風邪程度の時はあまりしつこい説明はしません。
あえて質問が出るくらい簡素な説明をして、患者さんから質問されるような環境を心がけています。

薬袋や薬情を見ればわかるような、決まりきった説明を望んでいない患者さんが多いからです。

小倉さんは、薬を受け取り、財布もしまい、帰る準備を始めました。

小倉さんが立ち上がりかけた時に、ゆきさんは声を掛けました。
「小倉さん、もしかして、ゆっくりお風呂に入っていませんか?」

小倉さん
「そうだけど、いけないの?」

ゆきさん
「早く治そうと思って、ゆっくりお風呂に浸かって温まる方がおられますが、それは喉の痛みを悪化させるんです。喉が痛いと言うことは炎症を起こしています。それを温めれば、腫れがひどくなって、痛みも増します」

小倉さん
「何だ、お風呂で温まっちゃいけないんだ」

ゆきさん
「はい」

小倉さん
「初めて聞いたよ。ありがとう」と小さい声で応えて帰りました。

患者さんが帰ると、ゆきさん、嬉しそうに真優ちゃんに話しかけました。
「真優ちゃんに話したことがあるかな。僕はいつも患者さんと勝負をしているんだよ」

真優ちゃん
「どんな勝負ですか」

ゆきさん
「患者さんが『ありがとう』と言ってくれるか、笑顔で帰ってくれれば勝ち、そうでなければ負けという勝負なんだ」

真優ちゃん
「うちでは、おばあちゃんから子供まで、みんなうれしそうに帰っていくので、連戦連勝ですね。でも、何でお風呂にゆっくり浸かっていると思ったんですか」

ゆきさん
「質問票の回答を見てごらん。怒っていたこともあるだろうけど、書きなぐっているでしょ。話していてもわかるけど、かなりのせっかちな人だよ。せっかちだからこそ、早く風邪を治そうと色んな事をしちゃうんだよね」

真優ちゃん
「へー、そうなんですね」

ゆきさん
「性格もわかった上で説明すると、喜んでもらえるんだよ。小倉さん、次回もうちに来てもらえると思うよ」とうれしそうに話すゆきさんでした。

登場人物

★小倉 大樹
小倉 大樹(おぐら だいき) 55歳 男性
面倒くさがり
せっかち

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~中耳炎になってしまった!~

いつも明るい田中さん、今日は三番目のお嬢さんと来局されました。
瑠佳ちゃんが、耳を押さえながら入ってきました。

ゆきさん
「あれ、瑠佳ちゃん今日幼稚園は?」

瑠佳ちゃん
「今日ね、痛いから幼稚園休んだの!」

ゆきさん
「耳を押さえているから、中耳炎かな?」

田中さん
「そうなんですよ。来週、イベントがあるのに困っちゃう」

ゆきさん
「それは困りましたね。すぐに用意しますね」

田中さん
「はい、よろしくお願いします」

ゆきさん、薬を揃えて田中さんをお呼びしました。
「田中さん、お薬揃いましたよ」


~クラバモックスの飲み方~

ゆきさん、クラバモックスの個別の包装を見せながら話し始めました。
「今日は中耳炎によく利用される抗生物質が出ています」

田中さん
「あら、これは見たことが無いわ」

ゆきさん
「そうでしたね。クラバモックスは個別の包装に入っています。この薬、粉がとても細かいんですよ」

田中さん
「いつものドライシロップのように、口に入れて飲ませればよいんでしょ」

ゆきさん
「瑠佳ちゃん、薬飲むの上手だから、それでも良いんだけど、粉が細かいんでむせることがあります」

田中さん
「あら、そうなの。その場合はどうやって飲ませるのが良いんですか?」

ゆきさん
「粉を少量の水に混ぜて、と言っても混ざらないんですけど。少量の水に入れてかき混ぜて飲ませてあげて下さい」

田中さん
「もう一つ薬が出ているけど、こちらは何ですか?」

ゆきさん
「クラバモックスは、飲むと結構で下痢する人が多いんですよ。だから、下痢を予防する整腸剤が出ています」

田中さん
「整腸剤なら、内科でもらったのがあるけど、それではダメなの?」

ゆきさん
「今日の整腸剤は、ビオフェルミンRと言って、普通のビオフェルミンとは違うんです。ビオフェルミンはいわゆる整腸剤ですが、Rは抗生物質が腸内細菌に悪さをするのを防ぐ抗生物質専用の整腸剤なんです」

田中さん
「じゃあ、これを飲んだ方が良いのね」

ゆきさん
「はい。面倒でしょうから、クラバモックスとビオフェルミンRを一緒に混ぜて、水に溶いて飲ませて下さい」

田中さん
「わかったわ。早速飲ませてみます」

ゆきさん
「早く治すためにも、すぐに飲ませてあげて下さい」

田中さん
「でも、朝夕食前になっているから、今晩の夕食前に飲ませれば良いかしら?」

ゆきさん
「今、10時過ぎで朝食も終わっているとは思いますが、今飲ませてあげて下さい」

田中さん
「食前でなくても、大丈夫なの?」

ゆきさん
「このクラバモックスの食前は、あまり大きな意味のある食前ではないんです」

田中さん
「どういうことですか?」

ゆきさん
「食前は、空腹時でないと吸収が悪くなるので、食前となっていることが多いのですが、クラバモックスの場合は、データのとり方が食前だっただけで、あまり根拠がないみたいなんです」

田中さん
「それじゃあ、食後でもかまわないの?」

ゆきさん
「メーカーに質問したら、『データーが無いからわかりません』となるけど、理論上では食前、食後のどちらでもそれほど変わらないと思いますよ」

田中さん
「どうもありがとう。帰って早速飲ませます」


~下痢が止まらない!~

翌日田中さんからの電話を、薬剤師スタッフの真優ちゃんが受けました。

田中さん
「ゆきさん薬局ですか。先日もらった、クラバモックスという薬で娘が結構下痢をしたのですが、飲ませ続けた方が良いですか?」

真優ちゃん
「えー、瑠佳ちゃん下痢したんですか。それはかわいそうな。クラバモックスの副作用ですよ。すぐに止めさせて上げてください」

横で聞いていたゆきさん、電話相手の田中さんにも聞こえるように、あわてて真優ちゃんを呼びました。
「真優ちゃん、作成中の薬作らないと、他の薬とわからなくなるから、こっちを先にやって。電話は変わるから」

真優ちゃん、不思議そうな顔をしながら、田中さんに「すいません、仕事が中途半端になっているので、電話変わりますね」と言って、ゆきさんに電話を渡しました」

ゆきさん
「田中さん、ごめんなさい。お電話変わりました」

田中さん
「ゆきさん、娘がクラバモックスを飲んでかなり下痢しているんですけど。止めた方がよいかしら?」

ゆきさん
「どれくらいひどい下痢なんですか?」

田中さん
「水状までにはなっていないけど、頻繁にトイレに行くんです」

ゆきさん
「そうですか。それはかわいそうな事になりましたね。今、うちのスタッフが話したようにクラバモックスの下痢の可能性が高いですね」

田中さん
「やはり、中止した方がよいかしら?」

ゆきさん
「処方された手塚先生ともお話したことがあるのですが、多少の下痢でも飲んでももらいたい場合があるんですって」

田中さん
「そうなんですね」

ゆきさん
「薬には必ずその期待される効果がありますが、なってほしくない副作用も生じてしまうことがあります。この効果と副作用のバランスを見ながら、我々は治療をしていくんです。中耳炎の場合には、耳の中なので、医師に見てもらわないと何とも言えないんです。改善している、もしくはそれほどひどくなければ、クラバモックスでなくても何とかなるとなるし、悪ければ下痢止めを飲んでもらってでも、治療継続したいとなります。だから、今回の件は医師にもう一度診てもらって相談してください」

田中さん
「そうよね。副作用があったから治療しなくてよいということにはなりませんものね」

ゆきさん
「はい」

田中さん、ゆきさんにお礼を言って早々に耳鼻科に向かいました。

ゆきさん、真優ちゃんに話しかけました。
「子供がかわいいそうだから、薬を止めるというのは気持ちはわかるけど、中止して中耳炎が悪化したら、もっとかわいそうな事になるんだよ」

真優ちゃん
「そうですね、すいません。しかも私のことを立てて、お薬作成中といっていただいたのですね。ありがとうございました。」

ゆきさん
「いや、本当に作成中だよ。ほら、分包機が音を立てて、真優ちゃんを呼んでいるよ。早く次の患者さんの粉薬作ってあげてね」

ゆきさんと真優ちゃん、二人ともうれしそうに目を見合わせていました。

登場人物

★田中 恵子
田中 恵子(たなか けいこ) 45歳 女性
専業主婦
毎日子育てに追われている

田中 瑠佳(たなか るか) 5歳
恵子さんの三女

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~ゆきさんは、在宅訪問サービスを行っています~

ゆきさん薬局では、薬剤師の在宅訪問サービスを行っています。

※薬剤師の在宅訪問サービスとは
通称「在宅」と呼ばれているのですが、認知症や手が不自由でご自身で薬の管理が出来なかったり、体が不自由で薬局に訪問できない患者さん宅に薬剤師が出向き、薬を管理します。

今日は、週に1度の福井さん宅を訪問する日です。
福井さんが、最初にゆきさん薬局に訪れたのは、8年前でした。
糖尿病薬をもらいにゆきさん薬局を訪れていたのですが、リウマチを発症し手足が思うように使えなくなり、ゆきさんが在宅訪問するようになりました。

ゆきさん、いつものように福井さん宅を訪れて部屋に入っていきました。
「福井さん、お久しぶり。1週間経つのが早いですね。お元気ですか?」

福井さん「本当だねえ。おかげさんで、まだ生きてるよ」とうれしそうに答えました。

ゆきさんも「また、そんなことを言って。福井さんのその笑顔なら、死神様もまだまだ連れて行けないと逃げていくね」とうれしそうに答えました。

福井さん
「そうかい。いつ行っても良いんだけどね」

ゆきさん
「だめだめ、うちの仕事を無くさないようにしてよ」

福井さん、笑いながら答えました。
「そうか、じゃあお中元でも持ってきてもらわないと」

ゆきさん
「お菓子でも持ってきたいのは山々だけど、福井さん目の前にあると何でも食べちゃうから、糖尿病に良くないよ」

福井さん
「そうだね。そうそう、このチョコレートもらったから、持って行っておくれ」

ゆきさん
「何だ、結局いつも僕がもらう方ですか。遠慮なくもらっていきますよ」
福井さんの目の前から誘惑を取り除くのも愛情だと思って、ゆきさんは素直に受け取って帰ります。


