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ゆきさん薬局

みなさんは調剤薬局を、たんに「処方箋に書いている通りの薬をもらう場所」だと思っていませんか? 

『ゆきさん薬局』の薬剤師、ゆきさんのエピソードをもとに、薬を出す以上の、かかりつけ薬局の役割をご紹介します。

ゆきさんは、「薬で病気を治すだけでなく、患者さんを笑顔にして薬局を送り出すことが大事」をモットーに、処方箋通りに薬を調剤するだけではなく、飲み合わせや飲み方のアドバイスをしたり病院をおススメしたり…親身になった接客で地元に愛される薬局を運営しています。

かかりつけの薬局が無い方は、薬剤師ってこんなことまでアドバイスしてくれるんだ! と驚かれるかもしれません。薬局をもっと身近に感じていただけたり、薬剤師に気軽に相談できたりするきっかけを与えられるよう、ゆきさんの奮闘ぶりをお届けいたします。

 

~この湿布薬は使ったことがあるの?~

小太りで高脂血症の薬をもらいに来る佐藤さんが見えました。

ゆきさん、処方箋を見て、「あれ、今日は湿布薬が出ていますが、どうしたの?」と質問しました。

佐藤さん
「いつも市販薬を利用していたのだけど、処方箋で湿布ももらえると聞いてお願いしてみたんだ」

ゆきさん
「じゃー初めての利用って、ことで大丈夫ですか?」

佐藤さん
「はい。どうしてですか?」

ゆきさん
「佐藤さん、ジェネリックて、ご存知でしょう。佐藤さんは、ジェネリック希望と最初に伺っているので、そのままジェネリックに変更しようと思ったのですが、少し気になるところがあって質問しました」

佐藤さん
「何が気になったのですか?」

ゆきさん
「通常だと、ジェネリック希望と記入してある薬歴を見て、そのままジェネリックに変更してしまいます。ところが、貼り薬は使用感覚を直接感じるので、かぶれやすかったり、はがれやすかったり、においが気になったりとメーカーによってその違いを気にする方も多いんです。だから、いちいち使用経験をお伺いして、ご要望に沿ったものを選ぶようにしています」

佐藤さん
「僕は皮膚は強い方なので、問題ないと思います」

ゆきさん
「今回、佐藤さんは初めての利用なので、どこのメーカーが合うか試してみるしかありませんが、試したことがある貼り薬があって、それがご自身にあっているようなら、なるべく今までと同じ薬を使うことをお薦めしています。ちなみに市販薬は、何を使っていましたか?」

佐藤さん
「ドラッグストアーで、これが一番効くと勧められたボルタレンテープです」

ゆきさん
「それなら、同じものが医療用医薬品でありますよ。今回はケトプロフェンテープが処方されていますが、先生に相談して変えてもらいましょうよ」

佐藤さん
「そんなこと出来るんですか?」

ゆきさん
「もちろんです。使い慣れている方が良いじゃないですか。特にケトプロフェンテープは日光過敏症の副作用が多く報告されているので、他の湿布薬で効果があれば、変更せず今まで使っていたものを利用した方が良いと思います。いくら皮膚が強いと思っていても、日光過敏症になったら嫌でしょ!」

佐藤さん
「そうですね。是非お願いします。」


~患者さんに処方提案も行います~

ゆきさん
「ところで佐藤さん、シップはどこに利用しているんですか?」

佐藤さん
「肩こりです」

ゆきさん
「苦しむようになって、長いんですか?」

佐藤さん
「40代くらいからかな。それまではあまり感じなかったけど、中年になり運動不足もあって、肩こりが出てきた気がします」

ゆきさん
「そうなんですね。肩とか冷えませんか?」

佐藤さん
「そう、冷えるんです。お風呂から上がってすぐでも、首から肩にかけて冷えてくるんですよ」

ゆきさん
「佐藤さん、葛根湯という漢方薬聞いたことがありませんか?」

佐藤さん
「風邪の引き始めに利用する薬ですね。聞いた事ありますよ」

ゆきさん
「実は葛根湯を肩こりに使っている人も多いんですよ。市販薬でもありますが、医療用の方が濃度が濃いものもありますので、より効果を確認しやすいんです。医師に相談してみてください」

佐藤さん
「湿布を変えてもらうついでに、お願いしてもらえないかな」

ゆきさん
「先生によっては、薬剤師からの処方提案を受けない先生もいるから、佐藤さんから直接相談してもらえますか。私がせっかく良かれと思って処方提案しても、先生に提案の意図がうまく伝わらず、いこじになったら本末転倒でしょ。また、私が一方的に良いと思うから処方してくれと頼むよりは、先生と直接お話して、先生自身が納得して処方してもらった方が、私と先生の両方の意見を確認できます。だから今回は、医師に是非直接相談してみてください」

佐藤さん
「そうですね。ゆき先生のおっしゃる通りにしますよ」とうれしそうに返事をしました。


~温湿布と冷湿布の違いは?~

佐藤さん、めずらしく薬局が暇なのをみて、質問を始めました。
「ゆき先生、湿布を見ると温湿布と冷湿布があるじゃないですか。あれって、どう使い分ければよいんですか?」

ゆきさん
「自分の体に素直に、気持ち良い方を利用すれば良いんです。冷たいのを利用して気持ち良いときは冷湿布を、温めて気持ちが良い場合は温湿布を利用するので大丈夫です」

佐藤さん
「そうかあ。わかる気はするけど、でも説得力ないなあ」

ゆきさん
「温湿布も冷湿布も主成分は同じなので、効果は同じと言えます」

佐藤さん
「だったら温感、冷感なんて作る必要がないじゃない」

ゆきさん
「理屈でお話しすると、急性疾患、例えば打撲等は腫れているので、炎症を抑えるために冷やした方が、慢性疾患、つまりしつこい肩こり、腰痛等は血行が悪くなっているので、温めて血行を良くした方が良いんです。でも、自分の肩こりが、急性なのか慢性なのか判断に苦しみますよね。そんな時のために、気持ちの良い方を選ぶようにお勧めしています」

佐藤さん
「それじゃ、俺の使っているボルタレンテープはどっちなの?」

ゆきさん
「どちらでもありません。テープ剤は特に温湿布、冷湿布とうたっているものは少ないです。佐藤さんの場合は、慢性的な肩こりなので、温湿布が良いとは思いますが、パップ剤ははがれやすいので、はがれにくい今のテープ剤のボルタレンテープを利用するのが一番良いと思いますよ。でもテープ剤の中では、ボルタレンテープははがれやすい方だといわれていますが、今までこれで使い勝手良かったのでしょ」

佐藤さん
「そうですね」

ゆきさん「それじゃあ、先生にボルタレンテープにしてもらうように相談しますね」と言って、疑義照会の電話をかけに行きました。

「花田先生、いつもお世話になっております。佐藤啓介さんの処方箋でご相談させてください。ケトプロフェンテープが処方されているのですが、ご本人様が、いつもボルタレンテープを利用していて調子が良いようなので、そちらに変更したいのですが?」

花田先生
「あー、そうなんだ。テープ剤がほしいと言っていたから、一番ポピュラーなものを処方したのだけれど、本人が良いというものにしてあげてください」

佐藤さん、ゆきさんが目の前で問合せてをして、あっさり変更したので驚いていました。

「簡単に変更してもらえたでしょ!」と佐藤さんに話して、今日も良い仕事ができたと満足するゆきさんでした。

登場人物

★佐藤 啓介 
佐藤 啓介(さとう けいすけ) 63歳男性
少し太り気味で運動不足
高脂血症

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~週刊誌に書いてあるけど大丈夫?~

お母様の薬を良く取りに来られる田辺さん、今日は本人の高血圧の薬を取りに来られました。いつもと同じ薬なので、ゆきさんは手早く用意をして、田辺さんと早速話し始めました。

田辺さん
「ゆきさん、この間週刊誌に俺が飲んでいる薬も載ってたけど、大丈夫かい?」
田辺さんはARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)に分類されるブロプレスという薬を飲んでいました。

ゆきさん
「それで、週刊誌には何て書いてあったの?」
ゆきさんはこんな質問もあろうかと思って、既に週刊誌を買って読んでいましたが、患者さんが週刊誌を読んで、どのように理解しているのかを確認する為、わざとに内容を田辺さんに質問したのです。

田辺さん
「製薬会社が儲ける為に作った薬で、そんなに効果も無いとか書いてあったよ」

ゆきさんは、案の定、正しく理解されていないなと感じながら、続けて質問しました。
「それで、花田先生にも相談はされたのですか?」
花田先生は、ここら辺では有名な循環器科の先生で、花田先生がどのように答えるかも興味があったのです。

田辺さん笑いながら、「『三流雑誌の記事なんて、信じちゃダメだよ』と言ってた。でも、あんなに大々的に書かれていたら、気になるよなあ」と話しました。

ゆきさんも笑いながら、「三流雑誌とは随分ですね。まあ、間違ったことは書いていないと思うけど、誤解されやすい書き方でしたよね」

田辺さん
「じゃあ、やっぱり効かない薬を飲まされていることになるのかい?」

ゆきさん
「ARBは効かないのではなくて、効果が穏やかなんです。田辺さん、薬をお渡しする時に皆さんが気にすることは、何だと思います?」

田辺さん
「そりゃ、効果だろ!」

ゆきさん
「その通り。その次に気にするのは何だと思いますか?」

田辺さん
「副作用だよ」

ゆきさん
「そう、皆さん効果と副作用を気にするのです。『効かなければ、効く薬がほしい』、『効き過ぎれば、もっと穏やかな薬、安全な薬がほしい』となるわけです」

田辺さん「ふーん」とうなずきました。

ゆきさんは、説明を続けました。「つまり、ほどほどが良いんですよ。血圧だって、急に下げ過ぎれば体が悲鳴を上げるし、下がらなければ薬を飲んでいる意味が無くなります」

田辺さん
「じゃあ、今飲んでいる薬は、程よく効果のある薬ということ?」

ゆきさん
「そういうことです。効果にフォーカスすれば、副作用が心配だということになるし、副作用にフォーカスすれば、効かない薬ということになりがちです。私見ですけど、週刊誌だって売れないとダメじゃないですか。だから多くの人が利用している薬に対して、このような問題点を上げて、皆さんが注目するような記事を書くんだと思います。でも、この記事を読むことによって、薬を飲むことを止めて、病気を悪化させることがあったら、どうなるのかなと心配します。高血圧であれば、心筋梗塞、脳梗塞を起こすリスクを上げるわけです」

田辺さん
「意味がある薬を飲んでいるのがわかって、良かったよ」


~セカンドオピニオンや、薬剤師の意見を聞こう~

ゆきさん
「あの週刊誌は、薬の問題だけでは無く、もう一つ問題提起しているのですよ」

田辺さん
「え、そうなのかい」

ゆきさん
「『そもそも血圧が少し高いからといって、降圧剤を飲む必要はない』と書いてあるのです」

田辺さん
「それは、俺らに言われても困る話だよね」

ゆきさん
「そうですよね。『医師から薬を飲んだ方が良い』と言われれば、それを信じて良いのかわからないということになりますから」

田辺さん
「それじゃあ、誰を信じて良いかわからなくなるなあ」

ゆきさん
「かかりつけの医師以外、他の医師に意見を求めたくなりますよね。そういうことをセカンドオピニオンと言います」

田辺さん
「聞いた事はあるが、手術するような大事でもないのに、他の医師に確認しに行くのも大変だよ」

ゆきさん「そうですよね。そんな時は、僕を利用してくれれば良いんです」と自分の胸をたたきながら笑顔で答えました。

田辺さん
「なるほど、薬局で相談するのか。考えたこともなかったよ」

ゆきさん
「薬局なら、気軽に違うところに行って質問できるでしょ。気になることを質問して、親身に相談に乗ってくれる気に入った薬局が見つかれば、そこをかかりつけ薬局にすれば良いんです。まあ、田辺さんなら僕に聞いてくれるとは思いますけど」

