健康を願う皆様へ

知ろう まもろう 抗菌薬

近年、抗菌薬が効かない細菌 (薬剤耐性菌)が世界中で増えています。薬剤耐性菌が増えると、これまで抗菌薬を飲めば治っていた感染症が治りにくくなったり、感染症の治療や手術の際に支障を来たしたりします。 現在、世界で薬剤耐性により年間約70万人が死亡しているそうです。新しい抗菌薬の開発は進んでおらず、このまま何も対策を取らなければ、2050年には約1,000万人が薬剤耐性により死亡するという試算もあり、世界的な問題となっています。2015月、世界保健機関(WHO)は「薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistanceの略)に関するグローバル・アクション・プラン」を採択し、日本でも2016年に「AMR対策アクションプラン」が決定されました。今後、「適切な薬剤」を「必要な場合限り」、「適切な量と期間」使用することを推進しています。抗菌薬を処方するのは医師ですが、薬剤師が抗菌薬の適切な使用を呼びかけ、抗菌薬について正しく理解してもらう事も重要だと考えています。以下に代表的な注意点を挙げました。

・患者側から抗菌薬を求める事は避けましょう(風邪やインフルエン ザは、細菌ではなくウイルスが原因なので、抗菌薬は効きません)
・抗菌薬が処方されたら、指示通りの飲み方で、きちんと飲みきりま しょう(中途半端な飲み方が、耐性菌を増やすことに繋がります)
・抗菌薬をあげたり、もらったりしてはいけません(不適切な使用  も、耐性菌を増やすことに繋がります)
・わからないことは薬剤師や医師に聞きましょう(抗菌薬にも種類が あり、それぞれに飲み方や注意点が異なります)

手洗いやマスクの着用、ワクチン使用などで感染予防に心がけ、抗菌薬は最後の切り札として残せるように、私たちが出来る役割を果たしましょう。

賢い患者とは~あなたがいのちの主人公・体の責任者~

先日、『賢い患者』(山口育子著、岩波書店)という本を読みました。著者は、癌を患った際に自身が受けた治療をきっかけに、COML(コムル;認定NPO法人 ささえあい医療人権センター)で活動をされています。著書では、医療機関に対して厳しい指摘をする一方で、「賢い患者」の五つの定義として下記のように書かれています。

「①病気は自分の“持ち物”であると“自覚”をする。医師をはじめとする医療者から受ける説明を 理解する努力をしたうえで、②自分はどんな医療を受けたいかを考える。考えた結果は黙っていては伝わらないので、③どのような医療を受けたいかを“言語化”して伝える。 医療を受けると 決めたら、④医療者とコミュニケーションを取りながら協働する(自分に出来る努力をする)。 ただし、いつ、どんな病気になるか分からないので、戸惑ったり動転したりするのは当然のこと。 そこで、⑤一人で悩まないこと」

患者は医師が方針を立てた方針に従うことが当たり前という考えではなく、患者も主体性に医療に関わりましょうと伝えています。医者にかかる際には、事前に自覚症状や体調の変化など伝えたいことはメモして準備し、受診時には大事なことはメモをとって確認しましょう。医療にも不確実なことや限界はあります。納得できないときは、何度でも質問しましょう。治療方針を決めるのは患者自身だととらえ、問題が整理できないときには一人で悩まないで、誰かに相談しましょう。

物忘れや認知症は薬で治せるのか

2015年12月、厚生労働省が「オンジ」という生薬(オンジ製剤)に「中年期以降の物忘れの改善」と明記することを認め、これを受けて、数社からオンジ製剤が第3類医薬品として発売となりました「キオグッド」、「ワスノン」、「メモリーケア」など)。しかし、厚生労働省はその後、オンジ製剤の広告において、「記憶機能の活性」、「脳神経細胞の増加や再生」、「脳全体が活性化する」、「既に忘れてしまった記憶を蘇らせる」といった、効能を誤解させるような表現がなされたことを重く受け止め、オンジ製剤について「認知症の予防や治療に対する効果は認められていない」と、2017年10月に異例の通知を出し注意喚起しました。

ここでの表現でわかりにくいのは、「中年期以降の物忘れ」と「認知症」の違いです。記憶は、①“覚える”、②“蓄える”、③“思い出す”の三段階からなっていて、人は誰でも加齢と共に脳の機能が衰え、年相応の自然な物忘れがみられるようです。加齢による物忘れは、③の“思い出す”機能が低下することが原因で、覚えていることを思い出すまでに時間がかかるために起こるとされています。例えば「朝ごはんに何を食べたか思い出せない」などで、これは「認知症」とは違います。一方、「認知症」の場合には、「食事をしたことを覚えていない」とった”そのこと自体”を覚えていられないことで、これは記憶の初期段階①の“覚える”ことが出来なくなることによって生じます。