~ペン型タイプだと自分で注射できない~

ゆきさん
「前回からインスリンの注射が出たけど、上手に利用できましたか?」

福井さん
「あれね、押すところが結構固いんだよ」

福井さんが利用しているのは、ペン型タイプのインスリン注射です。

ゆきさん
「え、そうなの!これは衛生的だし量の調節も簡単で喜ばれているんだけどね」

福井さん
「みんなには良いのかもしれないけど、私には固いんだよ」

ゆきさん
「そうかあ、じゃあ宿題として考えて来ますね」

ゆきさんの経験では、薬局でお渡しするインスリン注射を、ペン型タイプ以外を見たことがありませんでした。

ゆきさんは薬局に戻り、他の剤形は無いか調べてみました。

調べてみると、ペン型タイプが最も普及しているのですが、イノレットタイプというのが見つかりました。

ペン型タイプは軽くて便利なのですが、握力が弱い人には持ちにくく注入部分のボタンが押しにくく感じます。

それに対してイノレットタイプは握力や視力の低下した患者さんや、高齢の患者さんでも扱いやすく、簡便に操作できるよう握りやすい形状になっていて、単位目盛も見やすくしてあります。

ペン型タイプもイノレットタイプもプレフィルドタイプと呼ばれるインスリン製剤と注入器が一体になっているので扱いやすいはずです。

ゆきさん、早速福井さんに電話しました。
「福井さん、便利そうなタイプのインスリン注射が見つかったから、先生に相談して変更してもらうようにお願いするね」

福井さん
「本当かい。よくわからないけど、頼むよ」

ゆきさん、処方もとの医師に電話で疑義紹介をしてイノレットタイプに変更してもらいました。

※疑義照会とは
薬剤師が処方箋を元に調剤を行う際、処方箋の記載に疑問点や不明点を感じた場合に処方箋の作成者に対して内容の確認を行うこと。

ゆきさんが福井さん宅を訪れたときは、ちょうどインスリン注射を打つタイミングでした。

目の前で利用法を説明して、その場で打ってもらいました。

福井さん
「これなら、使えるよ。いい仕事してくれるね」と福井さんならではの方法でゆきさんに感謝していました。


~食事中に低血糖になる~

福井さんは注射を打ち終えると、別の相談を持ちかけました。
「この注射を打った後に、ふらふらするんだよね」

ゆきさん
「食直前に打っているんでしょ」

福井さん
「そうだよ。でも食事が終わる前に何となくふらつき始めるんだよ」

ゆきさん、しばらく考えてから、次の質問をしました。
「福井さん、食事を終わるのにどれくらい時間がかかりますか」

福井さん
「どれくらいかはわからないけど、手が悪いからゆっくり食べているよ」

ゆきさん
「やはり、そうか。リウマチで手が不自由だから、食事を取るのに時間がかかるでしょ」

福井さん
「そうだよ」

ゆきさん
「このインスリン注射が食直前なのは、食後の血糖値が上がるのを抑えるためなんです。ところが福井さんの場合は、食事の時間がかかるので、食後の血糖値が上がる前に血糖低下が始まってしまうんですよ」

福井さん
「そういうことか。そりゃ、食事中に血糖値が下がるはずだね」

ゆきさん
「だから、今後は食事を開始してしばらくしてから注射を打ってみてはいかがですか」

福井さん
「そうだね、そうしてみるよ」

ゆきさん
「試してみて、次回その経過を教えてくださいね」

福井さん
「OK。いつもありがとう」

ゆきさん
「いえいえ、こちらも良い勉強になりました。ありがとうございます」

福井さん
「何だよ、わたしは、ゆきさんの実験かい」

ゆきさん、「はい、よろしくお願いします」と言ってうれしそうに帰りました。

登場人物

★福井 敏江
福井 敏江(ふくい としえ) 68歳 女性
リウマチで手足が自由に使えない
糖尿病だが、状態が安定しない

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~ママ友の紹介で来ました!~
見慣れない患者さんが、ゆきさん薬局に自転車で訪れました。

処方箋をお預かり、パソコンで生年月日を入力して確認しましたが、やはり初めての来局でした。

ゆきさん
「浅井さん、こちらの薬局に来られるのは初めてですか?」

浅井さん
「えー、初めてです」

ゆきさん
「自転車で迷わずさっそうとおいで頂きましたけど、何故うちの薬局をお選びいただいたのですか?」

浅井さん
「『ゆきさん薬局なら、親切な先生がいて色んなことを教えてくれる』とママ友の間では評判ですよ。だから、私も来てみたんです」

ゆきさん、「そうなんですね。それはうれしいなあ」と素直に喜びながら返事をしました。

浅井さん「でも、ママ友の評判は怖いわよ!どこかで悪いことをしていたらすぐに見つかるから」と、初対面のゆきさんをからかいました。

ゆきさんも「それは困るなあ。評判はうれしいけど、夜に出歩いていたら見つかりますね」と笑いながら答えました。

浅井さん
「そんなことよりも、ゆきさんに教えてもらいたかったのでこちらに来たんのですが」

ゆきさん
「あーそうでしたね。すいません、きちんと仕事します」

浅井さん笑いながら「お願いします」と言って、相談を始めました。


~2種類の坐薬の使い方~

「今日は熱性痙攣で病院を受診したのですが、色々質問したくても混んでいたら、気が引けるでしょ。説明はしてもらったのですが、よく理解していなくて。もう一度教えて欲しいんです」

ゆきさん
「なるほど、そうですね。今日は2種類の坐薬が出ています」

浅井さん
「解熱剤と痙攣を抑える薬でしょ」

ゆきさん
「はい、アンヒバという解熱剤とダイアップという痙攣を抑える薬です」

浅井さん
「熱が出た時に、どのように使えばよいのですか?」

ゆきさん
「熱性痙攣は、熱が上がるときに起こりやすいです。目安として37.5度を超えてきたら、早急にダイアップ坐薬を挿入して下さい」

浅井さん
「先に解熱剤ではないんですか?」

ゆきさん
「ダイアップは油に溶ける性質があります。一方、アンヒバは油に溶かし込んで作られています。アンヒバを先に使う、もしくは同時に利用してしまうと、アンヒバの油にダイアップの主成分が溶け込んでしまって、効果が現れるのが遅くなってしまいます。それで、ダイアップを先に利用してほしいんです」

浅井さん
「そうなの!せっかくダイアップを挿入しても、アンヒバを先に入れていると効くのが遅れるのね。ダイアップは挿入してから、どれくらいの時間で効果が出るんですか?」

ゆきさん
「効果が現れるには、30分程度かかります」

浅井さん
「それでは、ダイアップの効果が現れる30分ほど待ってから、アンヒバを利用すればよいのですね」

ゆきさん
「えー、その通りです」


~熱性けいれんの対処法を紹介します~

浅井さん
「熱性けいれんに対して、注意することはありますか?」

ゆきさん
「熱性けいれんは子供のころ、具体的には5歳くらいまでに起きるのがほとんどで、8歳以上になるとほとんど起こらないと言われていますから、あまり悲観的にならないでください」

浅井さん
「それを聞いて安心したわ」

ゆきさん
「とはいえ、1度けいれんを起こすと再発をする確率は意外と高いので、対処法は覚えておいた方が良いですよ」

浅井さん
「えー本当ですか。この間は怖くてすぐに救急車を呼びましたけど、いけなかったのかしら」

ゆきさん
「救急車が来たころには、けいれんは落ち着いていたでしょ」

浅井さん
「はい」

ゆきさん
「隊員によっては、怒られるかもですよ。まずは落ち着いて時間を確認してください。たいていの場合は2~3分で治まります」

浅井さん
「ただ様子を診ているだけで良いのですか」

ゆきさん
「見ているだけというのはおつらいかもしれませんが、ゆすったり、大きな声で呼びかけないでくださいね。その刺激でけいれんが長引いてしまうことがあります。衣類が苦しそうなら緩めてあげたり、嘔吐しそうなときは、顔を横に向けて吐いた物がのどに詰まらないようにして下さい。気道を確保するために、いずれにしても体を横に向けてあげた方が良いです」

浅井さん
「どんな場合に救急車を呼んだ方が良いのですか」

ゆきさん
「けいれんが10分以上続いていたり、けいれんが治まっても意識が無かったり、嘔吐、頭痛がある場合は、迷わず救急車を呼んでください」

浅井さん
「落ち着いてできるかしら」

ゆきさん
「発熱時に、予防としてダイアップ坐剤を挿入してあげれば、けいれんを起こすことは無いでしょう。利用すると、一時的に眠気、ふらつきが出たり、かえって興奮することもあるかもしれませんが、2~3時間で治まりますから、心配しないでください」

浅井さん
「これで安心したわ」

ゆきさん
「あともう一つだけ注意してください」

浅井さん
「え、まだあるんですか」

ゆきさん
「熱性けいれんを起こしやすくする薬があるんです。風邪やアレルギーに使う抗ヒスタミン薬や、ぜんそく治療に利用するテオフィリン製剤です。熱が高くない時に利用するのは問題ありませんが、熱が上がってきたときは控えた方が良いですよ」

浅井さん
「本当にありがとうございました」

「紹介してくれたママ友によろしくお伝えください。そして今後とも、お手やわらかにしてくださいね」とうれしそうに見送るゆきさんでした。

登場人物

★浅井 美香
浅井 美香(あさい みか) 3歳
熱性けいれんになってしまった
ママ友の紹介で初めての来局

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~日焼け最中に寝てしまった!~

いつも花粉症のシーズンにうれしそうに薬局を訪れてくれる工藤さん。
鼻水で苦しんでいるようでもないのに、ゆきさん薬局を訪れました。

工藤さん
「ゆきさん、今日は処方箋が無いけれどもご相談があって来ました」

ゆきさん
「あら、どうしました。美人の訪問はいつでもウエルカムですよ」と言って出迎えました。

工藤さん
「ゆき先生、ほめても何も出ませんよ。それより、先日友達と海に行って寝てしまったの。それでこんなに日焼けしちゃって。どうすれば良いですか?」

よく見ると薄着のブラウスから、日焼けで首の部分がただれているのが見えます。

工藤さん、続けて質問しました。
「日焼け程度で、受診してよいのかしら?」

ゆきさん
「もちろん、大丈夫ですよ。それだけ日焼けしたら、痛いでしょう」

工藤さん
「ええ」

ゆきさん
「日焼けのひどいのは、やけどと同じです。その状態だとステロイドを塗らないと追いつかないと思います。市販でもステロイドは販売していますが、首の部分はそれでも良いけど、他の肩とかは、それよりも強いステロイドの方が良いでしょう。ステロイドには、スプレータイプもあります。広範囲だし、塗るのも痛くて大変でしょうから、スプレーが楽じゃないかな。皮膚科に行って相談してみてください」

工藤さん
「それじゃ、皮膚科に行っても大丈夫ですね」

ゆきさん
「はい。それから、ついでにビタミンCももらっておくと良いです。ビタミンCはご存知の通り、色素沈着を防ぐので、美白に利用するビタミン剤です。医師に相談してみて下さい。児玉先生なら、私は面識もあるので、ゆきさんに紹介されたと言って相談して下さい。強面な先生だけど、『ゆきさんの紹介か』と笑いながら処方してくれるから」