田辺さん笑いながら「それで、俺がこの薬を飲むのは妥当かい?」と質問しました。


~判断材料を揃えてから質問しよう~

ゆきさん
「随分と安直に質問してくれますね!質問されても、判断材料が無いと答えられないですよ。前に渡した血圧手帳をつけていますか?」

田辺さん「あー、つけてるよ。丁度無くなるところだから、もらおうと思っていたんだ」と言いながら、血圧手帳を見せてくれました。

ゆきさん、上が120代、下が80代と安定している手帳のグラフを見ながら話しました。「田辺さん、低すぎるわけでもなく、血圧安定しているから良いんじゃない。花田先生にも毎回見せているんでしょ?」

田辺さん
「もちろん見せているよ。花田先生も安定しているから、『このまま薬を続けましょう』と言っていた」

ゆきさん
「ところで、食生活、運動とか気をつけていることはありますか?」

田辺さん
「特に、今までと変わらずだよ」

ゆきさん
「高血圧は生活習慣病の一つです。生活習慣を改善して、体重が減った等の変化があれば、薬を止めたり変更することも考えた方が良いかもしれませんが、今までの生活と変わらずで、薬も飲んで安定しているのであれば、そのまま継続して飲んだ方が良いと思います」

田辺さん
「では、このままで良いんだね」

ゆきさん
「良いと思いますよ。それに花田先生にもきちんと相談しているし、信頼関係もできているのだから、このまま花田先生にお願いして診てもらうのが良いですよ」

田辺さん
「そうか、ゆきさん安心したよ。どうもありがとう」

薬だけでなく、安心を売るのも薬剤師の仕事だと思うゆきさんでした。

登場人物

★田辺 哲夫 
田辺 哲夫(たなべ てつお) 58歳 男性
仕事は引退して、認知症の母親みちさんの面倒を見ている
高血圧、時々睡眠薬ももらっている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~併用薬の飲み合わせを確認します~

ゆずちゃんのお母さんが小児科の処方箋を持って、ゆきさん薬局を訪れました。
ゆきさん、咳止め、痰切りが処方されているのを確認して、後輩の真優ちゃんに任せることにしました。

「石原さん、この薬、出してもらえる」とゆきさんは真優ちゃんに指示しました。

「はーい」と明るく答えて、真優ちゃんがお薬の入ったトレーをもって、ゆずちゃんのお母さんを「田畑さん、お薬の用意が出来ました」とお呼びしました。

薬局では薬を出すことを「投薬」というのですが、ゆきさんはその言葉が好きではありません。
お薬を院内で出すのが主流であったころ、患者さんは薬を投薬口と書かれたところでお薬をもらっていたのですが、混雑している病院では、ほとんど説明がなされず、まさに字の通り、お薬を投げて渡すイメージがあったのです。
それで、ゆきさんは「投薬お願いします」という言葉に抵抗を感じるようになりました。

ゆきさん、真優ちゃんの服薬指導(患者さんとのコミュニケーション)が気になり、電子薬歴を開きました。ゆきさん薬局では、電子薬歴なのでパソコンの端末があれば同時に同じ患者さんの薬歴を見ることが出来ます。

石原さん、まずはお薬手帳で併用薬を確認しました。
「ゆずちゃんは、テグレトールを飲んでいるのですね」

田畑さん
「はい、てんかんではなく良性乳児痙攣と言われているのですが、『一応薬を飲んで起きましょう』と言われて、それからずっと飲んでいるんです」

石原さん
「それは心配ですね」
ゆきさん、真優ちゃんが患者さんの気持ちになって、相槌を打っているのを見て、うれしそうに見守りました。
「ところで、今日受診された主な症状はせきですね?」

田畑さん
「はい、咳をしてとまらないので診てもらいました」

石原さん
「今日は2種類の薬が出ています。1つはアスベリンという咳止めです。もう1つはカルボシステインという痰切りです。今日の薬はシロップで2つの薬を混ぜてあります。1日3回で利用ください」

田畑さん
「この薬は飲み切った方が良いですか?」

石原さん
「咳止めと痰切りは症状を抑える薬で、根本的な原因を治療する薬ではありません。従って、飲みきる必要は無く、必要に応じて利用するので構いません。ただし、2つの薬を混ぜて、しかも飲む量をあわせるために水も足しているので、長期保存出来ません。1週間以上経って、利用することは止めてください。アスベリンですが、懸濁しているのでその都度混ぜてほしいのですが、あまり強く振ると泡だってしまいます。優しく混ぜるようにして下さい」

田畑さん
「テグレトールとの飲み合せは大丈夫ですか?」

石原さん
「大丈夫ですよ。安心して利用ください」

ゆきさん、真優ちゃんの服薬指導を満足そうに見ていましたが、薬歴で田畑さんがうちに来ている頻度を見て、石原さんに「田畑さんのお薬手帳を見せてくれる」とお願いしました。ゆきさんは、田畑さんがテグレトール以外の薬で、他の薬局にも行っていると思ったのです。


~病気と薬の飲み合わせも確認します~

ゆきさん、おもむろにお薬手帳を確認しながら田畑さんに話しかけました。「テグレトールをもらっている先生に、何か注意することは聞いていますか?」

田畑さん
「いえ、特に言われていません。1年前に起こして乳児期の痙攣で、それ以降起きていないので、そろそろ薬も止められるかなと言われています」

ゆきさん
「それは、良かった。ずっと薬を飲み続けることになったら嫌ですもんね」

田畑さん
「そうなんです。ところで、何か気をつけることがあるんですか?」

ゆきさん
「実は薬によって、痙攣を起こす確立をあげる場合があるんです」

田畑さん
「えー、本当ですか」

ゆきさん
「子供の場合には、まずテオフィリンという喘息の薬を気にします。ゆずちゃんは、喘息も無い様なので、それは大丈夫ですが、風邪薬でも気にする薬があります。抗ヒスタミン薬と言って、鼻水に利用する薬です。抗ヒスタミン薬は、アトピーなどのアレルギーにも利用しますが、ゆずちゃんはアレルギーも無いので大丈夫でしょう。でも鼻かぜの時には、よく利用します」

ゆきさんは、お薬手帳をめくりながら、抗ヒスタミン薬を利用した事がないか探しました。

「お母さん、1ヶ月前に飲ませたポララミンというのが、抗ヒスタミン薬になります。熱性痙攣を起こしたことがあるお子さんには、飲まない様に注意する薬です。でもこの時、飲んで問題なかったのでしょ!」

田畑さん
「えー、何も問題ありませんでした」


~今後の対策も考えます~

ゆきさん、真優ちゃんに「ごめんね、席変わってもらえる」と言いながら、田端さんに話を続けました。
「田畑さん、乳児の痙攣で原因がわからないものもたくさんあります」

田畑さん
「先生も、そう言っていました」

ゆきさん
「一度痙攣を起こして、その後問題がなければ、良性の痙攣と判断し、2年間を目安にお薬を無くしていくことが多い様です。でも、その間に再発したら、また心配することになります。だったら痙攣を起こす確率はなるべく下げたいですよね」

田畑さん、子供に薬を何時まで続けるのだろうという心配から、感極まって「そうなんです」とつぶやきました。

ゆきさん
「痙攣を診てもらっている先生にも、『薬剤師に抗ヒスタミン薬に注意するように言われたけど』と話して確認してみてください」

田畑さんは、涙をこらえながら「はい」と答えていました。

ゆきさん
「病院を受診する時、薬局で薬をもらう時に、お薬手帳を見せるとともに、『良性痙攣の経験がありますが、大丈夫ですか』と確認するようにして下さい」

田畑さん、薬をもらって、何度もお辞儀をしながら薬局を後にしました。
ゆきさんは、石原さんに「真優ちゃんごめんね。途中から話に入って」と謝りながら、「薬剤師は薬だけ見るのではなく、患者さんを見なければいけないんだよ」と声をかけました。

石原さんも笑顔で「いえ、全然。とても勉強になりました」と答えてくれました。

数日後、田端さんがテグレトールの処方箋を持って来られました。

ゆきさんを見つけるなり、「良性痙攣でアドバイスを頂いたゆずの母です。先日は、ありがとうございました。先生と相談したのですが、ゆきさん先生の言う通りとおっしゃっていました。本当にありがとうございました」

ゆきさん
「そうですか。それは良かった。ところで田畑さん、うちにテグレトール細粒の在庫が無いので、すぐに用意できませんが、手持ちありますか?」

田畑さん
「3日分くらいは、手持ちがあるから大丈夫です。ご面倒でなければ今後も処方箋持ってきて良いですか?」

ゆきさん
「もちろんです。でも、うちであまり出ていない薬だから、いつも取り寄せになるかもしれませんが、それでも良いですか?」

田畑さん
「ここでもらいたいので、よろしくお願いします」

患者さんに気を使わせてしまうものの、これが本当のかかりつけ薬剤師の利用法なんだと、心の中で胸を張るゆきさんでした。

登場人物

★ 田畑 ゆず
田畑 ゆず(たばた ゆず) 2歳
良性乳児痙攣
かかりつけ薬局はなく、病院近くの様々な薬局で薬をもらっている

★石原 真優
石原 真優(いしはら まひろ) 25歳女性
ゆきさんにあこがれて、ゆきさん薬局で働く薬剤師
素直で明るく、真優ちゃんと呼ばれ、スタッフにかわいがられている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~目薬を冷蔵庫に保存しなくても良いの?~

見慣れない男性の患者さんが「処方箋お願いします」と言いながらゆきさん薬局に入ってこられました。
ゆきさんは処方箋を受け取り、確認しながら「山本さん、中井眼科の処方箋ですね。うちの薬局は初めてですか?」と話しかけました。
いつもは、パソコンの画面を見て初めての患者さんか確認するのですが、「ここでもお薬もらえるのかな」という雰囲気できょろきょろして入ってきたので、ゆきさんはその確認作業を省きました。

山本さん
「ええ、最近こちらに引っ越してきて、中井眼科で今までもらっていたお薬をお願いしました」
中井眼科の先生は、ゆきさん薬局にご自身の処方箋をお持ちになるので、時々お会いして話していました。中井先生は娘さんの洋服を共有して利用するほど、とても気の若い先生です。
ゆきさん
「そうですか。中井眼科の先生、とても若そうに見える女医さんだったでしょ!」

山本さん、「えー本当に、年齢不詳の先生でしたよ。しかもちゃきちゃきしていて、何とも言えない良い感じでしたよ」と笑いながら答えました。

中井眼科では、一般名処方で処方箋を記載しています。一般名処方とは成分名(一般名)を記載することです。患者さんの同意のもと、薬局でどの銘柄の医薬品でも出せるようになっています。

今までは処方箋には商品名が書かれることが多かったのですが、政府のジェネリック推進の一環として、一般名処方を医療機関に推奨しています。

ゆきさん、『【般】ラタノプロスト』と一般名処方で記載されいている処方箋を見て、山本さんに質問しました。「今までの目薬は、冷蔵庫に保存していましたか?」

ラタノプロストの先発品は「キサラタン」と言いますが、先発品をはじめ、いくつかのジェネリックは使用開始まで冷蔵庫保存する必要があります。一方ジェネリックメーカーによっては室温保存で構わないものがあります。

山本さん
「今まで使っていた目薬はキサラタンで、冷蔵庫に保存するように言われていました。今までと同じ目薬を処方してくれると聞いていたんだけど、何かあるのですか?」

ゆきさん
「今日の処方箋は、商品名では無く一般名処方になっています。山本さんがお薬手帳をお持ちになっていれば、どこのメーカーの薬を使っていたのかは、わかるのですが、それをお持ちになっていなかったから、質問しました」

山本さん
「そうか、いつも決まっている薬だから、お薬手帳は断っていたのですが、私たちが知らないところまで、薬剤師さんは気を配ってくれていたのですね」山本さんは感心したように言ったあと、
「ところで、冷蔵庫に保存する必要が無い目薬なんてあるんですか?」と興味深げに尋ねました。

