傷寒論 太陽病中篇 第百條

太陽病過經十餘日心下溫溫欲吐而胸中痛大便反溏腹微滿鬱鬱微煩先此時自極吐下者與調胃承氣湯若不爾者不可與但欲嘔胸中痛微溏者此非柴胡證以嘔故知極吐下也。

太陽病、過經、十餘日、心下溫溫、吐せんと欲して、胸中痛み、大便反って溏し、腹微滿し、鬱鬱として微煩す、此の時に先きだち、自から吐下を極むる者には、調胃承氣湯を與ふ、若し、爾かせざる者には、與ふべからず、但嘔せんと欲して、胸中痛み、微に溏する者は、此れ、柴胡の證に非ず、嘔するを以ての故に、吐下を極めたるを知るなり。

太陽病になってから、再經、即ち二めぐりの十数日もたった頃に、みずおちのあたりがむかむかして吐きたいような氣持ちがして、胸の中が痛み、大便はかえってやわらかくなって、腹が少しくはって、熱が身体内にこもっているような感じで、少しく苦しがっている。このような狀態になる前に、自然に吐下をしたものには、調胃承氣湯を與えてやるべきである。
 もしも吐下を極めなかったものには、調胃承氣湯を與えてはならない。ただ嘔きたがって、胸の中が痛んで少しく便のゆるんでいるものは、これは柴胡湯の證ではないのである。この場合に嘔くのは吐下を極めたために起きた證である、ということを知っていなければならないのである。