工藤さん
「それは良かった!それじゃあ、すぐに行ってきます」と言って、皮膚科に向かいました。


~奥の深い保湿剤の利用方法~

ゆきさん、工藤さんが出られた直後に児玉先生に電話しました。
「児玉先生、お世話様です」

児玉先生
「雪原先生、こちらこそ、いつも患者さんをご紹介いただきありがとうございます」

ゆきさん
「先生、これから工藤さんという女性の患者さんが日焼けの相談でお伺いすると思います」

児玉先生
「そうですか、早いものでそういう季節になりましたね」

ゆきさん
「本当に、そうですね。それでその患者さんに、スプレータイプのステロイドがあることをお話したのですが、うちに今あるのがフルコートスプレーになります」

児玉先生
「患者さんも急いで利用したいでしょうから、それを処方すれば良いのですね。了解しました」

ゆきさん
「よろしくお願いします」と言って電話を切りました。

工藤さん、しばらくして処方箋を持って戻って来られました。
「ゆきさん、電話してくれていたのですね。児玉先生とスムーズに相談ができました」

ゆきさん
「予定通りでしょ!」

工藤さん
「えー助かりました。でも、打合せとは別に薬が処方されたのだけど、これは何で出たのですか?」

ゆきさん
「ヘパリン類似物質外用スプレーとヘパリン類似物質油性クリームですね。これは保湿剤ですよ」

工藤さん
「ステロイドだけでは、ダメなんですか?」

ゆきさん
「ステロイドは、ただれた肌を治療するのに利用します。治療だけを考えると、ステロイドだけで良いと思うかもしれませんが、皮膚は傷つくとバリア機能が損なわれて、水分が不足します。保湿剤は、そのバリア機能の役割をすると共に、直接水分を補う役割もしています」

工藤さん
「なるほど、傷んでいるところを治すだけではなく、バリア機能を高めてより速く治るようにするんですね」

ゆきさん
「そうなんです。工藤さんの場合は、まず悪いところにフルコートスプレーをしてください。それを皮膚になじませてから、ヘパリン類似物質油性クリームで閉じ込めるように塗るとより効果があります。それほどひどくはないところは、ヘパリン類似物質外用スプレーで水分を補って、同じくヘパリン類似物質油性クリームで閉じ込めるように塗ると保湿力を高めます」

工藤さん
「液体となるスプレータイプを、先に使用した方が良いのですね」

ゆきさん
「薬を油性クリームで閉じ込めるので、それが良いです。通常、ステロイドを利用するときは、悪い部分だけに塗りたいので、保湿剤の後に利用することをお話ししていますが、今回はステロイドが液体なので、先に塗った方が良いと思います」

工藤さん
「いつも、親切に説明ありがとうございます!」


~サングララスの選び方もお知らせします!~

ゆきさん
「ところで、工藤さん、サングラスはしていたの?」

工藤さん
「えー、していました」

ゆきさん
「UVカットだった?」

工藤さん、笑いながら答えました。
「若いから、見た目重視です。UVカットまで気にしていませんでした」

ゆきさんも笑いながら、話しました。
「若くなくても、デザインは重視するんだよ」

工藤さん
「それは、そうですよね。失礼いたしました。それで、サングラスでもUVカットの必要があるんですか?」

ゆきさん
「紫外線は、肌や髪だけでなく、目にも様々な病気をおこす原因になります。また、目に入る紫外線は日焼けの一因とも言われているんですよ。だから、紫外線をカットすることは重要なんですよ」

工藤さん、冗談交じりに話しました。
「サングラスは、黒ければ良いのかと思っていました」

ゆきさん
「そう思うでしょ。ところがUVカットが無ければ、逆効果なんですよ」

工藤さん
「えっ、どうしてですか?」

ゆきさん
「サングラスの色が濃かったら、瞳孔が開くでしょ。ということは、多くの紫外線を目に取り込むことになってしまいます」

工藤さん
「やばーい。良いこと教えてもらいました。ありがとうございます」

「そう、やばいんですよ!気を付けてね」と笑いながら答えるゆきさんでした。

登場人物

★工藤 菜月
工藤 菜月(くどう なつき) 23歳 女性
スポーツ大好きのOL
花粉症で毎年春に来局している

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~夜に突然の電話!~

ゆきさんが仕事を終え、ゆっくりと自宅でくつろいでいるとき、携帯電話の呼出音がなりました。
こんな遅くに誰だろうと思って電話に出てみると、いつも礼儀正しく薬局を訪れる大原さんでした。

大原さん
「夜分遅くに申し訳ありません。お薬の事でご相談があって電話したのですが、今よろしいでしょうか?」

ゆきさん
「はい、大丈夫です。どうされましたか?」

大原さん
「実はデルモベートスカルプローションを間違えて目に点してしまったのですが、大丈夫ですか?」

ゆきさん
「え、頭皮の湿疹に塗っていただくお薬を点眼されたのですか?」

大原さん
「疲れていたのかな。何となく手にとって点眼してしまったんです」

大原さん、電話の声はとても落ち着いていましたが、内心きっとパニックになって電話してきたのだろうと想像が出来ました。

ゆきさん、まずは現在の状況について確認しました。
「デルモベートスカルプローション点眼後は、どんな対処をされましたか?」

大原さん
「点眼直後に電話をしたので、何もしていません」

ゆきさん、本来ならPCで薬歴を確認しながらお話をするのですが、自宅なのでPCは見ることが出来ません。
大原さんに、直接質問をしました。
「まずは洗浄をしたいのですが、何か目薬をご利用でしたか?」

大原さん
「いつも、白内障の目薬カリーユニを利用しています。他にコンタクトをしているので、違和感がある時にソフトサンティアを利用しています」


~まずはあわてず、対処法を説明~

ゆきさん
「ソフトサンティアがあるのですね。まずは、目を洗い流すイメージで、それを何度か点眼してください。電話はこのままで良いですから、すぐにやって下さい」

大原さん、「はい」と答えてすぐに点眼を始めました。

しばらくしてから、大原さんが電話口に戻ってきて話し始めました。
「ゆき先生、洗うように目薬をしました」

ゆきさん
「目の状況はいかがですか?」

大原さん
「少しヒリヒリしますが、我慢できないほどではありません」

ゆきさん
「そうですか。今日はそれで様子を見られると良いと思います。激しく痛みが出たり、目が見えにくい様であれば、救急で相談して下さい」

大原さん
「大丈夫ですかね?」

ゆきさん、大原さんが安心して眠れる様にお話を始めました。
「デルモベートスカルプローションは、ステロイドの入っている塗り薬です。ステロイドは目の炎症を抑えるために、目薬としても利用します。但し、塗り薬と点眼とでは、濃度や添加物が違うので、塗り薬を目に点すことは望ましくありません」

大原さん
「そうですよね」

ゆきさん
「そのために、洗浄をしてもらったんです。ソフトサンティアはご存知のように涙の成分に近いものなので、目にとても優しいです。それが無ければ、水道水で洗ってもらったのですが、水道水だと塩素があって刺激になる可能性もあります」

大原さん
「じゃあ、たまたまソフトサンティアを持っていて良かったのですね」

ゆきさん
「そうですよ。洗うのが速ければ速いほど目への影響は少ないので、すぐにお電話いただいて良かったです。明日は一応眼科を受診して下さい。傷ついているかも知れませんから」

大原さん
「どうも、夜にすいませんでした。ゆきさん薬局に行っていて良かったです。どうもありがとうございます」と言って電話を切りました。


~この目薬は適切なの?~

翌日、眼科の処方箋を持って、大原さんが来局されました。
「いやー、昨晩はご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」

ゆきさん
「いえいえ、大丈夫ですよ。それでお具合いかがですか?」

大原さん
「やはり、少し傷になっているみたいです。」

ゆきさん
「まあ、少しくらい傷がついていても仕方が無いでしょう。でも、大したことが無かったので良かったですね」

大原さん
「どうもありがとうございます。それで、今日眼科に行ったのですが、先生が  『どうしようかな』と言いながらフルオロメトロンを処方していたのですが、大丈夫ですか?『ステロイドで傷をつけたのだから、どうしようか』って迷っていたみたい」

ゆきさん
「あ、今日は木曜日だから院長ではなく、代診の先生の日ですね」

大原さん
「そう、若い先生だからちょっと心配で」

ゆきさん
「目の炎症が起きている場合は、大抵、抗生物質と炎症を抑えるステロイドの点眼が処方されます」

大原さん
「それはわかるんですが、ステロイドで痛めて、またステロイドを点眼して良いのですか?」

ゆきさん
「大原さんは、通常、目に利用しないステロイドか、添加物で目に炎症を起こしました。しかし、それを洗い流して、通常の状態にもどして治療を開始するのですから、目に適切なステロイド点眼を利用することは全然問題ありません」

大原さん
「じゃあ、この目薬を使って大丈夫ですね」

ゆきさん
「大丈夫ですよ。抗生物質は、目が弱っている状態なので眼病予防として、ステロイドは、傷を治す為に出ています。両方とも利用しておいた方が良いです。院長先生だと、その間はカリーユニは点さなくて良いとよく話されています。2種類の点眼を利用する時は、5分はあけて下さいね。連続して点眼すると、後の目薬で前の目薬が流されてしまうので、前の目薬が意味のない事になってしまいます。また、フルオロメトロンは濁っているので、その都度よく振って利用し、同時に点眼する場合は、後に点眼すると良いです。」

大原さん
「どうもご親切にありがとうございます。安心して目薬を利用させていただきます」

ゆきさん「そりゃ、『どうしようかな』と言われながら処方されたら心配になりますよね。安心して利用下さい」

「お薬、すぐに準備しますね」と言いながら、うれしそうに調剤室に入るゆきさんでした。

登場人物

★大原 辰夫
大原 辰夫(おおはら たつお) 60歳 男性
上品で出礼儀正しい紳士
白内障の点眼、頭皮湿疹の薬を利用している

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~サプリメントなら安全でしょ!~

いつも決まった薬シロスタゾール、ピタバスタチン、イコサペント酸エチルカプセルをもらいにくる井上さんが来局されました。
「ここの所とても調子が良いの。ところが、鼻血が大量に出たのよね。これって、最初にシロスタゾールを飲み始めたときにも起きたんだけど、久しぶりにそれが起きたの。今は止まって何とも無いけど、このまま飲んでいて良いのかしら?」

ゆきさん
「井上さん、薬を飲むようになったきっかけは、何ですか?」

井上さん
「私、薬は嫌いで健康食品のDHA、EPAをとっていたのだけど、先生に『それなら処方薬でもあるよ』と言われて処方してもらったの」

ゆきさんは、本当は病気のきっかけや、そもそも今の処方薬が必要になった理由を聞きたかったのですが、まずは話を聞き続けました。

井上さん
「サプリメントなら体に害が無いでしょ。だからそれは飲んでるの!」

ゆきさん
「サプリメントが全て安全、安心ということは無いんですよ。今はネットでも購入できるから、何が入っているかわからないようなものもあります」

井上さん
「えー、そうなの!」

ゆきさん
「健康被害が出て、ニュースになっていることもありますよ」

井上さん
「それじゃ、何を信じて良いかわからないじゃない」

ゆきさん
「例えば、JHFAという品質を保証するマークがあります。これは第三者機関でサプリメントが安全に、適正に作られているのかを確認するマークです。これが無ければ必ずしも安全では無いというわけではありませんが、安心の一つの目安になります」