ゆきさん
「そうなんです。メーカーによって、冷蔵庫に保存する必要が無いものもあるんですよ」

山本さん
「そうなんですか!それは助かる。今まで冷蔵庫に保存していると、家内の目にとまり、家内が目薬を見るたびに、『あなた身体に気をつけてよ』と言われるんです。何だか元気なつもりでも、病気になった気がしていて参っていたんですよ」

ゆきさん
「キサラタンは冷蔵庫保存ですが、ジェネリックでは冷蔵庫保存しなくて済むものもあるので、今日はそちらにしてみましょうか」

山本さん
「それは助かります」


~何でメーカーによって保存方法が違うの?~

山本さん
「ところで、何でメーカーによって保存方法が違うのですか?」

ゆきさん
「そう、不思議ですよね。私もメーカーに確認してみました。そうしたら理由は実に単純で、『室温における3年間の安定性試験で、基準に達しなかったから』だそうです」

山本さん
「へー、何でそんな事が起こるんですか?」

ゆきさん
「先ほど、一般名処方の話をしたでしょ。先発品もジェネリックも有効成分は全て同じものを使っているのですが、薬を完成するにあたっての添加物とか、目薬の場合だと容器なんかがメーカーによって違うんです」

山本さん
「なるほど、だから安定性が変わるのですね」

ゆきさん
「ええ、その通りです。でも、添加物が違うことによって、どちらが良いとかは言えません。添加物にアレルギー反応が出る人もいれば、薬を持って帰るのに時間がかかるので、冷蔵庫保存では困ると言う人もいます。個人によって、ニーズが違いますからね」

「この間は、このラタノプロストで『冷蔵庫保存する必要が無くなりました』と案内があった会社もありました。きっと添加物を変えたのでしょう」

山本さん
「なるほど、面白い話を教えていただきました」

ゆきさん
「それでは、お薬を準備するので少しお待ちくださいね。他にもヒアルロン酸点眼が出ていますが、ジェネリック希望はどうされますか?」

山本さん
「おまかせします」


~同時に点眼する時の方法と順番~

ゆきさんは、山本さんがキサラタンを利用していて何の問題も起こしていなかったので、ヒアルロン酸点眼も防腐剤の入っている点眼剤を選びました。防腐剤でアレルギーを起こす場合は、容器に特長のあるPF点眼を取り寄せることがあります。ゆきさんは大丈夫だと判断しました。

ゆきさんは「お薬の準備できましたよ。」と山本さんをお呼びしました。
「山本さん、目が乾燥するのですか?」

山本さん
「最近、パソコンを使うことが多くて、ドライアイになってきたみたいです」

ゆきさん
「今日出ているヒアルロン酸は、目に潤いを与える目薬です。1日5~6回利用ください」

山本さん
「まあ、まめに点眼するということですね」

ゆきさん
「はい、また同時に点眼するときは、5分はあけて下さい」

山本さん
「でも、何で5分間あけるのですか?」

ゆきさん
「同時に点眼すると前の目薬が、後の目薬で流されてしまって意味が無くなってしまいます。だから5分あけてほしいんです」

山本さん
「じゃあ、5分あければ、順番は気にしなくても大丈夫ですね」

ゆきさん
「そうは言われているんですが、せっかく点眼するので、一応順番のアドバイスもさせていただいています」

山本さん
「また、面白い話を聞かせてもらえるのですね」

ゆきさん、うれしそうに話し始めました。
「点眼をする順番で気にすることは、大きく3つです。1つ目、重要な目薬は
後に点眼する。これは、先にした目薬の方が流されやすいからです。2つ目は、
懸濁している目薬は後に点眼する。これも先にすると流されやすくなるからです。3つ目は、粘性のある目薬を後に点眼する。これは、先に点眼すると後の目薬が浸透しにくくなるからです」

※懸濁とは
液中に粒子が分散しており、濁っているようにみえます。
通常、お薬を渡された際に、よく振ってお使い下さいと指示がある目薬です。

山本さん
「じゃ、今回の場合は、どの順がよいのですか?」

ゆきさん
「ラタノプロストはご存知の通り、緑内障の目薬です。緑内障は失明に至る怖い病気です。だから、今回の場合はヒアルロン酸を利用して充分に時間をあけてから、ラタノプロストを利用するようにして下さい」

山本さん「ご親切に、説明ありがとうございました」と言って、うれしそうに帰っていきました。

ゆきさんも「楽しく聞いていただき、ありがとうございました」と言って、丁寧に挨拶をしてお見送りをしました。

登場人物

★山本 雄太
山本 雄太(やまもと ゆうた) 48歳
緑内障
最近、ゆきさん薬局の近所に引っ越してきた

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです。
~血圧は、なぜ下げなければいけないの?~

いつものように山田さんが、ニコニコしながら、薬局に入ってこられました。
山田さん、ゆきさんよりも年上ですが、きちんと薬を飲んでいないのでよくゆきさんに怒られます。
それで、入ってくるときは少しばつが悪そうに、照れくさそうに入ってくるのです。

ゆきさん受け取った処方箋を見ながら、話し始めました。「山田さん、薬増えちゃったじゃないですか」

山田さん
「いや、血圧が普通なら140ちょっとだったけど、今日は150まで上がっちゃって、薬が1種類増えてしまったよ」

ゆきさん、少し残念そうに話しました。
「ここのところ、心を入れ替えて割合ときちんと飲んでいたのにねえ」

山田さん、まじめな顔で、答えました。
「いや、そうなんだよ。ゆきさんに言われて、少しはきちんと飲んでいたんだけど、ここのところ忙しくて病院に行けなくて、2週間薬を飲まなかったら上がってしまって。まあ、飲んでいても140代で少し高めだったんだけどね」

ゆきさん、薬を利用する意義、意味をお話しすれば、今後もきちんと薬を飲んでもらえると考え、次のような質問をしました。
「そうですね、もともと少し高かったので、薬が増えるのは仕方ないところです。ところで山田さん、何で血圧が高いと良くないか知っていますか?」

山田さん
「いろんな病気になりやすくなるからでしょ」

ゆきさん
「結果的にそうなるんですが、血圧が上がることによって何が起きるか説明しますね。よく血管をゴムホースに例えてお話をするんですが、ゴムホースにいつもめいっぱいの圧力をかけて水を流していると、ゴムホースが耐え切れなくなって、破裂するようになるでしょ。血管も同様にいつも圧がかかった状態になると、血管が破裂して心筋梗塞や脳梗塞を起こす確率が上がるんです。」

山田さん
「そうは言っても、自覚症状が無いから、薬を飲む気にならないんだよね」

ゆきさん
「そう、自覚症状が無いから、高血圧のことをサイレントキラーと言うんです。でも放置していると怖いんですよ」

山田さん
「言い訳になるけど、仕事で忙しかったから、なかなか病院に行けなかったんだよね」

ゆきさん
「健康あっての仕事ですよ。私も忘れっぽいので他人のことは言える立場ではないけど、後悔している他人もたくさん見ているので、気をつけてくださいよ」

山田さん、「あー、はい」と答えて、受診出来なかった理由と対処法の相談を始めました。


~処方箋は何日分処方してもらえるの?~

山田さん
「いつも処方される日数は30日分だけど、本当は何日分処方してもらえるものなの?」

ゆきさん
「処方日数は薬によって違います。危険性の高い薬や新しい薬は14日や30日と決まっていますが、ほとんどの薬は日数制限は無いんです」

山田さん
「じゃー、半年とか1年分でも処方してもらえるの?」

ゆきさん
「理屈では可能です。でも、医師はやみくもに処方しているわけではありません。治療の経過や副作用が起きていないか等、確認しなければいけません。つまり医師が責任のもてる範囲で処方しているのです」

山田さん
「そりゃ、そうだね」

ゆきさん
「例えば、メンタルの薬をもらっている患者さんがいたのですが、その人はすぐに手持ちにある薬を全て飲んでしまうんです。不安だと感じると手元にある薬をどんどん飲むんですね。その方には1週間ずつ処方してもらっていました。自殺願望もあったので、参りましたよ」

山田さん
「それは、危険だね」

「結局、その患者さんは入院されました」と、ゆきさんが答えました。
「他にもこんな例があります。頻尿の薬が認知症の患者さんに処方されていたのですが、その患者さんは1か月分ずつ処方されているのに、2週間ごとに薬を取りに来るのですね。受診して処方してもらっていること、薬をもらっていることを忘れるし、薬も無くしてしまうのです。この方はご家族と来てもらうようにしてもらいました。病状が安定しているからと言って、1回に3か月分でも処方していたら、飲みすぎたりして大変なことになっていたでしょう」

山田さん
「僕のは、ずっと同じ血圧の薬だけから、そんなに問題が無いんじゃない?認知症も無いつもりだし」と笑いながら話しました。

ゆきさん
「残念ながら、そんな事は無いんですよ。同じ薬をずっと飲んでいても肝機能脳数値が悪くなることもあります。血液検査をしないとわからないことも多いのですが、顔色を見ているだけでもわかることは、結構多いんです。肝臓が悪くなると、顔の肌の色が変わったり、ごつごつしたりしてきますから。親しくしている医師と食事をしているとき、『最近の若い医師は検査結果に頼ることが多いが、ある程度顔色を診てわからないとだめだよ』と話していました。処方箋をもらうだけで検査をしていなくても、顔色を診て判断してくれる医師や薬剤師にめぐりあえるとよいですよ」

山田さん
「ふーん」

ゆきさん
「山田さんのかかりつけ医の花田先生は、高齢者や認知症の患者さんは2週間、中高年で病状が安定していて認知症で無い人には30日と決めているようです。まあ、私も医師だったらそれぐらいだろうなと思います」


~困ったら、気軽に相談してくれれば良かったのに!~

山田さん
「そうかあ、1か月分しかもらえないのは仕方が無いのか。いや今回の場合ね、薬をもらった後、薬が終わる頃での出張が入って、受診できなくなったんだよ。次の受診は、薬が終わる頃にしないといけないんでしょ?」

ゆきさん
「あら、山田さん以外とまじめなんだね!」と話しながら「そんなこと医師や私に素直に相談してくれれば良かったのに」と応えました。

山田さん
「えー、そうなの?」

ゆきさん
「そうですよ。今の世の中、みんな色んな都合があって忙しいのだから、全て予定通り動ける人なんていませんよ」

「そりゃ、そうだね」と山田さん照れくさそうに笑っていました。

ゆきさん
「医療費はご存知のように、自己負担と保険からの支払でまかなっています。はっきりはわかりませんが、保険者(社会保険や国民健康保険等支払う方)は大体3ヶ月から6ヶ月で適正に薬が処方されているか確認しているようです。3ヶ月の間に4か月分も出ていたら、おかしいなということになるんです。しかし、そのつじつまが合えば、正々堂々と薬をもらうことは出来ます。予め出張がわかっていれば、1ヶ月を超えて処方してもらうことも可能ですし、薬が無くなる頃でなくても、追加の処方箋をもらう事は可能です」

山田さん「そうかあ、薬を切らすことなくもらえたんだ。勝手に判断しちゃだめだね」

「せっかくここに良い薬剤がるんだから、自己判断せず、上手に利用してくれなきゃ!」と肩をすくめて応えるゆきさんでした。

登場人物

★山田 孝雄
山田 孝雄(やまだ たかお) 61歳
最近やっと薬をきちんと飲むようになった患者さん
高血圧症

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~ステロイド軟膏の塗り方を確認~

いつものように、「お薬、お願いします」とかわいい声で、田中さんの娘さんがお母さまと一緒に「ゆきさん薬局」に入ってきました。
先に待っていたおばあちゃんも「元気があっていいねえ」と、薬局内に響きわたる葵ちゃんの声で、とても和やかな雰囲気になります。
この元気な葵ちゃん、幼稚園生ですが、誕生後間もなくからアトピーで苦しんでいました。