現在、認知症の治療薬は、進行を遅らせる医療用医薬品が数種類あるに過ぎず、根本的な治療に繋がるものではありません。また、オンジ製剤の効果に関しても、根拠となった論文はデータ数が少なく、評価についても疑問視する意見があります。薬に対する過度な期待はしない方がいいのでしょう。

朝の光と朝ごはん

2017年のノーベル賞は、時計遺伝子を発見した研究者3名に贈られました。

生物の体内時計は、時計遺伝子の働きにより約24時間周期でリズムが刻まれ、動物では睡眠・覚醒、体温、血中ホルモン濃度、代謝機能など多くの生理現象が制御されているようです。この約24時間周期は生物により異なり、ヒトの場合は約25時間とみられています。概(おおむ)ね24時間と言う意味で、概日(がいじつ)リズムと呼ばれています。この時計に従って生活をすると、2週間もしないうちに昼と夜が逆転しそうですが、実際にそうならないのは、概日時計が環境に同調できる柔軟性を持っており、外的刺激によって毎日リセットされているからです。さらには、体内時計には、脳に存在する中枢時計(親時計)と、生体内の多くの組織に存在する末梢時計(子時計)が存在すると考えられています。

中枢時計のリセットに影響を与えるのは光です。温度や湿度など、地球上で日内変動する環境因子は他にもありますが、最も信頼できる時刻の手がかりとして太陽からの光シグナルが選ばれたのでしょう。夜に眠れないという人に、朝日を浴びる事を勧めたり、夜間照明を控えめにするのを提案したりするのはこのためです。

一方、末梢時計のリセットに影響を与える代表的なものが食事です。即効性は無くても、朝ごはんには胃腸の活動リズムを整えてくれる効果があるようです。逆に朝ごはんを抜くと、体温調節に関わる体内時計が乱れ、さらには、脂質の代謝を担う体内時計が乱れて脂肪がつきやすくなるという指摘もあります。

だんだん日の出が早くなり、朝が心地よい季節です。中枢時計と末梢時計のリズムが異なる時間が刻まないよう、朝日を浴びて朝ごはんを摂るという規則正しい生活を心がけましょう。                             (管理薬剤師 副島)

胚芽米について

有効な健康法のポイントは、それが継続できるかどうかです。無理なく日頃の生活習慣に組み込めれば継続しやすくなります。我が家では5年前に家庭用精米機(サタケ社製マジックミル)を購入し、胚芽(米)コースで精米したお米を炊いて食べています。


胚芽の中には、種子が成長するのに必要な栄養素が多く含まれています。中でもビタミンB1は、人間にとっても重要なビタミンであり、炭水化物(糖質)の代謝を助け、エネルギーを作るために不可欠です。精米技術が進んだ江戸時代の江戸では、「足のしびれ」や「むくみ」、「疲労感」をきたし死に至る奇病「江戸わずらい(脚気)」が流行したと言われます。原因不明のその奇病は、日清・日露戦争の際に白米を支給された陸軍でも見られ、その後、鈴木梅太郎博士の研究により、ビタミンB1(当時オリザニンと命名)の不足が原因だとわかりました。

胚芽は、通常の精米方法では米ぬかと一緒に取れてしまうため、米の栄養をより多く摂るためには玄米食がいいわけですが、私は味に馴染めず長続きしませんでした。ビタミンB1を補充するために、タケダの「新玄」(今はハウスから「新玄 サプリ米」という名前で売られています)を米に混ぜていた時期もありましたが、後から添加するよりも、もとの米から栄養素を含む胚芽を残すのがいいのではないかという考えに至りました(厳密には、胚芽米は胚芽の80%以上を残したものを言うようで、家庭用精米機で胚芽を80%以上残せているかどうかは疑問です)。炊いたご飯はどうしても胚芽の黄色が混ざるので精白米ほどの輝きはなく味は雑味が混ざりますが、言い方を変えれば味わい深いとも言えます。

また、家庭で精米すると別のメリットもあります。米は精米後、時間共に酸化が進み、粘りや味が落ちると言われているからです。胚芽を多く残す機能を備えた精米機は、数社から1万円前後で販売されています。家庭用精米機には、大きく分けて、攪拌式と圧力式がありますが、手入れの手間を考えると攪拌式がお勧めです。                      (管理薬剤師 副島)