井上さん
「ふーん」

ゆきさん
「他に健康への効用を示す『特定保健用食品』というマークもあります。これは国が食品に健康表示を許可しているというマークなんです。このマークが無くて、効果をうたっているものがあれば、違法なので注意した方が良いです。また、高品質なサプリメントでも、状況によってはその素材を飲まない方が良い場合もあります」

井上さん
「サプリメントもなかなか難しいのね」

ゆきさん
「井上さんが飲んでいるEPAは特定保健用食品にもなっているし、医薬品として存在するものだから飲んでおくのは良いと思います」


~とにかく薬は、あまり飲みたくないの!~

ゆきさん、やっと本題の質問に入ることが出来ると思ったら、井上さんが再び話し始めました。
「このシロスタゾールは出血しやすいんでしょ。こういうのは飲みたくないわ。もう一つの薬(ピタバスタチン)も筋肉を壊すことがあるんでしょ。それも嫌なのよね」

ゆきさん
「確かに、不必要な薬は飲みたくないですよね。まずはピタバスタチンの方からお話をしましょう。今までずっとうちの薬局でお薬をお渡ししていましたけど、ピタバスタチンを飲み始めて、何もお変わりなかったですよね」

井上さん
「えー、特に問題ありません」

ゆきさん
「このピタバスタチンの副作用は、井上さんご指摘の通り、筋肉を壊すというのがあります。具体的には筋肉がだるくなったり、痛くなったりします。大抵は飲み始めに起こる副作用で、井上さんのように長く飲み続けている方は、ほとんどの場合問題ないですよ」

井上さん
「なら、私は気にしなくて大丈夫なのね」

ゆきさん
「そうですね。もし副作用が起きたとしても、血液検査でわかります。数ヶ月に一度は血液検査をしているので、副作用が起きればすぐにわかるはずです。安心して良いと思いますよ」

ゆきさん、ようやく一番気にしていた質問に入れました。
「もう一つのシロスタゾールを飲むようになったきっかけは、何ですか?」

井上さん
「人間ドックで、『脳梗塞一歩手前だから薬を飲んだ方が良い』と言われて飲み始めることになったの」

ゆきさん
「それじゃあ、安易に止められる薬ではないですね」

井上さん
「そうなの。でも、鼻血が出たので心配なの」


~専門医に診てもらいましょう!~

ゆきさん
「一番最初にシロスタゾールを処方したのは、どの先生になるのですか?」

井上さん
「人間ドックは幸生会病院だったので、そこの先生に処方してもらいました。その後は、自宅の近くが良いということで、岩谷先生で診てもらうように指示されて、そこで同じ薬をもらうようになりました。」

ゆきさん
「それで、岩谷先生を受診されているのですね」

井上さん
「岩谷先生に薬を減らしたい相談をしても、幸生会病院の先生が決めたことなので、変えづらいと頭を抱えられてしまうの」

ゆきさん
「それは、岩谷先生も悩ましいところだと思いますよ。そもそも、岩谷先生は呼吸器が専門だから、循環器の薬のさじ加減は、より慎重になるんじゃないかな」

井上さん
「幸生会病院に検査に行くこともあるのだけど、病院の先生もよく変わるから、『問題無いから、そのままに続けなさい』で終わるのよね」

ゆきさん
「井上さん、このシロスタゾールですが、今の血栓を起こさない良い状況を保っている薬なので、なかなか止める判断は難しいですよ。お薬を止めたいという気持ちはわかりますが、必要な薬はやはり飲まなければだめですよ」

井上さん
「今まで2回しかないけど、鼻血が出ても続けないとダメなの?」

ゆきさん
「鼻血では大きな問題が起こることは少ないですが、脳梗塞は死に至ったり、後遺症を起こしたりするので怖いですよ。飲み続けておいた方が良いと思うけどなあ」

井上さん
「でも、体調は良いのよ」

ゆきさん
「一度、循環器が専門の先生に診てもらってはいかがですか。近所では花田先生が循環器の専門です。検査設備も結構整っているので、診てもらうのが一番ですよ」

井上さん
「勝手に行ってよいのかしら?」

ゆきさん
「病院ではなく、開業医の先生だから、紹介状が無くても大丈夫ですよ」

井上さん「それなら、行ってみるわ」と言って帰られました

数日後、再び井上さんが薬局を訪れました。
「ゆき先生、やはり薬を飲むことにしたは。それにしても同じ内科でも検査設備が全然違うのね」

ゆきさん
「そうでしょ。一口に内科と言っても、それぞれ専門があるんです。いずれにしても納得して薬を飲んでもらえれるのが、こちらとしてもうれしいことです。薬の効果も、納得しているのとしていないのでは、大違いです」

井上さん、笑いながら話しました。
「それは無いでしょ。同じ薬なんだから」

同じく笑いながら「いやいや、信じる者は救われるですよ。信じて飲んで下さい」と答えるゆきさんでした。

登場人物

★井上 佳代子
井上 佳代子(いのうえ かよこ) 59歳
シロスタゾール、ピタバスタチン、イコサペント酸を服用中
薬を飲むのが嫌いで、常になるべく減らしたいと考えている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~点眼薬は色々試したが、眼圧は下がらない~

見慣れない患者さん白井さんが、初めてゆきさん薬局を訪れました。
白井さんキョロキョロしながら、ゆきさんに「ここでも眼科のお薬もらえますか?」と話しかけました。

ゆきさん
「もちろん!どこの処方箋でも受付けています」

白井さん
「こちらの薬局が親切だからと友達に聞いて、こちらに来たんですけど」

ゆきさん
「わざわざありがとうございます。それでは処方箋をお預かりしますね」と言って、処方箋を受け取り目を通し始めました。

白井さん
「実は、目薬を利用してもなかなか眼圧が下がらなくて、色々と目薬を試しているんです」

ゆきさん
「そうなんですか。毎日、きちんと利用されているのですよね」

白井さん、笑いながら「真面目な方なので、きちんと毎日点眼しています!」と答えました。

ゆきさん、さらに続けて質問しました。「点眼後、目頭を押さえていますか?」

白井さん
「え、そんな必要あるんですか?」

ゆきさん
「目頭を数分間、押さえることによって、目薬が目にとどまって、より治療効果を高めます。意外と単純なことですが、これで、きちんと眼圧が下がることって多いんですよ」

白井さん
「そうなんですか。今まで眼圧がなかなか下がらなかったから、先生と相談して薬の変更ばかりしていました。ぜひ試してみます」


~咳が出るようになった~

薬が終わるであろう4週間後に、白井さんが再びゆきさん薬局を訪れました。
白井さん、嬉しそうにゆきさんに話しかけました。
「先生、おかげさまで眼圧下がりました」

ゆきさん
「本当ですか!それは、良かった。目頭を押さえるという単純なことだけど、意味あったでしょ」

白井さん
「えー、とても助かりました。先生もほっとしていました。『薬剤師さんに目頭を押さえることを教えてもらった』と話したら、『良い薬局に巡り合えて良かったですね』と言われました。本当にありがとうございました」

ゆきさん
「緑内障は失明に至る怖い病気だから、本当に良かったです」

白井さん
「ところで、最近咳がよく出るんですが、風邪が流行っていますか?」

ゆきさん
「暖かくなってきたし、そんなに風邪の人は多くないですよ」

白井さん
「私、喘息傾向があると言われたことがあるので、風邪をひかないようになるべく気を付けているんです」

ゆきさん
「あれ、白井さん、初回質問票に喘息なんて書いていませんでしたが、そうだったんですか?」

白井さん
「もらうのは目薬だけだから、気にせず既往歴に『特になし』と書いてしまいました」

ゆきさん
「白井さんが利用している目薬ザラカムは、ラタノプロストとチモロールマレイン酸塩の2種類の薬が配合されています」

白井さん
「えー、『眼圧が下がらないから、配合剤にしましょう』とは聞いています」

ゆきさん
「この中のチモロールマレイン酸塩は、喘息の患者さんには使用禁止です。うちの初回質問表に、喘息の項目があるのはそのためなんです」

白井さん
「私の場合は、喘息と言っても風邪をこじらせたときに、お医者さんから『アレルギーの傾向があるようだから、気をつけてください』と言われた程度なので、気にしていませんでした」

ゆきさん
「とにかく、点眼をしてから咳が出るようになっているみたいなので、薬を変えてもらいましょう。特に、目頭を押さえるようになって、眼圧が下がっているようなので、ラタノプロストだけでも眼圧が下がるような気がします」

白井さん
「あら、そう。ここでそんなことが出来るの?」

ゆきさん「私から先生に直接電話して相談するので、お待ちください」と言って、早速医師に疑義紹介をしました。

※疑義照会とは
薬剤師が処方箋を元に調剤を行う際、処方箋の記載に疑問点や不明点を感じた場合に処方箋の作成者に対して内容の確認を行うこと。

電話を終え、薬の準備をして白井さんに話し始めました。
「先生と相談をして、ルミガンにすることにしました。ラタノプロストと同じ系統の目薬ですが、先生は『ルミガンの方が効果が高い』と判断されたようです。こちらを1日1回で試して様子を見てください」

白井さん
「ご丁寧にありがとうございます。私には何もわからないので助かりました」

ゆきさん
「いえいえ、これで眼圧が安定すると良いですね」


~充血するようになった~

ルミガンを利用し始めて4週間後、白井さんがゆきさん薬局を訪れました。

白井さん
「先生、すごいですね。眼圧低く安定しました。本当にありがとうございます」

ゆきさん
「そうですか!良かったです」

白井さん
「でもね、目が充血するようになったんです」

ゆきさん
「充血の副作用が出てしまいましたか。前回は咳の対応に気をとられていて、副作用のお話まで出来ませんでした。ごめんなさいね」

白井さん
「そんな先生、謝らないでください。でも、充血の副作用があるんですね」

ゆきさん
「そうなんです。それで、目の充血はずっとしていますか?」

白井さん
「先生に言われたとおり、寝る前に点眼しているのですが、午前中はずっと充血しています。でも、午後には薄れていくので、あまり気になりません」

ゆきさん
「いつも寝られるのは、何時頃ですか?」

白井さん
「11時頃です」

ゆきさん
「充血が薄れてくるのが、12時過ぎくらいですよね。という事は、点眼後13時間くらいで充血が薄れるということになります。そうであれば、お仕事が終わって自宅に帰られた直後に点眼するのが良いですよ。例えば、お買い物が終わって夕方5時頃点眼すれば、朝6時頃には充血が取れることになります」