田中さん
「ゆきさん、お蔭様で葵のアトピー、随分と治まってきました。良くなったり、悪くなったりの繰り返しは、あるんですけどね」

ゆきさん
「田中さん、まあそれでも良くなってきているのだったら、良かったじゃない!ずっと利用してもらってはいるけど、一応、塗り方の確認しますね。保湿剤とステロイドはどちらを先に塗っていますか?」

田中さん
「ステロイドを先に塗ると、保湿剤を塗るときに悪くない部分までステロイドを塗ってしまうことになるから、保湿剤が先で、悪いん部分だけにステロイドを塗るんでしょ」

ゆきさん
「はい、その通り。で、ステロイドの頻度は、どれくらいで利用されていますか?」

田中さん
「悪いときは治るまで、1日2回は塗って完治するまで毎日塗りました。良くなって先生から中止の指示が出たら、一度きっぱりと止めるんでしょ。いつまでもだらだら使うのが、いけなかったはずよね」

ゆきさん
「田中さん、よく頑張ったじゃない。ステロイドの使い方はパーフェクトですよ。それでも、良い状態と悪い状態の繰り返しなんですよね。私の長女のときも、ステロイドを塗ってきれいになってからが大変で、かゆがっている腕に保湿剤をまめに塗ってあげて、夜中にさすってあげたり、冷やしてみたりしたのを覚えています」

田中さん
「あら、ゆきさんの娘さんもアトピーだったんだ。今でも続いているの?」

ゆきさん
「今は、無いですよ。小学校2年くらいまでは、アトピーはあったけど、その後は落ち着きました。そのかわり、喘息が出て来る様になって、小学校5年生くらいまで続きました。今はアレルギー性鼻炎だけあって、ハウスダストなどがひどいときに鼻水を出しています。いわゆるアレルギーマーチで、症状が変わるけれど、結局はアレルギーが原因で起きる病気です。でも体力がついてくると落ち着いてくるので、心配せず、少し長い目で根気よく付き合ってあげてください」


~プロトピックの塗り方と注意点~

ゆきさん
「ところで、今日出ているプロトピックの使い方は先生から説明がありましたか?」

田中さん
「先生にゆきさんところで薬もらっていると話したら、じゃあ、そっちで説明受けてだって。ステロイドをずっと使っているより、こちらに変えた方が良いかもと言ってたわ」

ゆきさん
「プロトピックは、ステロイドの長期連用で起きる皮膚萎縮の副作用がないので、安全な薬です」

田中さん
「それは良い薬ね。ゆきさんが、言うなら安心して使うわ」

ゆきさん
「ただし、プロトピックは、塗ったところがかゆくなったり、ひりひりすることがあります。3日もたてば慣れるとは言われているのですが、炎症が激しいところに塗るとかなりひりひりする場合があります。
葵ちゃんは炎症がそれほどひどい状態ではないので、大丈夫だとは思いますが、どうしてもだめという人もいます。
それと塗る量が決まっています。葵ちゃんは3歳だから1回1ℊです。1日2回塗るのですが、12時間おきに塗ってほしいんです」

田中さん
「あら、色々と面倒なこともあるのね」

ゆきさん
「そもそもプロトピックは、免疫抑制剤を軟膏にしているので、注意することが多いのです。免疫抑制剤、つまり免疫力を低下させる薬なので、理屈としては発がん性を高めるということになります。色んなデータでは問題は発生していないようですが、理論上可能性があると考えられる場合は、万全を期して様々な制約があります」


~妊婦さんはNGの塗り薬?~

ゆきさん、説明をしながら、田中さんのお腹が大きいことに気が付きました。普段は間違えると大変失礼になるので質問はしないのですが、重要なことがあったので、意を決して質問をしました。「田中さん、おめでたですか?」

田中さん、うれしそうに「これで最後だと思うけど、子供ができたの」

ゆきさん
「それは、おめでとうございます。本当はこの質問、僕からはなかなかしないんですけどね」と笑いながら話しました。
「でも妊婦さんだって気が付いてよかった!このプロトピックは、先ほど言ったように発がん性の可能性があるので、妊婦さんは利用できないんです」

田中さん
「え、そうなんですか。塗り薬なのに妊婦はダメなの?」

ゆきさん
「はい、ダメなんです。小児用の軟膏だし、量も1gとかなり少ないので、葵ちゃんに塗ってあげるだけなら、まず問題はないと思いますが、ビックイベントが控えているので、発がん性の可能性のあるものをお母さんに使ってもらうわけにはいきません。まずはご主人に塗ってもらって、様子を見てはいかがですか」

田中さん
「そうね、お産もあるし、主人の協力はいずれにしても必要だから、そうするわ」

ゆきさん
「そうそう、お母さんが頑張る分、お父さんも頑張ってもらわないとね」

田中さん「ゆきさん、いつもありがとう」と言って、葵ちゃんは、ゆきさんと恒例のハイタッチをしてから、にこやかに帰って行きました。

登場人物

★田中恵子
田中恵子(たなか けいこ) 45歳 女性
頭痛もち
専業主婦。毎日子育てに追われている

★ 田中葵
田中恵子さんの長女 3歳 
アトピー体質

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~適正な量の薬をもらいましょう~

「先日は母がお世話になりました」と話しながら、中林さんのお嫁さんがゆきさん薬局に入って来られました。

はるかさんのお姑さんは、先日長い間ステロイドを漫然と飲んでいたのを、中止してもらうのに成功した患者さんでした。それを受けての「お世話になりました」だったのです。

余談ですが、ゆきさんは、「先日は、どうも」とか「お世話になりました」という言葉がとても苦手なんです。ゆきさんにとって、特別なことをしたという思いは無いからです。

ゆきさん
「いや、ステロイドを安易に飲んではいけないことを分かってもらえて良かったです。お母様、もう年だからなんて話していましたけど、68歳なんてまだまだ若いですよ」

中林さん
「そうよね。まあその分、私も大変なんだけど」と笑いながら話してくれた。

ゆきさん、薬をお渡しする用意をしながら話しかけました。
「はるかさんは、アレルギー性鼻炎でしたよね」

中林さん
「はい」

ゆきさん
「今日もいつものアレルギー薬ですが、月初に30日出ていて、月末の今日に60日分も出ていて、今月だけで90日分でていますよ。どうしたのですか?」

中林さん
「来月から保険が変わるので、新しい保険証が来るまで時間がかかるので、月末に60日分をお願いしたの」

ゆきさん
「そうなんですね。でも、先月、先々月の2か月でも少し多めの70日分出ていますよ」

中林さん
「実は主人も私の薬を飲んでいるの。主人が忙しくて、病院に行く時間が取れないというので、私の薬をあげているんです」

ゆきさん
「それはまずいなあ。お薬代は保険で支払われているから、薬を余計にお渡しすると、査定されて病院や薬局がお金をもらえなくなるんです。まあ、次回から新しい保険で処方してもらえれば、保険者から指摘される可能性は少ないとは思いますが、本当はダメですよ」

中林さん
「ごめんなさい」

ゆきさん
「そもそも、処方箋はその人の病気の治療のために、必要があって処方されるのであって、他の人に上げてはいけません。はるかさんは、アレルギー性鼻炎だけでそれほどひどい症状でなかったとしても、ご主人の場合は副鼻腔炎にもなっていて、アレルギー薬だけを飲んでいたら、逆に悪化するなんてこともありますよ」

中林さん
「えー、悪化することもあるの」

ゆきさん
「ありますよ。鼻水を止めれば、鼻の膿を増やすことになって、悪化することもあります」

中林さんは「わかったわ、ありがとう」と納得してくれました。
しかし、こういった説明は、患者さんのために良かれと思って話しても、うるさく思われて、次回から他の薬局に行ってしまう方ももいるので、ゆきさんにとってとても気を遣う場面です。


~お薬手帳て必要なの?~

中林さん
「ところで、最近お薬手帳のことを口うるさく言われるけど、そんなに重要なの?」

ゆきさん
「はるかさんのお薬はアレルギーの薬で、いつも同じだから必要ないと思うでしょ」

中林さん
「そうね」

ゆきさん
「でも今の薬に決めるまで、苦労していたのを覚えていますか。最初は1日1回の薬で効果が弱かったし、2回の薬にして眠気が激しく出て、いろいろ試してやっと1日1回で眠気も無く、程よい効果のこの薬に決めたんですよね」

中林さん
「そうだったわね」

ゆきさん
「お薬手帳にAは効果があったが眠くなった、Bはのどが渇いた、Cは1日2回なので朝は忙しくて飲み忘れる、Dは1日1回寝る前服用だが、夜は水分を取りたくないので水無しで飲めるが良い、とか書いてもらったじゃないですか」

中林さん
「結局、ゆきさんが全部確認してくれたから、関係なかったじゃない」

ゆきさん
「それは、はるかさんがうちにずっと来てくれていたから、手帳に書いてあった内容を薬局でも記録していたからです。仕事や時間の都合で同じ薬局でもらえなかった場合には、何を飲んでいて、効果や副作用はどうだったかわからなくなるでしょ。だから、お薬手帳は重要なんですよ」

中林さん
「とは言っても、薬を決めるのはお医者さんでしょ」

ゆきさん
「もちろん、薬を決めるのはお医者さんです。しかしながら、お薬手帳やうちでの薬歴(患者さんの情報を管理保存している薬局版カルテ)を基に、薬剤師が患者さんと相談しながら、適切な薬に変更してもらうことをお医者さんに提案する事は、十分可能なことなんですよ。別にアレルギーだけではなく、風邪薬や胃腸薬でも全て同じことが言えるんです」

中林さん
「ふーん、ゆきさんにしか来ていなかったから、お薬手帳でそんな使い方があるの知らなかったわ」


~お薬手帳の活用法は奥が深い~

ゆきさん
「はるかさん、そういえばお薬手帳を持ってくると安くなるのはご存知ですか?」

中林さん
「3割負担だと40円安くなるとか聞いたわ、でも何でなの?」

ゆきさん
「国の政策として、お薬手帳はみんなに持ってもらいたいんです。そのために手帳を持ってくると安くなるようになったんですよ」

中林さん
「費用もかかるはずなのに、何で安くまでして持ってもらおうとするの?」

ゆきさん
「国は医療費抑制策として、お薬手帳を持ってもらうことで次のようなことを期待しています。

・ 色んな病院でもらう薬の重複を避ける
・ 複数の病院にかかっていた場合に、処方された薬の飲み合わせによる副作用、病気の悪化を防ぐ
・ 残薬を確認して、タンスにしまったり、捨ててしまう薬が無いようにする

でも、国の政策だけの問題だけではなく、私たち薬剤師にとっても治療方針を考えるにあたって、次のようなことがわかるとても便利なツールなんですよ。

・ 他の薬局でもらっている薬を含む全ての薬が正しく利用できているか確認できる(説明は聞いていても、理解していないことって、結構多いんです)
・ 正しく薬を利用していることを確認した上で、現在の薬のより良い利用法を患者さんに提案できる(きちんと利用しないで、より強い薬が出ている場合もよく見受けます)
・ 医師の治療趣旨を理解せず、ドクターショッピングをしているのを見出すことができる(すぐに治らないと、医師の言うことを聞かず、次々と病院を変えてしまう患者さんがいます)

はるかさん、今日は難しい話になったけど、とにかくお薬手帳って計り知れないほど重要で便利なものなんです。そうそう、震災の時は病院での処方履歴がわからなくなっても、お薬手帳で処方してもらえたりするんですよ」

