傷寒論 太陽病中篇 第八十五條
太陽病二日反躁反熨其背而大汗出大熱入胃胃中水竭躁煩必發讝語十餘日振慄自下利者此爲欲解也故其汗從腰已下不得汗欲小便不得反嘔欲失溲足下惡風大便鞕小便當數而反不數及不多大便已頭卓然而痛其人足心必熱穀氣下流故也。
太陽病二日、反って躁するに、反って其の背を熨して、大いに汗を出だし、大熱胃に入り、胃中の水竭わけば、躁煩必ず讝語を發す、十餘日にして、振慄し、自下利する者は、此れ解せんと欲すると爲すなり、故に其の汗、腰より已下汗を得ず、小便を欲して得ず、反って嘔し、失溲せんと欲し、足下惡風し、大便鞕く、小便當に數なるべくして反って數ならず、及び多からず、大便し已れば、頭卓然として痛む、其の人足心必ず熱するは、穀氣下流するが故なり。
太陽病の二日目ごろには、躁するはずがないのに、反って苦しがっているので、發汗ができないためと思って、背中に燒瓦をあてて太陽經をあたためた、その結果大變汗をかいて、火熱が胃に入って、胃の中の水が少なくなって、穀氣が正しくめぐらなくなってしまう。そのために躁煩を生じて、その上に必ずうわごとをいうようになってしまった。
その場合に、十數日たって、火熱の勢が弱わまって、陰氣が回復して、津液を生ずるようになると、ブルブルと体を振わして、自然に下利をするようなものは、治ろうとしているのである。もともと汗というものは、腰より下の方には汗をかきにくいものですが、その場合は、小便が自然によく出るはずであるが、それが出たくても出ずに、反って火熱が上にのぼって嘔き、尿が失禁しそうになったりして足のうらが惡風してくるのである。胃熱のために大便がかたいと、小便の出は當然回數が多くなるはずであるのに、多くなく、量も多くない。津液がめぐって來て便通がつき、排便し終わると、頭がきりきりと痛み、穀氣である陽氣が下流して、足の裏が必ず熱してくるのである。