白井さん
「そうか、充血が取れる時間を逆算すれば良いのね。本当に助かるわ。お友達に紹介してもらって良かった。私もお友達に紹介するわね」

うれしそうに「よろしくお願いします」と答えるゆきさんでした。

登場人物

★白井 浅子
白井 浅子(しらい あさこ) 62歳
緑内障
風邪をひくと喘息ぽくなる

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~ほてりは取れたけど、多汗症が激しくて!~

更年期障害で悩んでいる相澤さんが、薬局を訪れました。
ゆきさん早速お薬の準備をして、電子薬歴を診ながら処方箋を見ながら、相澤さんに話しかけました。
「あれ、今日は桂枝茯苓丸では無いのですね。ずっと飲んでいたから、桂枝茯苓丸で症状が落ち着いているのだと思っていました」

相澤さん
「本多レディースクリニックで処方してもらっていた桂枝茯苓丸を飲んで
、ほてりは取れて来たんですけど、多汗症が治らないんです。それでその相談をしたら、このパッチにしてみようということになりました」

ゆきさん
「そうだったんですね」

相澤さん
「この薬は飲むのではないようだけど、どう使うんですか?」

ゆきさん
「今日の薬は、メノエイドコンビパッチという貼り薬です。週に2回、3~4日に1回貼り替えをします。下腹部に貼ってほしいのですが、かぶれるといけないので、場所を少しずつ変えてください」

相澤さん
「今までの漢方とはどう違うのですか?」

ゆきさん
「漢方では血液の循環が悪い状態をお血と言います。桂枝茯苓丸は、そのお血を取り除くことによって、熱のバランスやホルモンのバランスを整えていきます。今日の薬は、いわゆる女性ホルモン剤です。ホルモン補充療法と言って、女性ホルモンを補充することによって、更年期障害の症状を改善していきます」

相澤さん
「どっちの方が効くのですか?」

ゆきさん
「漢方には、患者さん一人一人の心と体の状態をあらわした『症』というものがあります。この『症』に当てはまると本当に良い効果を得られます。一方ホルモン補充療法は、急速に低下したホルモンを直接補充するので、より効果は確実だと言えます。しかし、血栓症や乳がんが起きることがあるという怖い副作用があるので、慎重に利用します」

相澤さん「なるほど、安全な方を先生は先に処方してたのね。じゃあ、これを試してみるわ」と言って帰られました。


~汗ではがれるのだけど、下腹部で無いとだめ?~

数日後、相澤さんが相談に訪れました。
「私、多汗症で困っているでしょ。この薬を下腹部に貼ると汗ではがれてしまうの。下腹部でなくても大丈夫ですか?」

ゆきさん
「それはお困りでしょう。汗対策のご質問ですが、ごめんなさい、今はっきりとしたお答えが出来ないので、確認した上でご連絡させてください。それで、貼ってみて調子はいかがですか?」

相澤さん
「何だか、調子良いみたい。もう少し続けてみたいので、良い方法を教えて!」

ゆきさん「そうですか、調子が良くなったのは良かったです。継続してもらいたいので、すぐに調べてみます」と言って、相澤さんが帰られるのを見送ると、早速製薬メーカーの学術に確認しました。

※製薬メーカーの学術とは?
メーカーには医療機関、薬局からの質問に対応する部署があり、その対応の多くは学術が担っています

相澤さん、翌日に薬局に来られました。
「ゆき先生、何か良い方法ありましたか?」

ゆきさん
「ええ、色々わかりましたよ。まずね、貼ってはいけない所があります。乳房とか、胸の近くには貼らないでください」

相澤さん
「えー、何でですか?」

ゆきさん
「昨日お話したとおり、ホルモン剤の副作用に乳がんがあります。乳房に近いと、乳腺からの吸収で乳がんの可能性が上がるかも知れないんです。だから、胸には貼らないでください」

相澤さん
「それは、怖いわね。わかったわ」

ゆきさん
「それで汗対策なんですが、結果から言いますと、臀部に貼って様子を見てみるのが良いと思います。他社の類似薬でのデータで、臀部に貼って吸収が落ちたという報告もある様ですが、メノエイドコンビパッチの会社では、下腹部以外のデータは取っていないので、それ以上のお答えは出来ないそうです。でも、吸収が落ちたとしても、それほど激しく落ちるとも考えにくいし、貼らない、よりは貼った方が良いので臀部に貼るのがお勧めだと思います」

相澤さん「まあ、試してみるしかなさそうね。でも胸に貼ってはいけない事を教えてもらっただけでも助かるわ」と言って帰られました。


~1週間貼りっぱなしでも、調子が良いのだけど~

薬がなくなるであろう1ヵ月後に、相澤さんが来られました。
「ゆき先生の言われるとおり、臀部に貼ってみたけど、調子良いから大丈夫みたい。汗の量も減ってきた気がするわ」

ゆきさん、嬉しそうに答えました。
「それは良かったですね。薬剤師として、薬が効いて調子良くなったと言われるのは、一番うれしいことです」

相澤さん
「でもね、3、4日に1回の貼り替えだけど、7日間貼りっぱなしでも調子が良かったの。この薬、何日間効くのかしら?」

ゆきさん、すぐに調べてお知らせしました。
「メノエイドコンビパッチは、4日間はほぼ安定して血液中の医薬品の濃度を保ちますが、その後急激に血液中の医薬品濃度が下がる様です。つまり4日間しか、薬は有効で無いということになります。7日間貼りっぱなしで調子が良かった、効いていたということであれば、5日目から7日目は薬が無くても大丈夫だったということになります」

相澤さん
「やはり、4日間しか効かないということね」

ゆきさん
「そうですね。7日間貼っていたということであれば、3日間は薬を利用していなかったことになります」

相澤さん
「それなら、薬を止めてもよいかしら?」

ゆきさん
「自覚症状がなくなっているのであれば、止めても良いかもしれません」

相澤さん
「そもそも、この薬はいつまで続けるものなの?」

ゆきさん
「更年期障害によって起こるほてり、のぼせ、多汗などを改善する薬なので、自覚症状が治まれば止めているようです。しかも、お薬を開始するときにお話しした副作用のリスクがあるので、5年で中止するという先生が多い様です」

相澤さん
「ゆき先生、色々調べていただいてありがとうございます。本当に助かります」

「私の方こそ、色々と質問していただいたので、良い勉強になりました。ありがとうございます」とうれしそうに返事するゆきさんでした。

登場人物

★相澤 公子
相澤 公子(あいざわ きみこ) 47歳
最近更年期障害で困っている
仕事もしていて、さばさばとした性格

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~薬が足りなかったのですが?~

いつも元気に明るく入って来られる澤田さん、今日はうちでもらった薬を持ってきて、すまなそうに話し始めました。
「もらった薬なんだけど、どうもこの薬10日分足りないみたい」

半月前にもらった睡眠薬を薬袋から出して、30錠無ければいけないところを、20錠しかないと見せるのである。

話を受けたのは若い薬剤師スタッフの真優ちゃん。袋の中を確認しながら、ゆきさんにヘルプの視線を送ってきます。
ゆきさん、他の患者さんと応対していたために、「大丈夫、見ているよ」とのアイコンタクトを送るのが精一杯でした。

真優ちゃんは、「薬袋を開けずに、そのまま持ってきた」という話を信じて「すいません」と言って、不足分の10錠をお渡ししました。
ゆきさん薬局では、本来その場で回答せずに調べて折り返し連絡することにしていましたが、真優ちゃんは焦ってその場で対応してしまいました。

ゆきさんは真優ちゃんを気遣って、「澤田さんが嘘をつくとも思えないし、確かに20錠しかないから、難しい対応だったね。でも本当は、『申し訳ありません。確認してからご連絡します』と言った方が良かったよ」と話して、確認作業に入りました。

ゆきさん薬局では、最近防犯カメラを設置しました。もちろん防犯上の目的もあるのですが、最も大きな目的は認知症対策でした。
高齢化とともに、認知症患者さんが増えています。ゆきさん薬局でも例外ではありません。
そんな状況下で、認知症の患者さんから、正しく薬を渡していても、薬が足りないと言われることが増えるのは必至だと考えていたのです。

また、在庫管理システムも導入していて、患者さんに調剤した量と仕入れ量から、あるべき在庫量がわかるようになっています。
実際の在庫量を調べて、この理論在庫と合えば、正しく薬を渡していることを確認できます。

ゆきさん、早速その防犯カメラとパソコンで管理している在庫を確認しました。
ビデオで、正しく薬を薬袋に入れいていること、在庫管理で正しい錠数を用意していることがわかりました。

ゆきさん、早速澤田さんにビデオで正しい量を薬袋に入れていること、在庫管理でも正しい量になっていることを電話でお伝えしました。

澤田さん「もらったままいじってないから、困ったわね」という返事だったので、とりあえずもう一度落ちていないか確認してもらうようにお願いして、電話を切りました。


~お嫁さんがきついのよ!~

ゆきさん、電話をする前に次のようなエピソードを思い出していました。

澤田さんのお宅は2世帯住宅で、1階が澤田さん、2階に息子さん家族と一緒住んでいます。
半年ほど前から、ご主人は持病のCOPD(肺気腫)が悪化して、入院をしていました。
入院前は、ご主人の薬も澤田さんが取りに来られていたので、入院のことはわかっていました。

今回の問題が起きる2か月ほど前、澤田さんにお薬を渡すときに、ゆきさんは「ご主人、入院してしばらくたちますが、ご様子いかがですか?」と質問しました。

そうすると澤田さん、少し笑みを浮かべて「お陰様で、やっと退院できるようになりました」と話しました。

ゆきさんもうれしそうに「それは良かったですね」と答えると、澤田さんの顔が急に曇ってきて、今度は複雑な顔で話し始めました。
「でもね、新しくベッドや在宅酸素を用意したりしなければいけないので、大変なの」

ゆきさん
「まあ、それは大変だと思うけど、一緒に暮らせるのが一番ですよ。前向きな大変だと思って頑張ってよ」

澤田さん
「他人様にいうことじゃなんだけど、昨日息子夫婦と話し合ったのね。そうしたら嫁が『私、痰を取る吸引なんか絶対にやりませんから』って言うのよ。やりたくないのはわかるけど、嘘でも『手伝いますから』と言ってくれれば、かわいいものを、こちらが困っているのに、あの言い方はないわよね。あの嫁はきついのよ」と急に涙をぬぐいながら話し始めました。

ゆきさん
「そうですか、おつらいですね。でもご主人の顔を毎日見られるようになれば、『そんなこともあったわね』ときっと忘れてしまいますよ。今はご主人の受け入れ体制を整えることをがんばってください」と話して終わりました。


~自信をもって!~

ゆきさん、実は澤田さんに電話する間に色々と考えて悩んでいました。
というのも、認知症が始まっている患者さんに事実を伝えたところ、その患者さんがとても落ち込んでしまうという経験があったからです。
それ以来、常に正しいことを言うことが、患者さんにとって良いこととは限らないと思うようになりました。

今回は、澤田さんが家族にも打ち明けられないようなことを話してくれている澤田さんだからこそ、話すことにしたのです。
澤田さんには、いい加減な薬局では無く、今後も信頼される薬局でありたかったので、事実をお伝えしました。