中林さん
「私たちの知らないところで、色んなことをしてもらっているのね。どうもありがとう」

「ありがとう」と言われて、当然のことをしたまで、とにっこり笑うゆきさんでした。

登場人物

★中林 はるか
中林 はるか(なかばやし はるか) 38歳
姑とともにゆきさん薬局にお世話になっている
アレルギー性鼻炎

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~本心が聞けるようになってから、質問します~

近くの薬局が閉店になり、うちを新しくかかりつけ薬局としてくれるようになった中林さんが来られました。

中林さん「ゆきさんは、自宅から近いので便利なのよ。病院と薬局は自宅の近くに限るわ」というのを口癖のように話しています。

中林さんが最初にゆきさん薬局に訪れたのは3ヶ月前です。
初回は、「今までずっと同じ薬をもらっているから、説明はなくても大丈夫よ」と話されていたので、併用薬を確認した上で、簡単な薬の説明をお話してお薬をお渡ししていました。

その後も、薬の説明よりも早くもらいたいという要望が強かったので、錠数を確認してお渡しすることに終始していました。ゆきさんも、患者さんが心を開いていない状態で質問しても、本当のことが聞けないと思い、あえて細かい質問はしていませんでした。そんなことが続いて中林さんが、ゆきさんで薬をもらうのは、今日が4回目になります

ゆきさんが「中林さん、お薬用意できましたよ」と呼びかけると、中林さんは「よっこらっしょ」と言って、ゆきさんの顔を見て安心したような笑顔で、腰かけました。

ゆきさん薬局のお薬お渡し口は、座ってお渡しするようになっています。ゆきさんが今まで勤めていた薬局では、立ってお渡しするところが多かったのですが、「患者さんにきちんと説明したい」との思いが強かったので、着席でお薬を渡すように作ったのです。

ゆきさん、中林さんとの距離も近づき、色々と話せてもらえる環境は出来てきたかなと思い、質問を始めました。
「中林さん、いつもと同じ薬です。ところで、プレドニンというステロイドが出ているのですが、何でこれを飲むようになったのですか?」


~ステロイドは良い薬、怖い薬?~

中林さん
「随分前に、喘息の発作をして、入院したことがあるの。その時にこれを飲んで助かったのよ」

ゆきさん
「あー喘息に使っているんですね。良い薬ですよね。これ飲めば一発で楽になる人、多いですよ」
今まで喘息の吸入は出ていなかったので、ゆきさんは中林さんが喘息だとはわからなかったのです。

中林さん
「そうなのよ。だから何かあったらすぐにこれを飲むの。これ飲めば呼吸が楽になるから」

ゆきさん
「いつから、飲まれているのですか?」

中林さん
「数年前に喘息で救急車に運ばれてからよ。その後、これは毎日飲み続けているの」

ゆきさん
「では病院を退院後、ずっと同じ薬をもらっているのですね」

中林さん
「そうよ。今行っているクリニックは、自宅の近くということで紹介してもらったの。先生も前の病院が処方していた通り薬を出してくれているわ。だから、何も聞かず処方箋だけ書いてくれるので、便利よ」

ゆきさん
「今出ている薬は、骨粗鬆症の飲み薬と、喘息のためのステロイドです。ステロイドはとても効果の高い便利な薬ですが、可能であれば飲み続けない方が良いのはご存知ですか?」

中林さん
「あら、そうなの。効いているからいいじゃない」

ゆきさん
「ステロイドは様々な病気に利用する、本当に効果の高い薬です。でもこのステロイドは、本来自分の体の中で作るホルモンなんです。それを外から取り入れてしまうと自分で作らなくなってしまうのです。まあ、体がさぼっちゃうんですよ」

中林さん「ふーん」と言いながら、「もうそんなに長生きしなくても良いから、関係ないわよ」と言って帰られました。


~専門医を紹介してもらおう~

1週間ほどして、中林さんが来局されました。

ゆきさん
「あれ、いつも1か月に1度なのに、今回は早いじゃない」

中林さん、鎮痛剤の処方箋を渡しながら、話し始めました。
「いやー、ゆきさん参ったよ。胸が痛いからレントゲン撮ってもらったら、肋骨の圧迫骨折だって。骨密度も低くて、骨粗鬆症と言われてしまったの。飲んでいる薬を先生に見せたら、ステロイドの飲みすぎじゃないと言われたわ」

ゆきさん
「ほら、言ったことじゃない。ステロイドを安易に飲み続けてはだめと言ったでしょ。そもそも、何で今の内科に行くことにしたの?」

中林さん
「病院では退院するときに、呼吸器の先生を紹介すると言っていたのだけど、自宅に近いから今の先生にしてもらったの」

ゆきさん
「中林さん、内科と一口に言っても消化器や呼吸器、循環器とそれぞれに専門があるんです。専門医に診てもらわないと、内科の先生が全てをわかるわけではないんです。内科同士でも、お互いに紹介しあっているくらいですから」

中林さん
「あら、そうなの」

ゆきさん
「今まで診てもらっていた先生は、循環器が専門で、呼吸器は弱かったかもしれません。先生も患者さんの希望で来られているので、断れなかったかもしれません」

中林さんがうなずいてるのを見て、さらに話を続けました。
「病気ごとに治療ガイドラインというのがあります。喘息の場合には、まずはステロイドの吸入で治療開始します。その後、それで効果が弱ければ、別の吸入や飲み薬を増やしていきます。いきなり、ステロイドの内服ということは、通常ありえません。しかし、おかしいと思っていても、紹介元の先生の顔をつぶしてはいけないという気持ちが起こることも考えられます」

ゆきさん、珍しくたたみかけるように話を続けました。「骨粗鬆症だって、きちんと骨密度を計って、薬がきちんと効いているか確認しながら飲まなければいけません」

中林さん
「まあ、難しいことはわからないけど、結局、私はどうすれば良いの?」

ゆきさん
「ここらへんで呼吸器科は、岩谷先生です。骨粗鬆症は、今行っている整形外科で相談すると良いです」

中林さん
「そうなのね。で、具体的にはどうすれば良いの?」

ゆきさん
「喘息の治療をしてもらうように薬局で言われたと、お薬手帳をお見せてください」と言いながら、ゆきさんは、「今まで喘息治療の目的でステロイドを長期服用し、骨粗鬆症を起こしています。まだ吸入は利用していません」とお薬手帳にメモ書きして渡しました。

中林さん「病院も薬局もどこでも良いというわけではないわね。どうもありがとう」と言って、お薬手帳を大事にしまいました。

「中林さん、うちの薬局を選んでくれてありがとう。適正な治療方法を確認するのも薬剤師の役割なんですよ」と心の中でつぶやくゆきさんでした。

登場人物

★中林 民子
中林 民子(なかばやし たみこ) 68歳女性
通っていた薬局が無くなり、かかりつけ薬局をゆきさんに変更
喘息、骨粗鬆症

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~ジェネリックは、先発品と同じ?~

ゆきさんが将来、あんな夫婦でありたいなとあこがれている、伊藤さんご夫婦が仲良く薬局に入ってこられました。

いつものように、にこやかに挨拶されながら入ってこられるので、薬局の雰囲気も自然と明るくなります。

ゆきさんが「はい、伊藤さん。いつもの高血圧とコレステロールを下げるお薬ね」と言ってお薬をお渡しするときに、高血圧薬に新しくジェネリックが出ていたのに気がつきました。

伊藤さんは、一番最初にお会いしたときには、「よくわからないから、ジェネリック希望ではない」と、初回質問票に記入していました。ゆきさん薬局では、もちろんその質問票の回答をもとに調剤しています。

しかし、患者さんとの距離が近くなっていくと、ジェネリック変更希望の回答は限りなく「薬局におまかせ」と変化していきます。伊藤さんともかなり仲良くなっているので、久しぶりにジェネリック変更希望の確認をしました。

ゆきさん
「伊藤さん、ジェネリック医薬品をご存知でしたよね」

伊藤さん
「えー知ってます。でも同じ薬なの?」

ゆきさん
「ジェネリックは、メーカー違いの安い薬のことなので、基本的に同じ薬です」

伊藤さん
「その安いというのが、心配なんだよね」

ゆきさん
「国が認めている薬なので、問題があったら大変ですよ」


~ゆきさんはジェネリックを利用するの?~

伊藤さん
「まあ、そりゃそうだと思うけど、何となく心配で。ところで、ゆきさんはジェネリックを利用するの?」

ゆきさん
「私は基本的にジェネリックを利用しますよ。ジェネリックは後出しじゃんけんをしていると思うんです。信頼性が低いように言う人もいますが、後から作られているので、味とか飲みやすさとか工夫されていると思います」

伊藤さん
「基本的にということは、利用しない事もあるの?」

ゆきさん
「母の薬なんかは、最初ジェネリックにしませんでした。母は神経質で、薬が変わると怖がって飲まなくなるんです。同じ薬だと言っても、ダメなんです。今は一包化にしているので、ジェネリックにして普通に飲んでいます」

伊藤さん
「なるほど」

ゆきさん
「保湿剤のヒルドイドローションの場合は、先発品とジェネリックで使い分けています。同じ薬なのに、先発品は乳液状で、ジェネリックは化粧水状なんです。だから夏場はジェネリック、冬場は先発品にしています。他に、子供には、先発品、ジェネリックにこだわらず、喜んで飲んでくれる方を選んでいました」

伊藤さん「いずれにしても、僕はゆきさんにまかせるよ」と話し、奥様も「私もよくわからないから、まかせるわ」と続きました。

ゆきさん
「伊藤さんのところは、仲が良いですね!別々の判断をする夫婦もおられるから」と笑顔で、正直な気持ちを口にしました。


~薬局でジェネリックが勧められるのはなぜ?~

しばらくして伊藤さん、思い出したようにジェネリックの話を再開しました。
「私はゆきさんにしか処方箋を持ってこないからわからないけど、知り合いは薬局でうるさくジェネリックを勧められると言っていたよ。何でなの?」

ゆきさん
「ジェネリックの方が安くなるので、患者さんに喜んでもらえると思って紹介しいるんじゃないですか」

伊藤さん
「本当?結構、強引にジェネリックに変更する薬局もあると聞いているけど、それだけの理由で、そんなことまでするの?」

ゆきさん「さすが伊藤さん、お見通しですね」と笑いながら話を続けました。
「伊藤さん、国がジェネリックを推進しているのはご存知ですか?」

伊藤さん
「医療費が膨れ上がっているから、ジェネリックを使うように政府が言っているのでしょ」

ゆきさん
「その通り。しかも、患者さんにアピールしているだけで無く、薬局にもプレッシャーをかけているんです」

伊藤さん
「へー、どんなプレッシャーをかけるの?」

ゆきさん
「薬の値段が安くなれば、薬局の売上も下がり儲からないように感じるでしょ。ところが薬局でジェネリックの利用率が低いとペナルティがあるんです。正確にはペナルティでは無く、ジェネリック利用率が高い薬局へのご褒美になっているのですが、医療費抑制で調剤報酬がずっと下がってきているので、そのご褒美をもらわないと今まで通りの報酬を得られないんです。だからペナルティと言っているのです」

伊藤さん
「そうか、だからそんなに積極的にジェネリック変更を勧める薬局があるんだ」

ゆきさん
「そうなんです。だから、やみくもにジェネリックを勧める薬局も出るんです」

伊藤さん
「ゆきさん、真摯に向き合ってジェネリック変更に取り組んでいるのだから、こんな話もきちんと患者さんに説明した方が良いよ」

ゆきさん
「伊藤さん、うれしいこと言ってくれますね。でもね、ジェネリックよりも大事な説明がたくさんあるから、そればかりに気を使っていられないんです」

伊藤さん
「そりゃ、そうだ」

ゆきさん
「患者さんとの信頼関係も出来て、ゆっくりと話せる時には説明するようにしているんですけどね」

伊藤さん
「うちの近くに、ゆきさん薬局があって良かったよ」

ゆきさん
「はい、今日の講義は終わり。じゃあ、今までの薬と同じですが、今日は新しくジェネリックにしておきました。きちんと飲んでくださいね」

ゆきさん、うれしそうに出て行かれる伊藤さん夫婦を見送ると、次の患者さんの準備にかかり始めました。

登場人物

★伊藤夫婦
伊藤 正(いとう ただし)77歳 男性
前立腺肥大、高血圧、高脂血症
冗談が好きで面倒見がいい

伊藤 みよ子(いとう みよこ)74歳 女性
胃腸薬、整腸剤を服用
特に体調に問題はなく、元気で明るい性格

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~ジェネリック医薬品をお勧めするとき~

今日は雨だし、暇にしていると見慣れぬ男性が入って来られました。
患者さんは誰もいないし、ゆっくり話せるからラッキーな人だなと思いながらゆきさんは処方箋を受け取りました。
処方箋を見て、「何だ風邪薬か、そんなに説明することもないかな」なんて思いながら準備を始めました。
レセコンで初めて来られる患者さんであることを確認して、声をかけました。
「松沢さん、こちらの薬局初めてですね」

松沢さんの「はい」という返事を受けて、続けました。
「ジェネリック医薬品て、ご存知ですか?」

松沢さん
「名前はよく聞くのですが、よくわかりません」

ゆきさん
「メーカー違いのお安くなる薬です。患者さんの希望で処方箋に書いてある薬から安い薬に変更できますよ」

松沢さん
「効果、副作用とかは変わらないんですか?」

ゆきさん
「主成分は変わらないので、基本的に変わりません。うちでジェネリック変更をお勧めしないのは、ずっと飲み続けている薬で患者さん自身での管理が難しくなるだろうなと思うとき、味や錠剤の大きさが変わるとき、貼心地、塗り心地が変わるとき等です」

松沢さん
「そうなんですね。お任せします」

ゆきさん薬局では患者さんが、「ジェネリック変更は、薬局にお任せします」と答える率が高いのです。
ゆきさんが誠心、誠意説明している姿が、患者さんに伝わっているようです。

ゆきさん
「お薬手帳はお持ちですか?」

松沢さん「ありますよ」と言ってかばんから出してくれました。

ゆきさん、お薬手帳を受け取り、内容を見て「ありがとうございます。特に飲み合わせのある薬に問題がある薬は無さそうですね。お薬の準備をしますから、こちらの質問票をお書きになって、お待ちください」と話しながら、質問票を手渡しました。


~気軽に質問の出来る環境を作ります~

ゆきさん
「松沢さん、お薬の準備ができました。今日はどうされましたか?」

松沢さん
「のどが痛くて受診しました」

ゆきさん
「結構腫れていると、先生に言われませんでしたか」

松沢さん
「はい」

ゆきさん
「そうでしょう。抗生物質、のどの炎症を抑える薬、鎮痛剤、ひどい炎症のときに利用するステロイドが出ています。ステロイドが出ているので、晴れが激しいのかなと思いました。1日1回と3回、1回1錠と2錠、それぞれ飲み方が違います。薬袋に書いてあるので確認して、間違えないようにお飲みください。抗生物質は、ぶり返さないためにも飲み切った方が良いですよ」

ゆきさん、子供や高齢者でない限り、薬情(説明書)や薬袋を見ればわかるような、わかりきった説明はなるべくしないようにしています。
自分が患者さんの立場だったら、くどく説明する人には質問をしたくないからです。

一方、他に困っていることがないか、顔色、行動、お薬手帳から確認をします。
お薬手帳を見ながら、話し始めました。
「メンタルの薬をしばらく飲まれているのですね。ずっと継続で飲まれているようですから、これで安定しているのでしょう。併用してかまいませんよ」

ゆきさん、松沢さんが口元を緩めホッとする顔を見て、少し間を取りました。


~他でもらった薬の相談にも乗っています~

松沢さん「つかぬ事を質問してよいですか?」と質問が始まりました。
「大学病院の精神神経科で適応障害の治療をしています。ソラナックスを2ヶ月かけて徐々に減らしてきて、先日やっと止められると思って止めた途端に、離脱症状が出てきたんです。みんな離脱症状は、出るものなんですか」

ゆきさん
「具体的にどんなことが起きたのですか?」

松沢さん
「頭痛、肩こり、ざわざわ感、顔のほてりです」

ゆきさん
「それは、おつらいですね」

松沢さん
「本当に錠剤カッターで切って、やすりで削るようなことまでして減らしてきたのに、完全に止めたら離脱症状が出てしまって、がっかりしているんです」

ゆきさん
「やすりで削れるまで減らせたんですよね。減らせて良かったじゃないですか。減らせなくて困っている人も、たくさんいるんですよ」

松沢さん「はあ」と言って、驚いたような、あっけにとられたような顔をしていました。でも、これだけは言わなければという感じで続けました。「やすりで削るまでしたのに、離脱症状は出るんですか?」

ゆきさん
「治り方とか、薬の量なんて、人それぞれですよ。他人は他人、自分は自分ですから。それよりも、出来なかった苦しみより、出来た喜びを感じなければだめですよ」

松沢さん、「人それぞれ、そうですよね」と自分に言い聞かせるように答えました。

ゆきさん
「そのうち、やすりで削っている大変さと、薬がないつらさの勝負になるんでしょう。そして、そんなときがあったなあとなるんですよ、きっと」

松沢さん、少し吹っ切れたような表情で「どうもありがとう」と言って帰られました。

その後松沢さん、大学病院の処方箋も持ってきてくれるようになりました。

薬剤師は薬を道具として利用していますが、心で治すものだなと実感するゆきさんでした

登場人物

★松沢 裕康
松沢 裕康(まつざわ ひろやす) 46歳男性
風邪薬の処方箋を持ってこられた初めての患者さん
精神神経科で治療中

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~骨粗鬆症のお薬の特殊な飲み方~

いつもお母様の認知症の薬を取りに来られる、田辺さんが来られました。

田辺さん
「いや、参った!お袋が転倒して、骨を折ってしまって。もう年齢だから、予想はしていたんだけど、やはり骨粗鬆症って言われちゃったよ」

ゆきさん
「そうですか。今日は骨粗鬆症治療薬のリセドロン17.5mgが出ています。週に一度利用するのですが、少し特殊な飲み方をする薬なので、気をつけて下さい」

田辺さん
「特殊な飲み方って、まさか逆さになって飲むわけじゃないだろ」

ゆきさん
「田辺さん、何つまらないこと言ってるんですか」と言いながら、介護疲れも無く無事に過ごしているのだなと安心しながら話を続けました。
「起床時に一杯の水で飲んでもらい、その後30分は食事を摂らないでほしいのです。また横にもならないで下さい」

田辺さん
「逆さになって飲むのも、まんざら遠い冗談でもなかったじゃない」

ゆきさん、「まあ、まあ」と苦笑いしながら、話を続けました。「少し面倒な飲み方の薬だけど、お母様に飲ませてみてください。今回は腕だったから良かったけど、大腿骨骨折とかだったら大変ですよ。骨折は寝たきりになる一番の原因ですから、忘れないように飲んで下さい。今日は、4週間分出ています」

田辺さん、「了解でーす」と言って薬局を後にしました。


~特殊な飲み方には理由があります~

田辺さんが2週間ほど経って、疲れた顔をして、薬局を訪れてきました。
「ゆきさん、この薬の飲み方どうにかならないかなあ?」

ゆきさん
「田辺さん、どうしたの?いつもの元気がないじゃない」

田辺さん
「いや、お袋が起きるのは4時半と早いんですよ。そうするとその時間に起きてこの薬を飲ませないといけないでしょ。リカルボンは起床時飲ませることになっているので、起きるのがつらいんですよ」

ゆきさん
「それは、大変ですね」

田辺さん
「そうでしょ!他に飲む方法無いかなあ?」

ゆきさん
「薬の飲み方の決め方は、薬の効果を確認するときの実験方法、つまり臨床試験と同じ飲み方になります。そうでなければ、薬の効果が変わるかもしれないから当然ですよね」

田辺さん
「そりゃ、そうだ。じゃあ、飲み方は変えちゃダメって事?」

ゆきさん
「でもね、メーカーはその臨床試験を行う時に、最大限の効果と最小限の副作用を想定して飲み方を決めています。だから、その飲み方を決めた理由をメーカーに聞いて、田辺さんにどうするのが良いか連絡しますよ」

田辺さん
「それは助かる!よろしくお願いします」


~わからない事は、メーカーに調べて電話します~

ゆきさん、早速メーカーに電話して、なぜ起床時に服用して、30分間は食事も摂らず、横になってはいけないのか確認し、以下の説明を受けました。

・起床してすぐに飲むのは、食後に服用すると薬の吸収が大きく低下し、治療効果に影響するから
・1杯の水で服用するのは、喉や食道に薬がひっかかると、その場所で炎症や潰瘍を起こす恐れがあるから
・服用後30分は水以外の飲食を控えるのは、薬を服用して30分以内に飲食すると、薬の吸収が大きく低下し、治療効果に影響するから
・服用してすぐに横になってはいけないのは、薬の成分が逆流し、食道が薬に曝されることで炎症や潰瘍を起こす恐れがあるから

メーカーの学術さんは、とても親切で様々な質問に答えてくれます。
※製薬メーカーの学術とは:メーカーには医療機関、薬局からの質問に対応する部署があり、その対応の多くは学術が担っています

そこでゆきさん、率直に質問をしました。
「患者さんの起きるのが早朝で、介護の方が飲ませられないでお困りですが、対処法はありますか?」

メーカーの学術さん
「先ほど申し上げた理由で、飲み方が決まっています。今回のケースの場合には、起床時で無く、朝食前30分以上前とされてはいかがですか。特に早朝に起きる方は2度寝をしてしまう方もおられる様なので、食事30分前をお薦めしています」


~薬局は劇場、薬剤師はエンターテイナー、患者さんは観客~

ゆきさんは電話を切ると、さっそく田辺さんに連絡しました。

ゆきさん
「朝食30分前の服用が、一番良いと思います」とお伝えしました

田辺さん
「それは、助かった。わざわざ電話してもらってありがとう」

実はゆきさん、メーカーの学術に聞かなくても、リセドロンの特殊な飲みかたの理由は知っていました。
間違ってお知らせしたくないので確認をしたいという気持ちはあったのですが、それ以上に接客のテクニックを駆使したかったのです。
最後に田辺さんに、「わざわざ、ありがとう」と言ってもらえた時に、とても嬉しく思いました。

ゆきさんは「薬局は劇場、薬剤師はエンターテイナー、患者さんは観客」と考えています。
相談を受けたその場で直接答えるのではなく、時間を置いて電話することで、患者さんの信頼性や、ありがたみが増すと予想したのです。

患者さんに感動を与え、感謝されることを目指しているゆきさん。
患者さんの笑顔を見て、またまた心の中でガッツポーズするのでした。

登場人物

★田辺 哲夫
田辺 哲夫(たなべ てつお) 58歳 男性
田辺みちさんの長男
仕事は引退して、母親みちさんの面倒を見ている

★田辺 みち
田辺みち(たなべ みち) 80歳 女性
認知症で息子さんが面倒を見ている
圧迫骨折をして骨粗鬆症のお薬を服用することになった

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~飲み方を間違えてしまったら~

よくかぜ薬をもらいに来られる、モデルのようにやせた高橋さんが、ゆきさん薬局に入って来られました。
化粧をしているので分かりづらかったのですが、「顔色が悪いかな」とゆきさん気になってはいました。しかし、来られるのは風邪の時だけなので、一時的なものだろうとも思っていました。

ゆきさん、処方箋を見ながら話し始めました
「高橋さん、貧血気味でしたか?今日は、鉄剤が処方されていますよ」
やはり貧血傾向があったんだ。気になっていたなら早く声をかけてあげれば良かった、とゆきさんはひそかに後悔しました。

高橋さん
「前から健診で貧血気味とは言われてはいたのだけど、ここのところひどいので婦人科で相談したら、これが処方されたの」

ゆきさん
「え、じゃあ前から貧血傾向はあったのですね。いつも顔色が少し悪いかなと感じていたのですが、風邪のせいかなと思っていました。とりあえず、1回1錠、1日2回服用の鉄剤が出ています。飲んで様子を見てください。胃は丈夫でしたっけ?」