澤田さんが、翌日に暗い顔で薬局を訪れました。
「ゆきさん、やっぱり薬は見つからなかったわ」と話し始めました。

ゆきさん
「そうですか。まあ仕方がないですね」

澤田さん
「違うのよ、ゆきさん。私ももう年で、どこに何を置いたかなんてすぐに忘れるし、『絶対、薬を開けて取ってない』なんて言えないのよ。でもビニール袋に入れたままだから、開けてないと思うんだけど、それも危うくて自信が無いのよ。もう年だから、ぼけてるでしょ。この間も、入れるはずもない引き出しに財布を入れているし。そちらはビデオも撮っているし、コンピュータで管理しているのだから、間違いないはずでしょ」

澤田さん、「財布だけではなく、鍵も、今取ってきた郵便物もどこに置いたかわからなくなる・・・」と話を続けました。

ゆきさん、いたたまれなくなって言葉を発しました「澤田さん、ごめんなさい。確かにビデオでも、パソコン管理でも合ってはいるんだけど、渡すときに薬袋から落ちたりとかもありえます。100%うちが正しいとも言えないから、そんなに自分を責めないで。ただね、澤田さんは僕のことを信頼してくれているから、いい加減な薬局ではないということだけ言いたかったんです。澤田さんが、ご自身のことを責められるのを見るのは僕もつらいです。今回のことは忘れてもらえますか」

澤田さん
「何だか悪いわね。それでもらった薬はどうすれば良いの?」

ゆきさん
「薬もないと困るでしょ。そのままで良いですよ。澤田さんも思っていることを話してくれたし、私もいい加減にやっていないことをお話しさせてもらいました。それだけ理解いただければ満足です。本当につまらない心配をさせてごめんなさい」

澤田さん
「迷惑かけて、ごめんなさい。忘れることにするから、これからもよろしくお願いします」と言って、ほっとした顔で帰られました。

ゆきさんの経験では、認知症の患者さんの多くは、被害妄想や、当たり所の無い怒りをぶつけるようになり、笑顔が減っていきます。

認知症を進行させないためにも、患者さんを笑顔で帰るようにしてあげたいと改めて思うゆきさんでした。

登場人物

★澤田 和子
澤田 和子(さわだ かずこ) 84歳
上品でとても謙虚な方
物忘れが激しくなり、自信を無くし始めている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~花粉症の初期療法をご存知ですか?~

いつも緑内障の目薬をもらいに来る山本さん、先日来たばかりなのにまた来局されました。

ゆきさん
「あれ、この間来たばかりなのに、今日はどうされたんですか?」

山本さん
「何だか鼻とのどがむずむずするので、耳鼻科に行ってきました。まだ花粉の季節には、早いはずなんだけど」と「ザイザル」と書かれた処方箋を手渡しました。

ゆきさん
「花粉症の経験のある方は、花粉に過敏になっていて、微量の花粉でも反応する人がいます。そのような人は、まだ花粉の本格飛散が始まっていなくても、微量の花粉でアレルギー症状を起こすんです」

山本さん
「風邪かと思っていたけど、先生も『アレルギーですね』と言っていたよ」

ゆきさん
「病院では鼻汁による検査で、アレルギーか風邪かはわかるんです。今回の山本さんは、薬から判断しても花粉症の様ですね」

山本さん
「そうなんだ。でもまだひどくないから、症状が出た時だけ飲めば良いのでしょ」

ゆきさん
「山本さん、初期療法てご存知ですか?」

山本さん
「いや、聞いたことがないなあ」

ゆきさん
「花粉の本格飛散前、初期症状が出る前、あるいは軽い症状が始まったと同時にアレルギー薬を飲み始めると、ピーク時の症状が楽になります。これを初期療法と言うんですよ」

山本さん
「じゃあ、今から飲んでおいた方が良いのですか?」

ゆきさん
「そういうことです。症状が出ていないときは忘れているけど、アレルギー症状が出てきたらつらいでしょ。だから今から飲んでおいた方が、絶対楽ですよ」

山本さん
「ゆきさんがそう言うなら、今から飲んでみます」

ゆきさん
「毎年花粉の飛散予測が出ていますが、花粉に敏感な人は、量に関係なく症状が出ます。山本さん、今から飲んでみて、去年と比べてみてください」


~花粉症。目の痒みにも予防を~

ゆきさん
「山本さんは、花粉症で目に症状は現れる方ですか?」

山本さん
「目も大変なんです。シーズン中は痒くて痒くて、目ん玉取り出したいくらいです」

ゆきさん
「気持ちわかるなあ。でも、目の痒みにも、予防法があるんですよ」

山本さん
「えー、そうなんですか?」

ゆきさん
「飲み薬は本格飛散前に飲んでおくことをお薦めしましたが、目の痒みも、痒くなる前に目薬をさすんです」

山本さん
「今から点眼するということですか?」

ゆきさん
「いや、今からではなくて、花粉シーズンになって、花粉が飛んでいるなと分ったら、外出する前に朝から予め点眼をするのです」

山本さん
「あ、なるほど。今からではなく、シーズンになってからね」

ゆきさん
「そうなんです。点眼で花粉を防御するイメージですね。とはいえ、今から話していたら、少し早すぎたかな」

山本さん
「目が痒くなり始めたら止まらないから聞いておいて良かったです。どこへ行っても、『マスクをすると良い』『メガネをすると楽だ』とか、『花粉を部屋に持ち込まないようにしましょう』『掃除をまめにしましょう』等当たり前のことばかり言われるから、今日の話は目からうろこだよ」


~保湿剤を上手に利用しよう!~

ゆきさん
「それじゃあ、最後にもう一つ、皆さんがあまり言われないこと、聞かないことをお話ししますね」

山本さん
「そういう話がうれしいんだよね。なになに?」

ゆきさん
「アレルギー症状で鼻水が出たり、涙が出たりして、皆さんそれをティッシュやハンカチで拭くでしょ。あれが、より症状をつらくしてるんです」

山本さん
「つらくすると言われても、出てくるものは拭くしか仕方がないじゃない」

ゆきさん
「もちろん拭かないといけないのだけど、拭くと皮膚の油分がとれて、肌が負けるわけです。だから拭くような状況になる前に、保湿剤で油分を補っておくんです」

山本さん
「なるほど、鼻水や涙が出る前に保湿剤を塗っておけば良いんだ」

ゆきさん
「その通り!外出する前、朝から保湿剤を塗っておくととても楽です」

山本さん
「なるほどね」

ゆきさん
「肌が負けるのを防ぐだけではありません。鼻水や涙をはじいてくれるから、拭くのも簡単になります。しかも、花粉まで取れやすくなります。外出して簡単に顔を洗えば、花粉も簡単に流せます」

山本さん
「それは、すごい。聞けば『そりゃそうだ』と思うけど、なかなか思いつかなかったなあ」

ゆきさん、自慢げに話を続けました。
「さっき、朝から目薬を差せておくと楽だと話したじゃないですか。それも保湿剤を塗ってから目薬を差すと、油分がとれなくて楽なんですよ」

山本さん
「うーん、そうか。朝、まず目に入らないように目の周りを含む顔全体に保湿剤を塗って、点眼をする。少し目の痒みを感じたら、パシャッと顔を洗って、保湿剤を塗り、また点眼をすれば良いのね」

ゆきさん
「それが、良いですよ」

山本さん
「本当に良い話を聞いたよ。今日の飲み会でみんなにも話してやろう。花粉症の友達が多いからね。」

ゆきさん
「飲み会に行くんですか。ビールは控えた方が良いですよ。体を冷やすとアレルギーが起きやすいですから」

山本さん
「じゃあ、何を飲むと良いの?」

ゆきさん
「体を温める熱燗、焼酎のお湯割りとかが良いですね」

山本さん
「本当かい!それも試してみるよ」と言いながら帰りかけました。

「山本さん、まだ薬をお渡していませんよ。準備するから少し待っててください。せっかちなんだから!」とうれしそうに声をかけるゆきさんでした。

登場人物

★山本 雄太
山本 雄太(やまもと ゆうた) 48歳
毎年スギ花粉で悩んでいる
「目薬の使い方を説明します」にも登場

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~初回質問票が何でカラーなんですか?~

今日は雨で患者さんが少なく、ゆきさん、真優ちゃんと雑談を始めました。
そんな中で、真優ちゃんがゆきさんに質問を始めました。
「先日、大学の同級生と食事をしていて話題になったのですが、うちの薬局のアンケートってカラーじゃないですか。何でなんですか?」

ゆきさん、質問に素直に答えることなく、逆質問を始めました。
「アンケートって、初回の患者さんに記入してもらう質問用紙のことだね。真優ちゃん、うちの質問用紙の表題を見たことはある?」

真優ちゃん、すぐにその用紙を見て、「あー初回質問票て書いてあります。アンケートじゃないんですね」

ゆきさん
「一般的なアンケートて、何のためにすると思う?」
真優ちゃん
「たとえば、会社が新商品を開発するためとか、お店でサービスが行き届いているかを確認するためとかに、お客様の意見を聞くことを目的として行っていると思います」

ゆきさん
「そうだよね。最終的にはお客様のためではあると思うけど、お客様にとっては、その会社のためと思えるよね」

真優ちゃん
「えー、確かにそうですね」

ゆきさん
「だからうちでは、アンケートとは言わずに初回質問票と言っているんだよ。患者さんに記入をお願いするときにも、『患者さんにお薬を安全に使っていただくために、記入をお願いしています』と、患者さん自身のためであることを言って、お願いしてもらっているでしょ」

真優ちゃん
「そうだったんですね。そこまでは理解していませんでした」

ゆきさん「あちゃー、部下が理解していないとは、それはダメな上司だね」と笑いながら話しを続けました。
「それで、その初回質問票なんだけど、患者さんのためと言っても、やはり面倒くさいから書きたくないという人が多いと思うんだよね」

真優ちゃん
「そうですね。非常にまれですけど、たまにアンケートを記入しなければいけないのなら、他の薬局に行くという患者さんもいますもんね」

ゆきさん
「そうなんだよ。自分でも、いつもと違う整体に行くと記入させられるので、面倒くさいなと思うからね」

真優ちゃん笑いながら「ゆき先生、整体に行くんですね」と答えました。

「あー行くよ。これでも苦労しているんだよ」とゆきさんも笑いながら答えました。
「そんなことより、何故カラーにしているかだったよね。カラーにしているのは、記入作業を少しでも負担を感じないようにしてもらうためなんだ」

真優ちゃん
「なるほど、そうなんですね。確かに白黒だと味気なくて書かされている感が強いですもんね」


~質問項目はどうやって決めたのですか?~

真優ちゃん、質問を続けました。
「初回質問票の質問は、どうやって決めたんですか?」

ゆきさん、またまた逆質問を始めました。ゆきさんはスタッフに常に考えて行動をしてもらいたいので、逆質問をよく行っています。
「将棋や囲碁の棋士たちは、常に何を考えているか聞いたことがあるかい?」