高橋さんは笑いながら答えてくれました。
「胃は丈夫だから、食べ過ぎて困るくらい」

ゆきさん
「高橋さん食べ過ぎなのにそんなに痩せているんですね。うらやましい。まあそれなら大丈夫だと思いますが、鉄剤でたまに胃の調子を悪くする人がいますから、気をつけてくださいね。それと、便が黒くなるかもしれませんが、気にしなくて大丈夫です」

高橋さん
「どうもありがとう。どれくらい飲めばよいのかしら?」

ゆきさん
「今回は2週間分出ています。まずは飲み続けられるのか試してみてください。その後しばらくは、飲み続けた方が良いと思います。鉄は肝臓や秘蔵、骨髄などに貯蔵鉄として蓄えられています。体内で鉄が不足した時は、貯蔵鉄を使いきって貧血になります。この貯蔵する時間を考えれば、症状改善しても2ヶ月は飲んだ方が良いと思います」

2週間も経たず、5日後に高橋さんが来局しました

ゆきさん
「あれ、随分と早くいらしましたね。今回は30日分出ています」

高橋さん
「実は間違えて、2錠ずつ飲んでしまったの。先生に言えなくて、無くしたと言って処方してもらったのだけれど、実際に利用する日数より多く出すのは出来ないから、気をつけてくださいと、ものすごく叱られちゃった」

ゆきさん
「それは、当然ですよ。健康保険がお薬代を支払ってくれています。現状でも赤字と言われているのに、必要以上に薬を出してしまったら、医療費の制度が破たんしかねませんからね」


~まずは、安全を確認しよう~

高橋さん
「でもゆきさん先生、鉄剤を2錠ずつ飲んでいたら調子が良い気がしたの。2錠ずつ飲んだら、ダメかしら?」

ゆきさん
「私たち薬剤師は、添付文書という薬の利用説明書を確認して仕事をしています。添付文書では、この鉄剤は通常の成人で1日2錠から4錠の利用となっています。つまり1回2錠ずつ飲むという方法はあるので、問題ありません」

高橋さん
「それは、良かった。では飲み過ぎで問題あることは無いですね」

ゆきさん
「胃がむかつくとか、もたれるとかは無かったんでしょ?」

高橋さん
「前にも話したように、胃には自信があるから大丈夫」

ゆきさん
「多く飲めば、効果も副作用の可能性も上がります。副作用が無くて調子が良ければ、1回2錠で飲んだ方が良いかもしれません」

高橋さん
「そうよね。でも先生に無くしたと嘘ついちゃったけど、どうしよう?」


~医師には本当のことを話しましょう~

ゆきさん
「先生には正直に、間違って1回2錠で飲んでしまったけど、調子が良かったので、そのように飲みたいことをお話ください」

高橋さん
「えー、でも怒らない?」

ゆきさん
「先生は2つのことを気にされるはずです。」

高橋さん
「先程、ゆきさんが気にしてくれた安全面ね」

ゆきさん
「その通りです。そして、もう一つは保険請求で問題無いかということです」

高橋さん
「私14日分と30日分で続けてもらっているから、ダメですね」

ゆきさん
「確かに5日間で44日分もらっているので、普通なら次回は39日後でないともらえないはずですよね。でも、効果が無いから途中で薬の量を増やすという事は良くあることです。処方箋では1回1錠と書かれていても、2錠ずつ飲んでほしいから、追加で1回1錠を次回受診日まで処方することがあるんです」

高橋さん
「それじゃあ、きちんと話した方が良いのね」

ゆきさん
「もちろんです。私から電話で先生にお話ししても良いのですが、高橋さんと先生との信頼関係を崩さないためにも、今回は高橋さんが直接、先生にお話された方が良いと思いますよ。処方日数だけを考えて、先生は注意したかもしれませんが、倍で飲んでいるとわかれば、良い様に考えてくれますよ」

高橋さん、「ありがとう」と言って、うれしそうに帰っていきました。

ゆきさんは自分の中で、患者さんを喜ばせてあげられているかいつも勝負しています。今回も勝ったと心の中でガッツポーズをしていました。

登場人物

★高橋恵子
高橋恵子(たかはし けいこ) 43歳 女性
貧血傾向

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~かかりつけ薬剤師は、きちんと医師と相談します~

高校生の時にてんかんの発作を起こし、それ以来てんかんの予防薬としてテグレトールをずっと飲んでいる竹田さんが来られました。

ゆきさん
「竹田さん、今日は婦人科の処方箋だけど、どうされました?」

竹田さん
「生理不順で悩んでいるし、生理が来ても重くて辛いんです。また避妊も出来ればと思って、婦人科に行ってみたの」

ゆきさん
「そうなんですね。生理のつらさは男にはわからないけど、お辛いでしょうね」昔から来てくれている竹田さんの事なので、薬歴も見ずに話を続けました。
「ところで、テグレトールを飲んでいることは、先生にお話しされましたか?」

竹田さん
「てんかんの治療をしていることは話したけど、具体的な薬のことは話してないわ」

ゆきさん
「今日処方されているピルのルナベルですが、テグレトールと一緒に飲むことで効果が弱くなる可能性があります。先生と相談したいので少しお時間いただけますか」

竹田さん
「それならスーパーで買い物をして、帰りにまた寄りますね」

竹田さんが薬局を去るとすぐにゆきさんは、本多レディースクリニックの本多先生に電話をしました。
「先生のところで受診されている竹田さんの件でご相談があるのですが、よろしいですか?」

本多レディースの医療事務
「どういった件ですか?」

病院によっては、事務の方で相談事項を済まされそうになることがありますが、ここはどうかな?と思いながら、電話を続けました。

ゆきさん
「竹田さん、テグレトールを服用しているのですが、ルナベルの効果を減弱させることがあるんですね。このままお出ししてよろしいですか?」

本多レディースの医療事務
「そういうことであれば、先生にお代わりしますね。少々お待ちください」

ゆきさんは、きちんとした対応を取ってくれる病院で良かったと安心しながら、先生が電話に出てくれるのを待ちました。診察で忙しいのはわかっているので、本当は診察が終わり次第連絡してくれると言ってくれるのがベストなんですが、先生に変わろうとしてくれるだけ良しとするか、とゆきさんは思っていました。

しばらくすると、先生が直接電話に出てきて「あー竹田さんの件ですね。てんかんの治療をしていることは聞いています。てんかんの患者さんがピルを飲んでも問題ないですよね?」


~禁忌疾患と併用禁忌~

ゆきさん
「先生のお話されている通り、てんかんはピルに対しての禁忌疾患でもありませんし、テグレトールとルナベルは併用禁忌でもありません」

薬剤師が薬をお渡しする際、注意する点の一つに、禁忌疾患(病気に対して悪影響を及ぼすので、飲んではいけない薬)と併用禁忌(薬の作用を増大もしくは減少させるので、併用してはいけない薬の組合せ)があります。
本多先生は、禁忌でもないのにゆきさんが何を心配して電話してきたのか分からなかったのです。

本多先生
「では、何を心配されているのですか?」

ゆきさん
「先生、竹田さんはテグレトールを飲まれているのですが、それがピルの作用を減弱させる可能性があります。今回はルナベルULDが処方されているのですが、LDの方がより効果を期待できると思ってご相談しました」
LDは低用量ピルで、ULDは血栓症の副作用の発生をより抑える等の安全性を考えて新しく出来た、それよりも用量の少ないピルです。

本多先生
「副作用の事を考えて、ULDから始めることにしているのだけど、ULDが開発される前はLDを処方して、それほど大きな問題は起きていなかったので、ULDにこだわっているわけでもありません」

ゆきさん
「それなら、せっかく服用していただくので、より効果が見込まれるLDで始めませんか」

本多先生
「そうね、薬剤師さんのお薦めに従って、LDに変更して下さい」

やがて買い物を終わった竹田さんが薬局に戻ってきました。
ゆきさん
「本多先生、初めてお話ししましたけど、良い先生でした。直接電話することができ、じっくりと相談に乗ってもらえました。二人で考えて、最適と思える薬に変えましたよ」

竹田さん
「私は、まな板の鯉だから、ゆきさん先生にお任せするわ」

ゆきさん
「どうせ薬を飲むなら、きちんとした効果を期待したいですよね。これで様子を見てください」


~患者さんを思う気持ちは、医師も薬剤師も一緒~

後日、本多先生の紹介でと言って、健康食品会社の営業が訪れてきました。
「本多先生のところでお薦めしていただいている健康食品があるのですが、ゆきさん薬局でも、ぜひ取り扱って欲しいと本多先生に言われて伺いました」

ゆきさん
「そうなんですか、それはどんな健康食品ですか?」

健康食品会社の営業
「エクオールが主成分で、更年期症状を改善します。更年期症状には、ホルモン補充療法が第一選択なのですが、乳がん術後、脳血管障害、血栓症の既往のある人に対しては行えません。ホルモン補充療法の出来ない患者さんに、この健康食品を本多先生にお薦めいただいています」

ゆきさん
「ふーん、健康食品も色々ありますが、こちらはエビデンスがしっかりしているのですね」

エビデンスとは、医学では科学的根拠の事を指します。
「医師が健康食品を紹介してもメリットは無いのでしょ?」

健康食品会社の営業
「健康食品の紹介は、あくまでも患者さんの事を考えてでしかありません。医師にメリットはありませんよ。ゆきさん薬局の先生は、患者さん思いの優しい先生だったので、是非在庫しておいて欲しいとのことでした」

ゆきさん
「本多レディースはうちからそんなに近くも無いのに、そこまで言ってくれるの。うれしいなあ!」

健康食品会社の営業
「患者さんの信頼を得るのが一番ですよ。お会い出来て良かったです。今後ともよろしくお願いします」

初対面の医師でも、「患者さんの為であれば、臆せず意見を言うのが重要なんだ」と確信するゆきさんでした。

登場人物

★竹田真理
竹田真理(たけだ まり) 33歳 女性
てんかん発作の経験あり
生理不順で悩み始めている

★本多先生
本多レディースクリニックの院長 42歳 女性
面倒見が良く、患者さんからの信頼も厚い

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~かかりつけ薬局を決めておくと、薬歴の確認をしてもらえます~

いつもアトピーの薬をもらいにくる菅原さんが、鼻をすすりながら入って来られました。

「鼻炎がお辛そうですねですね」と話しながら、ゆきさんは菅原さんの処方箋をお預かりしました。

菅原さん
「部屋の掃除をしていたら、ほこりっぽくて、鼻水が止まらないんです」

ゆきさんは「それは、ハウスダストでアレルギーを起こしたのですね。今日はアレルギーの薬が出ていますよ」と言いながら薬歴に目を通しました。

そこで皮膚科でもらっている薬に気がつき、「菅原さん、そういえば皮膚科でもフェキソフェナジンというアレルギー薬をもらっていましたね」と声をかけました。

ゆきさんはアトピーという言葉を避けて、「皮膚科でのアレルギー」という言葉を選ぶようにしています。
アトピーと言うと重症化しているイメージが患者さんにあるようで、患者さんがショックを受けないようにアレルギーという言葉を利用しているのです。

菅原さん
「そうなんです。ゆきさんがいつでも他の薬飲むときは相談してね、と言ってくれていたので、ここに来たんです」

ゆきさん
「アレルギー薬を飲んでいることはお医者さんに話されましたか?」

菅原さん
「それが…先生、忙しそうだったから話しそびれちゃったんだよね」

ゆきさん
「そんなこと、先生に遠慮してはだめですよ」

菅原さん
「それじゃあ、どうしたら良いかなあ…」

ゆきさん
「この時間では、お医者さんも終わっているし、確認できません。私だったらどうするか、お話しますね」


~2種類のアレルギー薬、併用しても大丈夫?~

ゆきさん
「今回処方されていたのは、オロパタジンというアレルギー薬です。鼻炎も皮膚炎もアレルギーが原因で起きていれば、アレルギーを抑える薬を利用します。いつも飲んでいるフェキソフェナジンもオロパタジンも同じ系統の薬なので、通常一緒に飲んではいけません」