真優ちゃん
「どうやったら勝てるかじゃないんですか?」

ゆきさん
「それはそうなんだけど、彼らは、相手がどのような手を打つか50も100も先を予想して試合を進めているそうだよ」

真優ちゃん
「それと、初回質問票の質問項目とどう関係があるんですか?」

ゆきさん
「この質問項目も、患者さんがどんな答えをするかによって、どんなアドバイスができるかと考えてあるんだよ」

真優ちゃん
「薬剤服用歴管理指導加算の算定要件を満たすために、質問しているのではないのですか?」

※薬剤服用歴管理指導加算とは、お薬の服用歴や服用状況、体質・アレルギーなどを記録し、それに基づいて必要な指導を行うことによって算定できる点数のこと。

ゆきさん、少し怒った顔をして話し始めました。
「真優ちゃん、僕たちは患者さんのために薬剤師として仕事をしているので、別に厚生労働省を満足させるために仕事しているわけじゃないんだよ。厚生労働省が、薬剤師として必要であろうと思うことを求めているだけなんだからね。」

ゆきさん、感情的になってしまったなと反省しながら、話を続けました。
「当然のことだとは思うんだけど、薬局、薬剤師は患者さんのために動かなければだめだよね」

真優ちゃん
「そうですよね。つまらない事を言って、すいません」


~具体的な例を見てみよう!~

ゆきさん、来局した患者さんの質問票を見ながら、具体的に話し始めました。
「この方は、慢性的な肩こりで整形外科に来られている患者さんで『現在他にかかっている病気や、健康でお困りのことはありますか?』に『冷え性』と記入してあるでしょ。筋肉の緊張をやわらげる薬と湿布剤が処方されているけど、こんな時は、他に血行を良くする薬ビタミンEや葛根湯の提案をすると喜ばれます」

真優ちゃん
「確かに、肩こりに葛根湯を飲まれている患者さんは多いですね」

ゆきさん
「しかもこの患者さん、質問票には記入していなかったけど、手肌のあれ、ひどいときにはしもやけで苦しんでいると話していたから、もっと血行を良くする当帰四逆加呉茱萸生姜湯を医師に提案して処方してもらったんだ」

真優ちゃん
「それは患者さん、喜びますよね」

ゆきさん
「こちらの患者さんは『三食取っていない』にチェックしているでしょ。何に気を付けないといけないか、わかるかい?」

真優ちゃん
「規則正しい生活をする様に、指導するのではないんですか」

ゆきさん笑いながら「患者さんは、そんなことは言われなくてもわかってるよ」と答えました。
「食事をしないと薬は飲んではいけないと思って、1日2回しか食事をとらない人で1日3回毎食後の薬を2回しかとらない人がいるんだ。そんな人には、胃を悪くしないためや、飲み忘れ防止のために食後で処方されていることを説明し、食事をとらないときは、胃を悪くしないために多めの水で服用してもらう様に説明するんだよ」

真優ちゃん
「そうだったんですね」

ゆきさん
「当たり前の話をされても、患者さんはうれしくないから、気を付けた方が良いよ。他に緑内障、前立腺肥大患者さんへの注意はわかっていると思うけど、病名にチェックが入っていなくても、併用薬からも判断してあげることも多いんだよ」

真優ちゃん
「確かに、適当に記入している患者さんも多いですからね」

ゆきさん
「そうなんだよ。だから、患者さんが記入したくなる様に、また色んなアドバイスができるように網を張った質問票を作ってあるんだよ」

真優ちゃん
「うちの質問票には愛がつまっているんですね」

「良いこと言ってくれるねー」と嬉しそうにするゆきさんでした。

登場人物

★ 石原 真優 
石原 真優(いしはら まひろ) 25歳女性
ゆきさんにあこがれて、ゆきさん薬局で働く薬剤師
素直で明るく、真優ちゃんと呼ばれ、スタッフにかわいがられている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~じんましんの薬、効いていますか?~

いつも忙しそうにしている斉藤さんが、ゆきさん薬局に来店されました。
時間が無いのか、薬局はゆきさん薬局だけではなく、コンビニ感覚で時間の都合のつく薬局を利用しています。
今日もいつもと同じザイザルとトビエースが処方されていました。

※ ザイザル
一般的に、アレルギー性鼻炎や蕁麻疹等に利用される1日1回服用する薬
※ トビエース
一般的に、尿意切迫感や頻尿に利用される1日1回服用する薬

今日の斉藤さんは、ゆったりとした雰囲気だったので、状況をゆっくりと確認しました。

ゆきさん
「斉藤さんは、ザイザルをじんましんに利用していたのですよね。効き具合はいかがですか?」

斉藤さん
「忙しいから、薬だけお願いしたの。効果ねえ、飲んでいても痒いときは痒いわ」

ゆきさん
「それじゃあ、効いていないときもあるんですね」

斉藤さん
「そうね、でもそんなものでしょ。体調にもよるだろうし」

ゆきさん
「確かにそうですが、せっかく飲んでもらうのだから、最大限効果が見られる様に飲んでもらいたいなあ。それで、具体的にはどんな感じなんですか?」

斉藤さん
「飲み始めてから、痒みは随分と治まった気はするけど、完全ではないのよね」

ゆきさん
「つまり、すこし痒みがあるということですね」

斉藤さん
「はい」

ゆきさん
「眠気の副作用の方は、いかがですか?」

斉藤さん
「最初は眠くなったけど、今は慣れたから、さほどでもありません。そもそも眠くなるといけないから、寝る前に飲んでいましたから」

ゆきさん
「眠気の副作用が大丈夫なら、残りは効き目を確実にしたいですね」

斉藤さん
「そうよね」


~専門医の確認をします~

ゆきさん
「トビエースの方の効果は、いかがですか?」

斉藤さん
「これはとても調子が良いの。トイレの回数が減って、とても助かっています」

ゆきさん
「それは良かった!専門医が、きちんと患者さんにあう薬を処方してくれているのですね。調剤している薬が効いていると言われるのが、一番うれしいです。
ところで、あらい皮膚泌尿器科には二人の先生がいるのはご存知ですか? 」

斉藤さん
「えぇ知っています。湊先生は泌尿器科が専門で、週に一度しか来ていません。私はエコー検査とかあるから、湊先生に診てもらっているの。院長で女医さんの新井先生が、皮膚科が専門なんでしょ」

ゆきさん
「湊先生が泌尿器科、新井先生が皮膚科の専門医なのはご存じなのですね。じんましんのことを、新井先生にご相談されたことはあるのですか?」

斉藤さん
「最初に診察をしてもらったのは、新井先生でした。じんましんの相談をして、ザイザルを処方してもらいました。その後、頻尿の相談をしたら、湊先生を紹介されて、それからはずっと湊先生に診てもらっています」

ゆきさん
「湊先生とはじんましんについては、どんなご相談をされているのですか?」

斉藤さん
「『いつものザイザルも出しておきますね』だけです」

ゆきさん
「それでは、ザイザルを漫然と飲んでいることになりますね」


~困っていることを具体的に教えてください!~

ゆきさん、斉藤さんにじんましんの状態について詳細に聞き始めました。
「ザイザルで不満な部分は、どんなときに感じるのですか?」

斉藤さん
「お風呂から上がってきたときに、痒いのよね。体を温めると痒くなるのはわかるのだけど、寒いからお風呂にゆっくりつかって温まりたいのよ」

ゆきさん
「そうですね。お気持ちよくわかります。それでは、寝る前に薬を飲んで眠くなるどころか、痒くて眠れないくらいなのではないですか?」

斉藤さん
「痒くて眠れないは、言い過ぎかも...」と話しかけましたが、「そうねえ、そんなこともあるかもしれないわ」と言い換えました。

ゆきさん
「日中、じんましんは出ていませんか?」

斉藤さん
「日中の具合は、本当に体調によるわ。全然大丈夫なときもあれば、薬が切れるのか、昼食後過ぎから痒くなるときもあります」

ゆきさん
「斉藤さん、お風呂はいつもいつ頃はいられるんですか?」

斉藤さん
「夕食が終わって、夕方の片づけをしているときに夫と子供たちがお風呂に入るので、私がお風呂に入るのは寝る前です」

ゆきさん
「今までの話を勘案すると、夕食後にポララミン、朝食後にザイザルが良いと思いますよ。夕食後にポララミンを飲めば、お風呂上がりのかゆみ予防にもなるし、ザイザルよりも眠気の副作用が強い傾向があるので、よく眠れると思います。また、薬が切れて痒みが出ることもあるようなので、朝食後にザイザルを服用しておけば、昼過ぎのかゆみ予防になります」

斉藤さん
「それは良いわね。でも先生にはどう相談すればよいかしら?」

ゆきさん
「やはり、皮膚科が専門の新井先生にご相談するのが良いでしょう。新井先生なら私も面識があるので、お薬手帳に処方提案として記入しておきますね。このお薬手帳を先生にお渡しください。提案を見て、新井先生なりに考えて処方してくださると思います。」

斉藤さん
「それは助かるわ。お薬手帳ってそんな使い方もあるのね。どうもありがとう」

ゆきさん
「こちらこそ、斉藤さんとゆっくりお話ができて良かったです。そのお薬で安定したら、湊先生に今まで同様にお薬をお願いするので良いと思います。湊先生も、新井先生の処方を尊重すると思いますよ」

そう言われて嬉しそうに帰っていく斉藤さんを、いつも通り見送るゆきさんでした。

登場人物

★斉藤 ゆき
斉藤 ゆき(さいとう ゆき) 44歳
じんましん、頻尿
医師の言われたまま薬を利用していたが、実は納得していない

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~授乳中ではありませんか?~

激しい咳をしながら、ゆきさん薬局に田中さんが入ってこられました。

ゆさきん
「あらあら、大変。最近は風邪の患者さんが増えてきていますね」

田中さん
「咳が止まらなくて、あきらめて病院に行ってきました」

ゆきさん、処方箋を見ながら、「少しこじれているみたいで、抗生物質も出ています。確か他に飲んでいる薬は、無かったですよね」

田中さん
「えぇ、ありません」

ゆきさんは「今、用意しますから少しお待ちくださいね」と言って、早速準備に入りました。

準備が出来ると、田中さんをお呼びして席に着きました。
「田中さん、ご用意が出来ました」

ゆきさん、今度は薬歴の画面を確認しながら、話始めました。
「この間は、頭痛があるので、鎮痛剤を時々飲んでいるという話でしたが、今はどうされていますか?」

田中さん
「ゆき先生、そんなことも記録してあるのですね。時々飲んでいるけど、この間レボフロキサシンとの飲み合わせで手が震えたから、今回は飲みません」

ゆきさん
「そういえば、下のお子さんまだ小さかったですよね」

田中さん
「そうなんです。1歳で授乳していますが、今日のお薬は授乳中でも大丈夫ですか?」

ゆきさん
「授乳中に薬を飲む影響、注意ですが、いつも二つの事を気にしています。一つは、『母乳に移行、つまり母親が薬を飲むことによって母乳にその薬が入っていくことがあるか』、もう一つは、『そもそもその薬を、子供が飲んでも大丈夫なのか』です」