菅原さん
「じゃあ、フェキソフェナジンを飲んでいたから、オロパタジンは飲んではいけないのですね?」

ゆきさん
「そうです。でも、フェキソフェナジンを飲んでいても鼻水が出て困っているのでしょ」

菅原さん
「はい」

ゆきさん
「フェキソフェナジンのメーカーはそんなことは無いと言うのですが、私の経験から、オロパタジンの方がアレルギーを抑える力は強いように感じます。従って、私なら、フェキソフェナジンを止めて、オロパタジンに切り替えます」

菅原さん
「それで、皮膚の方は大丈夫ですか?」

ゆきさん
「どちらもアレルギー薬なので、皮膚の方にも効くはずです。と、ここまでが私の意見ですが、実際のところは先生に確認をとらないといけません。また、明日、先生に確認してからご連絡しますね」

菅原さん
「それじゃあ、オロパタジンに切り替えて飲んでも良いんですね。はい、連絡お待ちしてます。」


~薬の処方は、医療と保険の二つの問題を考慮しています~

ゆきさん
「でもね、医師の指示によっては、もし痒みが出てきたらフェキソフェナジンを追加で飲むというケースもあります」

菅原さん
「え、同じ系統の薬だから、一緒に飲んじゃいけないんじゃないの?」

ゆきさん
「一緒に飲んではいけない理由が、実は2つあるんですよ」

菅原さん
「身体に悪いからだけじゃないの?」

ゆきさん
「もちろん、薬を多く飲めば肝臓や腎臓に負担がかかるので良くありません。そのため通常は同時に服用しません。それとは別に保険請求で問題があるんです」

菅原さん
「保険請求って、社会保険の事?」

ゆきさん
「そう、社会保険、国民健康保険のことです。保険請求で似た薬を調剤して保険請求をすれば、過剰請求になって保険からお金を支払ってもらえなくなるんです」

菅原さん
「過剰請求は税金の無駄使いになるから、駄目ですよね」

ゆきさん
「今回のアレルギー薬2種類は、非常に煩雑な問題で、耳鼻科では保険請求出来ない様ですが、皮膚科では出来るということを聞いています。実際にアレルギー薬2種類が処方されている皮膚科の処方箋は、何度か見た事があります。ただし、地域や担当官によって違うみたいです」

菅原さん
「そうか、じゃあ、場合によっては、フェキソフェナジンを飲んでも良いこともあるんですね。これで皮膚が落ちついていたから、飲んじゃいけないと言われて不安だったんですよ」

ゆきさん
「健康や薬だけでなく、薬局の内情を知るのも楽しいでしょ。困ったらいつでも来てください」

説明を聞いて、安心したように笑顔で帰っていく菅原さんを、満足げに見送るゆきさんでした。

登場人物

★菅原健人
菅原健人(すがわら けんと) 28歳 男性
アトピーがあるアレルギー体質

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~膀胱炎は早めの治療が大事!~

笑顔を作ろうとはしているものの、わずかに顔をひきつらせながら田中さんが薬局に入ってきました。

田中さんがレボフロキサシンと書かれている処方箋を渡すと、ゆきさんは「膀胱炎になっちゃったんですね。おつらいですよね」と話しかけました。

田中さん
「あら、お薬で何になったか、すぐばれちゃうんですね。寒気はするし、変な痛みで、辛いんですよ。」

膀胱炎は、女性の方が男性よりもかかることが多い病気です。
胱炎の初期段階では、トイレに行く回数が増える傾向があります。
尿意を感じ、人によっては、1日10回以上トイレに行くようになりますが、排尿してもすっきりしない、残尿感が残ることがあります。

ゆきさんは男性ですが、たまにかかることがあり、とても不愉快なこの違和感をよく知っています。
放っておくと、腎盂腎炎やなどを引き起こす可能性もあるので、早めに手当てをした方が良い病気です。

田中さん
「ゆきさん、やはり薬飲まないと治らない?」

薬を飲むのが嫌いという人は多いと思います。
ゆきさんも薬を飲むのは好きではありませんが、膀胱炎になったときは、病院に素早く行き、抗生物質をすぐに飲み始めます。

ゆきさん
「そりゃつらいんだから、早く飲み始めた方が良いですよ。寒気も出やすいので白湯を用意するから、ここで飲んで行ってくださいな。処方されているレボフロキサシンというニューキノロン系の抗生物質は、抗菌力が強く、とてもよく効きますから」

田中さんは、薬局で薬を飲み、世間話をしてから帰っていきました。


~「他の薬は飲んでいませんか?」には、きちんと答えよう~

1時間ほどしてから、田中さんから電話がかかってきました。

田中さん
「薬を飲んでから、手が震えて気持ちが悪いんだけど、副作用かしら?」

ゆきさんはすかさず薬歴を確認し、言いました。
「あー田中さん、頭痛もちでしたね。もしかしてロキソプロフェンNa飲みました?」

田中さん
「何とも言えない痛みだし、頭痛もしてきたから飲んだわよ」

ゆきさん
「だめだよ、田中さん。この2つの薬を一緒に飲むと手の振るえだけではなく、痙攣を起こす可能性があるんだから」

田中さん
「えー、そうなの」

ゆきさんは、お薬をお渡しするときに患者さんに「他の薬は飲んでいませんか」と聞いています。
田中さんは、常に飲んでいる薬はないので、「特に他の薬は飲んでいません」と答えていました。忙しくしていて、頭痛のようにとっさに飲むお薬のことまでは頭が回らなかった様で、手が震えるようになって驚いて電話をしてきたのです。


~薬の飲み合せ、ニューキノロンと鎮痛剤~

ロキソプロフェンNaは鎮痛効果の高い便利な薬なのですが、ニューキノロン系の抗生物質と併用すると痙攣を引き起こすことがあります。

頻度は稀ですが、ゆきさん薬局ではこの飲み合わせで起こる副作用の相談を年に1回程度は受けています。

ゆきさん薬局では、電話で相談する人が多いんです。
今回のような相談は、ほとんど電話で受けることになります。

忙しいときに電話がかかってくると、正直、大変ですが、頼られていると思うと、思わず笑顔になってしまいます。

ゆきさんは、次のようにお答えして電話を切りました。
「薬が切れてくれば、手の震えは治まるので、心配しなくても大丈夫ですよ。でも、膀胱炎の自覚症状が無くなったとしても、菌が残っていたら、ぶり返してしまうので、抗生物質は飲みきってくださいね。
それに、鎮痛剤はなるべく控えた方が良いですよ。鎮痛剤がどうしても必要な場合は、抗生物質を飲んでから数時間はあけるようにしてください。
子育てで忙しいから、市販薬で治したいのは分かりますけど、今度からは、薬を飲む前に相談してくださいね」

薬が怖いと言う人もいれば、安易に市販薬を飲んでしまう人もいて、本当に人それぞれだなあと考えるゆきさんでした。

登場人物

★田中恵子
田中恵子(たなか けいこ) 45歳 女性
頭痛もち
専業主婦。毎日子育てに追われている

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです
~自己診断はNG!~

ゆきさんが開店準備を終えると、いつものように、伊藤さんがご夫婦で仲良く薬局に入ってこられました。

お二人とも、にこやかに挨拶されながら入ってこられるので、ゆきさんの顔も自然とほころんでいます。

ゆきさんが「はい、伊藤さん。いつもの高血圧とコレステロールを下げるお薬ね」と言ってお薬をお渡しするときに、ふと伊藤さん(ご主人)の口の上側にブツブツと出来ているのを発見しました。

ゆきさん
「あれ、伊藤さん、口の上どうしたの?」

伊藤さん
「2、3日前からブツブツ出来てきたんで、傷薬と聞いていたゲンタシンを塗っていたんだけど…ちっとも良くならないんだよ」

ゆきさん
「伊藤さん、病院に行かないで自己判断したんじゃないですか?」

伊藤さん
「うん。大した傷じゃないし、前に傷のときにもらった薬を塗っておけば治るかな、と思って」

ゆきさん
「最初ちくちくして、それから赤くはれてきたんじゃない?」

伊藤さん
「そうだよ」


~時には病院のご紹介も~

ゆきさんは、やっぱり…と確信した様子で言いました。

ゆきさん
「それ、たぶんヘルペスだと思うよ。このまま自己判断でゲンタシン塗り続けていたら、広がるかも知れない」

伊藤さん
「ヘルペスか。考えもしなかったよ。ということは皮膚科に行った方がいいのかな?」

ゆきさん
「ええ。早く診てもらった方がいいですね。近所だと児玉皮膚科が良いかな。腕はしっかりしているし、説明もわかりやすいから行ってみたらどうですか?」

このように、ゆきさんは、患者さんに病院やクリニックを紹介することが多いんです。

患者さんから「どこの病院が良いの?」という相談を受けることもありますし、今回のようにゆきさんが病気を見つけて「早く病院に行きなさい」なんてこともあります。

そんなときのために、近隣の先生は必ずお会いして、その人となりや、得意な診療科目を確認しています。その情報を元に、患者さんの性格や診療科目に合わせて、どのような先生があっているかを考えて紹介しているのです。


~ヘルペスの薬、効果と飲み方~

伊藤さんは、ゆきさんが紹介した病院に早速行って、処方箋をもらって戻ってきました。

伊藤さん
「いやー、ゆきさん名医、いや名薬剤師だね。やっぱりヘルペスだって。助かったよ。ゆきさんが教えてくれなかったら、そのままゲンタシンを塗ってやりすごしているところだった」

ゆきさん
「そうでしょ。早く治さないと広がることもあるから、単なるブツブツと思っていても馬鹿に出来ないんですよ」

ゆきさんは手早く薬を準備して説明を始めました。

ゆきさん
「ヘルペスは塗り薬と飲み薬があるけど、飲み薬の方が早く効くんです。今日は飲み薬が出てますよ」

伊藤さん
「へえ、この飲み薬が、ウイルスを殺してくれるってわけか」

ゆきさん
「正確には、ウイルスを殺すのではなく、ウイルスが増えるのを防ぐ薬なんです。早く飲み始めた方が良いですよ」

伊藤さん
「これは、1日2回飲んだらいいのかな?」

ゆきさん
「はい。1日2回の薬なので、朝食後と夕食後に飲んでくさいね」

伊藤さん
「今日はもう朝食を食べてしまったから、夕食後だけでいいよね」

ゆきさん
「1日2回なので、今日は昼食後と夕食後で大丈夫。ちなみに、この薬は腎臓に影響することもあるんだけど、伊藤さんは、前立腺肥大はあっても腎臓に問題があるわけではないので、この薬を飲んでも影響はないでしょう」

ゆきさんが説明をし終えると、伊藤さんの奥様が
「ゆきさんのところで薬もらっていると、なんだか体調全部気にかけてくれるから安心ね。本当にありがとう」と嬉しそうにお礼の言葉をかけました。

伊藤さんも笑顔で、誇らしげに「紹介された児玉先生に、良い薬局で薬もらってるねってほめられたよ」と話してくれました。

「へー児玉先生、そんなこと言ったんだ。俺のこと良い薬剤師だって? 俺より若いくせに、よく言うよ」と言いながら、伊藤さんと一緒に笑っているゆきさんでした。

登場人物

★ゆきさん
雪原 匠(ゆきはら たくみ) 49歳 男性
ゆきさん薬局の薬剤師
優しくて、おだやかな性格

★伊藤夫婦
伊藤正(いとう ただし)77歳 男性
前立腺肥大、高血圧、高脂血症
冗談が好きで面倒見がいい

伊藤みよ子(いとう みよこ)74歳 女性
胃腸薬、整腸剤を服用
特に体調に問題はなく、元気で明るい性格

※ゆきさん薬局の物語に登場する人物は、フィクションです

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