田中さん
「なるほど、それでこの薬はどうなんですか?」

ゆきさん
「レボフロキサシンは、母乳への移行が認められていて、服用中は授乳を避けるような薬です。また、レボフロキサシンはニューキノロン系の抗生物質で、出来ればお子様には控えたいお薬です」

田中さん
「子供が飲むとどうなるのですか?」

ゆきさん
「子供用のニューキノロン系抗生物質はあるのですが、まれに痙攣を起こすことがあります。他に吐き気、下痢などの副作用もありますが、服用をやめれば止まります。しかし、乳児にはつらいですよね。授乳を中止する事は、可能ですか?」

田中さん
「母乳を上げるのは寝る前の1日1回になっていて、普段はほとんどミルクを上げているので、やめる事は可能です」

ゆきさん
「それなら、お母様の治療を優先して、今回はこの薬を飲みましょう。どうしてもお子様が母乳をほしがるようでしたら、授乳直後に薬を飲むという方法もあります。1日1回の授乳だと、ちょうど薬が切れる頃なので可能だと思いますが、以前お母様もロキソプロフェンとの飲みあわせで手が震えた事があるので、今回はそれも避けた方が良いでしょう」

田中さん
「はい、わかりました」


~かぜの時、お風呂に入って暖まってはいけないの?~

ゆきさん
「そういえば、田中さん、お風呂はどうされていますか?」

田中さん
「子供を入れるので、一緒にゆっくりと浸かっています」

ゆきさん
「咳は、お布団に入っての寝入りばなとかにひどくなりませんか?」

田中さん
「確かに、咳は寝る前に一番出ます」

ゆきさん
「そうでしょう。激しい咳をする人は、暖まるとひどくなるんです。」

田中さん
「どうしてですか?」

ゆきさん
「激しい咳をする人は、気管支の炎症、つまり気管支炎になっています。お風呂に長く浸かると、この気管支炎を暖めることになります」

田中さん
「それが、悪いことなんですか?」

ゆきさん
「捻挫をしたときに、最初にした方が良い事は、アイシング、つまり冷やすことです。これは、炎症を抑えるために冷やすわけです。」

田中さん
「確かにそうですね」

ゆきさん
「気管支も同じで、炎症が起きているときに暖めると咳が悪化します。だから、布団に入って暖まってくると咳が出てくるんです」

田中さん
「母が、先日温泉に行って風邪をひどくして帰ってきたけど、それも同じことなのね」

ゆきさん
「そうなんです。風邪の症状にもよりますが、咳が激しかったり、喉が腫れていたりしたときに、温泉で暖まると炎症を悪化させて、よりこじらせてしまいます」


~温泉は、体に良くないの?~

田中さん
「なるほどね、じゃあ温泉は体に悪いんじゃないの?」

ゆきさん
「普段体を暖めることは、とても良いことですよ。体中の血行は良くなるし、熱は体の中の悪い細菌を殺してくれたりします。温熱療法でがん細胞を減らすという治療法もあります」

田中さん
「そうよね」

ゆきさん
「でも、先程話したように、炎症を暖めると悪化するので、その場合には注意が必要です。特に咳の場合には、蒸気が良いことは皆さん知っているので、温泉で暖まるのが良いと考える人が多い様です。確かに、蒸気はのどに潤いを与えるので良いことなのですが、実際には、気管支炎を暖めて悪化させている人が多いです」

田中さん
「それじゃ、しばらくは子供のお風呂は主人にお願いして、私はシャワー程度にするは」

ゆきさん
「その方が良いですね。しかし、気管支を暖めると悪化するとは言いましたが、冷やすのが良いということではないので、勘違いしないでくださいね。シャワー程度がベストだと思います」

話を聞いて、田中さん「どうもありがとうございました」と言って、立ち上がりました。

ゆきさんは最後に、「家族にうつさないためにも、マスクもしておいた方が良いですよ。のどに潤いも与えてくれます」と声をかけました。

田中さん「はーい」と元気な返事をしたものの、また咳をしています。
「お気をつけて」と言って、明るくお見送りをするゆきさんでした。

登場人物

★田中恵子
田中恵子(たなか けいこ) 45歳 女性
専業主婦
毎日子育てに追われている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~コレステロールの薬、ずっと飲み続けていて良いの?~

いつもコレステロールを抑える薬だけをもらいに来る兼城さんがゆきさん薬局に入ってこられました。
全て自分で解決したいようなタイプの方で、薬局でもあまり相談することは少ない方です。
たぶん込みいった相談もないだろうと思い、ゆきさんは後輩の真優ちゃんにお願いすることにしました。
「真優ちゃん、兼城さんのお薬、お渡ししてもらえるかな」

真優ちゃん快く「はーい」と返事をして、早速兼城さんをお呼びしました。
「兼城さん、お薬準備できましたよ」

兼城さん
「はい、ありがとう。おいくらかしら」

真優ちゃん
「いつもと同じ薬です。1480円です。もう、ずっと飲まれている薬なので問題ないですね」

兼城さん
「あら、ずっと飲んでいるのが問題なのよ。いつまで飲み続けるのかしら?」

真優ちゃん
「兼城さん、ご存知の通り、ピタバスタチンは高コレステロールのお薬です。高コレステロールは生活習慣病です。生活習慣が改善されてコレステロール値が安定すれば、先生と相談して止めることもできると思います。しかし、生活習慣も変わらず、薬で安定している患者さんの場合は、止めると元に戻ってしまうかもしれないので、止めるのは難しいと思います」

兼城さん、普段からあまり話す方ではないのですが、この日は近くにいる私を見ながら、話しかけ始めました。
「たまたま区の検診を岩谷先生で受診して、コレステロール値が少し異常範囲にあるということで、処方されるようになったの。だけど、いつも『異常ありませんね』と処方されるだけなのよ。まあ、これでコレステロール値が安定しているので良いのだけど、いつまで飲めばよいのかわからないのよね」

ゆきさん、兼城さんが私に相談したそうなのを感じて、真優ちゃんに「ごめんね、席代わってもらえるかな」と言ってイスに座り、兼城さんに話し始めました。
「うちのスタッフが話した通り、生活習慣病は、生活習慣を変えて初めて薬を止めることの検討を始められます」

兼城さん
「そうよね、簡単に薬をやめない方が良いのはわかったわ」


~別の病院でも同じ薬はもらえるの?~

兼城さん、相談を続けました。「こんなこと薬局で聞いてよいのかわからないけど、このコレステロールの薬なら、どこの病院でも処方してもらえるの?」

ゆきさん
「せっかく検診で岩谷先生に見つけてもらったのですから、そのまま診てもらうのが良いのではないですか」

兼城さん
「岩谷先生は良い先生で何も問題ないんだけど、ゆきさんで中山内科からの痔の薬ももらっているでしょ。何だか内科を2ヶ所行くのが面倒で、どうしたらよいか悩んでいるのよ」

ゆきさん
「そもそも中山内科には、何で行くようになったのですか?」

兼城さん
「検便で引っかかって。岩谷先生のところには大腸内視鏡がないので中山内科を紹介してもらって行くようになったの。今一番心配しているのは大腸で、今後も年に一度は診てもらうかなと思っているの」

ゆきさん
「便の色は黒くないんでしょ。黒い便だと内臓からの出血の可能性があるので、注意が必要です」

兼城さん
「それは大丈夫みたい。内視鏡でも問題なかったから」

ゆきさん
「それでも、一番気にされているのは大腸なんですね」

兼城さん
「そうなんです」

ゆきさん
「それなら、中山先生にコレステロールの薬ももらうようにしたらいかがですか。中山先生でも処方してもらえるはずですよ」

兼城さん
「でも、岩崎先生に悪くないかしら」

ゆきさん
「全然問題ないですよ。内科と言ってもそれぞれ専門があります。中山先生は消化器が、岩崎先生は呼吸器が専門です。遠慮せずに気になる病気の専門の先生に診てもらった方が良いですよ。先生の方がかえって気を遣って、他で診てもらった方が良いよと言えてないかもしれません」

兼城さん
「そうなの?」

ゆきさん
「そんなもんですよ。岩谷先生に行かなくなったとしても、道ですれ違ったときに、『いかがですか』とあっさり声をかけられるくらいなもんです。しかも病院選びは、専門性だけでなく、お付き合いとかで先生を変える場合もあることを、先生たちは心得ていますよ」

兼城さん
「そうよね、お友達も娘の同級生の親が開業したので、そこっで診てもらうようになったと言っていたわ」


~どの病院に行けば良いのか、わからない!~

兼城さん
「これも薬剤師さんに聞いてよいのかわからないけど、クリニックでいろんな診療科が書かれているでしょ。でも、きっと得意な診療科目や、本当は専門で無い科目が書いてある気がするのだけど、そんなことは無いの?」

ゆきさん
「先生は一人しかいないはずなのに、内科、小児科までは理解できるけど、皮膚科、整形外科なんてまで書いているところがありますよね」

兼城さん
「皮膚科なんて、大抵泌尿器科も書いてあるじゃない。」

ゆきさん
「本当ですよね。でも、どちらかが専門で、もう一つは専門外みたいですよ。標榜はしているので、勉強はされているとは思いますが、経験値が違うのは明らかだと思います」

兼城さん
「やはり、そうよね」

ゆきさん
「確かに標榜している科目を信じて良いのかは、一般の人はもちろん、私もわかりません。それで、製薬会社のMRさんに聞くようにしています。彼らの仕事では、人間関係がとても重要なので、前職はどこで勤務していて、何を専門としていたかを熟知しています。また、どの勉強会に積極的に出席しているかなどもよく知っています」

※製薬会社 のMRとは?
MRとは、医薬情報担当者とよばれ、製薬会社に所属し、自社のお薬の情報に詳しく、適切なお薬の情報を医師や薬剤師など医療関係者に提供する方。


兼城さん
「それじゃ、受診する前にここで相談すれば教えてもらえるわね」

ゆきさん
「そうして、いただいて構いませんよ。即答できなくても調べることはできると思います」

兼城さん
「今回はとても勉強になったわ。これからもよろしくお願いします」

ゆきさん
「何をおっしゃっているんですか。こちらこそよろしくお願いします」

兼城さんが変えられた後、ゆきさんが真優ちゃんに席を譲ってもらったお礼を言おうと思ったところ、逆に真優ちゃんから声をかけられました。
「ゆき先生、兼城さんの心のドアを開けることができるなんて、すごいですね」

「そうか」とうれしそうに照れ笑いするゆきさんでした。

登場人物

★兼城 美枝
兼城 美枝(かねしろ みえ) 56歳
高コレステロール薬を服用中
検便で血便が出たことがあり、それ以降大腸を気にしている

★石原 真優
石原 真優(いしはら まひろ) 25歳女性
ゆきさんにあこがれて、ゆきさん薬局で働く薬剤師
素直で明るく、真優ちゃんと呼ばれ、スタッフにかわいがられている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです

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